FOOD 食の楽しみ。
旅心そそる、『富小路粥店』の中華粥。濃厚だけどするする入る。各国の味を求めて、京の朝ごはん探訪。vol.4May 05, 2025
ひとりで旅すると、どこで何を食べるべきかが悩みどころ。朝ごはんのおすすめを、弊誌でもおなじみの京都の食を愛するベテランフードライター、P(ぴい)さんに教えてもらった。
京都ならではの風情、味が堪能できるあの店へ。発売中の特別編集MOOK「ひとりでも、京都へ」より、特別にWEBでも公開します。
『富小路粥店』の中華粥とプチおばんざい

奈良の茶粥に京の朝粥。和テイストのお粥はおなじみだが、令和の時代は中華粥だ。
老舗和食店の3代目店主・勝田桜子さんが世界のおばんざいを勉強しようと旅に出て、出合ったのが中華粥のおいしさ。いつかはやってみたいと思っていたそう。鶏ガラで丁寧にとったスープと、お米を粒が崩れるくらいまでじっくり炊いたものを合わせた中華とり粥が一番人気。鶏ガラスープでお米を炊いて、さらに鶏ガラスープを加えた濃厚な「極」¥1,300など全4種。嬉しいのは10種以上あるプチおばんざい。お粥と合わせれば、ひとりごはんがぐっと楽しくなる。
Tominokouji_kayuten 四条河原町

お粥はほかに五穀米の和粥¥800、季節のお粥が。プチおばんざいは、切り干し大根、ひじき煮などが各¥150、とり肝煮、ハムカツなどが¥220、鶏の唐揚げ、豚の角煮、台湾風おかずクレープなどが各¥330。組み合わせ自由。
住所:京都市下京区徳正寺町41−2
電話:075−744−0662
営業時間:7:00〜16:00 /水木休
食都・京都は朝から誘惑多し。心も胃袋も千々に乱れる。
お楽しみはこれからだ、じゃなくて朝からだ。京都の旅は朝から楽しい。何が楽しいかって、朝ごはんである。まずは、滞在中に一度は訪れたいレトロな喫茶店。いつもの席で新聞読みつつ一服しつつ(喫煙OK店多し)、コーヒー飲んでトースト食べてるおじさんと、まるで子どものときからずっと来てました的な顔で、同じものを頼む。それだけで、朝から気分がアガル。厚手の卵焼きがドーンと入った玉子サンドに、ウインナーとキュウリを挟んだトーストも捨てがたい。最近はホテルの朝ごはんも個性強め、印象的な朝食を出すところも多々。それを目当てに泊まる客すらいるくらいだ。それに、宿泊してなくても朝食お試し可能なホテルも増えつつある。京都でひとり朝活、いいんじゃない?
さて、本題。京の都は古より国際都市である。そこに京都人の新しもん好きが加わると、町には世界の美味があふれることになる。その各国を代表する店が朝食にも力を入れれば、朝から世界旅行が楽しめるってもんだ。ま、それはオーバーにしても、そこそこ、各国の朝食がいただけるのが都たる所以である。
炊きたての土鍋ご飯に、ぷるっぷるの白身と鮮やかな黄身の卵をかけて、味噌汁、胡麻和えや漬物といった『丹』のザ・正統和朝食から、こだわりの炭焼きトーストと丁寧に淹れたネルドリップコーヒーというシンプル朝食を極めたトーストセットや、九条ねぎとしらすの玉子サンドイッチなど、バラエティに富んだモーニングメニューが揃う『小川珈琲 堺町錦店』、80年続く老舗和食店の女将が始めた台湾スタイルの鶏中華粥にプチ惣菜を組み合わせることができる『富小路粥店』、さらには、へ? 朝からワイン!? のおしゃれコーヒースタンド『タレル』とか、は? 朝からカレー!? と驚くけど、お茶漬け感覚でさらさらっといけちゃう『スパイスゲート』まで。そのバリエーションはあっぱれな幅広さ。1日2朝食して、あれもこれも試してみたくなる。
ただね、せっかく京都に来たんだからと、晩ごはんはご馳走三昧になりがちだし、ついつい飲みすぎちゃったりもする。その結果、朝はいらない、もう入らないって人も多いかもしれない。あるいは、ホテルに朝食がついていて、外で朝食ってあんまり食べないなぁという人もいるかも。だけど、それではあまりにもったいない。
そう、そこが食いしん坊にとっては悩ましいところ。京都は夜もいいけど、朝もよいから困っちゃうのである。せっかくひとりで来たんだもの。早起きして、お散歩がてら、観光気分で朝ごはん巡りしてみませんか。古きよきものも愛でつつ、新味に冒険の触手をのばす。それもまた、よろし。
お楽しみは朝からなんである。

文/P(ぴい)ライター
子どもの頃から食べることが大好きで、気づけば食中心のライターに。旅して食べ、取り寄せて食べ、作って食べ。ゆえに体重はうなぎ上り。2022年の最高記録は、パン屋取材1軒だけだったのに、なぜか一日で5軒うどん屋を制覇したこと。
photo : Atsushi Kondo