FOOD 食の楽しみ。

日本料理の名店が繰り出す、和朝食のお手本。食いしん坊も唸らせる、京の朝ごはん。May 01, 2025

ひとりで旅すると、どこで何を食べるべきかが悩みどころ。朝ごはんのおすすめを、弊誌でもおなじみの京都の食を愛するベテランフードライター、P(ぴい)さんに教えてもらった。

京都ならではの風情、味が堪能できるあの店へ。発売中の特別編集MOOK「ひとりでも、京都へ」より、特別にWEBでも公開します。

『丹』の朝食

『丹』のザ・正統和朝食で旅のはじまりを。食いしん坊も唸らせる、京の朝ごはん。vol.1
朝食¥3,300。右上から時計回りに、蒸し野菜と金山寺味噌、叩きごぼう、京人参、芹、利休麩の胡麻和え、ご飯と味噌汁、特別濃厚卵、中央はへしこの炭焼き、自家製漬物。

白川に沿って連なる美しい柳の並木に面したこちら、名にし負う『和久傳』が手がける一軒だ。朝、昼、晩と違った顔を持つ。1階の大きなテーブルでいただく朝食は、まさに「京都来たぞ!」感を強く感じられる内容。

『丹』のザ・正統和朝食で旅のはじまりを。食いしん坊も唸らせる、京の朝ごはん。vol.1
『丹』のザ・正統和朝食で旅のはじまりを。食いしん坊も唸らせる、京の朝ごはん。vol.1
実は夜も使い勝手がよく、一品とお酒で一杯もOK。アラカルトの甘鯛の鱗揚げ¥1,850。2階で貸し切りも可能。
『丹』のザ・正統和朝食で旅のはじまりを。食いしん坊も唸らせる、京の朝ごはん。vol.1
見よ、この白身!

炊きたてご飯の米は『和久傳』発祥の丹後半島で自家栽培されたもの、中心となる野菜は、無肥料、無農薬で地元で作られたものだ。店名の表す「小さな真心」が食材のみならず、空間にもサービスにも随所に込められ、アットホームな雰囲気でリラックスできる。ともかく、和え物のおいしさに胃袋を掴まれる。季節ごとに行きたい店だ。

tan 東山

112_p000-000_ひとりごはん-朝ごはん_04

ウッディで落ち着く1階の空間。/昼は和え物、玉子とじなどが付いた牛丼¥3,300やコースも。夜は多彩なアラカルトとお酒を。コースもあり。

住所:京都市東山区五軒町106−13
電話:075−533−7744
営業時間:朝食 金・土曜9:00~、日曜8:00~と9:00~(2部制)/昼12:00〜14:00LO /夜18:00〜21:00LO
営業日:月休(祝日の場合、翌火休)、月1回不定休 

公式サイト

食都・京都は朝から誘惑多し。心も胃袋も千々に乱れる。

お楽しみはこれからだ、じゃなくて朝からだ。京都の旅は朝から楽しい。何が楽しいかって、朝ごはんである。まずは、滞在中に一度は訪れたいレトロな喫茶店。いつもの席で新聞読みつつ一服しつつ(喫煙OK店多し)、コーヒー飲んでトースト食べてるおじさんと、まるで子どものときからずっと来てました的な顔で、同じものを頼む。それだけで、朝から気分がアガル。厚手の卵焼きがドーンと入った玉子サンドに、ウインナーとキュウリを挟んだトーストも捨てがたい。最近はホテルの朝ごはんも個性強め、印象的な朝食を出すところも多々。それを目当てに泊まる客すらいるくらいだ。それに、宿泊してなくても朝食お試し可能なホテルも増えつつある。京都でひとり朝活、いいんじゃない?

さて、本題。京の都は古より国際都市である。そこに京都人の新しもん好きが加わると、町には世界の美味があふれることになる。その各国を代表する店が朝食にも力を入れれば、朝から世界旅行が楽しめるってもんだ。ま、それはオーバーにしても、そこそこ、各国の朝食がいただけるのが都たる所以である。

炊きたての土鍋ご飯に、ぷるっぷるの白身と鮮やかな黄身の卵をかけて、味噌汁、胡麻和えや漬物といった『』のザ・正統和朝食から、こだわりの炭焼きトーストと丁寧に淹れたネルドリップコーヒーというシンプル朝食を極めたトーストセットや、九条ねぎとしらすの玉子サンドイッチなど、バラエティに富んだモーニングメニューが揃う『小川珈琲 堺町錦店』、80年続く老舗和食店の女将が始めた台湾スタイルの鶏中華粥にプチ惣菜を組み合わせることができる『富小路粥店』、さらには、へ? 朝からワイン!? のおしゃれコーヒースタンド『タレル』とか、は? 朝からカレー!? と驚くけど、お茶漬け感覚でさらさらっといけちゃう『スパイスゲート』まで。そのバリエーションはあっぱれな幅広さ。1日2朝食して、あれもこれも試してみたくなる。

ただね、せっかく京都に来たんだからと、晩ごはんはご馳走三昧になりがちだし、ついつい飲みすぎちゃったりもする。その結果、朝はいらない、もう入らないって人も多いかもしれない。あるいは、ホテルに朝食がついていて、外で朝食ってあんまり食べないなぁという人もいるかも。だけど、それではあまりにもったいない。

そう、そこが食いしん坊にとっては悩ましいところ。京都は夜もいいけど、朝もよいから困っちゃうのである。せっかくひとりで来たんだもの。早起きして、お散歩がてら、観光気分で朝ごはん巡りしてみませんか。古きよきものも愛でつつ、新味に冒険の触手をのばす。それもまた、よろし。

お楽しみは朝からなんである。

Michiko Watanabe 渡辺 紀子

文/P(ぴい)ライター

子どもの頃から食べることが大好きで、気づけば食中心のライターに。旅して食べ、取り寄せて食べ、作って食べ。ゆえに体重はうなぎ上り。2022年の最高記録は、パン屋取材1軒だけだったのに、なぜか一日で5軒うどん屋を制覇したこと。

photo : Atsushi Kondo

Pick Up 注目の記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 138新しい暮らしに出合える、店ともの。2025.04.18 — 960円