BOOK 本と言葉。
30代のときに、私の生き方を変えた本。『悲しみの秘義』 /長崎・諏訪町『ひとやすみ書店』 が届けるベターライフブックス。November 20, 2025
This Week Theme30代のときに、私の生き方を変えた本。
Book of the Week『悲しみの秘義』若松英輔 著(ナナロク社)

書店を開業して15年、当店でいちばん売れた本は『悲しみの秘義』(ナナロク社・2015年)である。想いを書きつけたPOPを貼り、口頭でもよくすすめた。異なる6種類のデザインの表紙カバーがあるなど、装丁にも凝った本だ。
悲しみについて、本書にはこう書かれている。
"かつて日本人は、「かなし」を、「悲し」とだけでなく、「愛し」あるいは「美し」とすら書いて「かなし」と読んだ。悲しみにはいつも、愛(いつく)しむ心が生きていて、そこには美としか呼ぶことができない何かが宿っているというのである”
当時30歳だった僕は、この文章に驚き、納得した。ただ、納得はしたものの実感には至らない。それほどの悲しみを経験していないからだろうか。しないで済むのならそのほうがいいと思うが、その経験はいつ訪れるやもしれない。そのとき僕は、この文章をどう読むだろう。本書とは、長い付き合いになりそうだと思った。
全25編。静かな声で語るように書かれたエッセイ集。宮沢賢治、神谷美恵子、石牟礼道子、河合隼雄など作家の言葉も多く引かれる。
BOOKSHOP ひとやすみ書店

店主の城下康明さんが幼い頃によく遊んでいた長崎県長崎市諏訪町でスタートした本屋。観光地として有名な眼鏡橋のすぐそばにあり、レトロな雰囲気が漂う川沿いの道に建つ。店の看板の黒板には毎日心に留まった本の一節を抜粋して板書し、メッセージを投げかけている。
住所:長崎県長崎市諏訪町5-3-301
営業時間:13:00〜18:00(土曜のみ16:00まで)
定休の詳細はInstagram(@hitoyasumi_bookstore)より確認を。



























