NICHIYOHIN 暮らしを豊かにする道具。
神奈川・北鎌倉にある『morozumi』。自分たちの〝生活の一部〞になったものを、届ける。November 04, 2024
家で過ごすような気分で、道具を選んでほしい。
石段を数十段上り切った小高い丘にポツンと佇む、庭付きの古い木造の一軒家。玄関の扉を開けると両角夫婦が朗らかな笑みを浮かべ、自宅にゲストを招き入れる温度感で迎えてくれた。「風が吹き抜けるこの場所で、人やものと対話したかったんです」と、香織さん。廊下からすぐそばにあるリビングルームには、古い家によくなじむ、簡素で飾らない美しさを湛えたものが並んでいる。器、かご、ラグ、箒、手紡ぎ・手織りのクロスなど、どれも暮らしを彩る日常に欠かせないものばかり。「ここにあるものは自分たちが実際に使ってみていいと思った、生活の一部になっているものなんです。長く愛用してきて、ものづくりの背景や使い心地の良さをひとりでも多くの人に伝えたくなったのが、店を始めたシンプルな理由です」
常に〝生活者の目線〞を第一に考えた提案が、誠実で優しい。国内だけでなく、タイやインド、リトアニア、ポルトガルで作られたものにも出合える。
「旅先で直感的に惹かれて生活に取り入れたものもありますし、人と人の縁が繋がって、遠い国の文化や手仕事がぐっと身近になったりもして。時には作り手が店に訪れてくれて展示に繋がることもありますね」
さらに、古物を愛する啓さんは関東近郊の市に足繁く通い、心に留まったものを連れて帰る日も多い。もう一つ奥の部屋には啓さんが集めた繭皿、徳利、グラスなどが静かに佇む。「当時作った人の実用と、現代の人の使い道がたとえ違っていても、ものの命が再生されて、新しいものとして受け継がれていくことが、とても美しいことだと思っています」
『morozumi』の両角香織さん、両角啓さんに教わる、今の暮らしになじむ道具。
morozumiモロズミ
神奈川県鎌倉市山ノ内917 ☎050‒3696‒2220 11:00~17:00 不定休 JR横須賀線北鎌倉駅より徒歩約8 分。人との縁から導かれて出合った手仕事のもの、歴史や生活様式が反映された古物など、作り手の想いや生活への眼差しに共感を覚えた道具や衣服を紹介している。
両角香織、両角 啓Kaori Morozumi , Hiroshi Morozumi
香織さんは皮革カバンメーカーの販売スタッフや店舗運営を経て、長年温めてきた自分の店を持つ夢を2018年に叶えた。啓さんも勤めていた会社を辞め、主に古物のセレクトを担当。「〝ものを買う〞というより、〝店で過ごす〞心持ちで楽しんでほしい」と香織さん。写真の庭はみんなのお気に入りの場所。
photo : Mitsugu Uehara text : Seika Yajima