FOOD 食の楽しみ。
イギリス気分のスナックには、 香りを際立たせたコーヒーを。フードコーディネーター・長尾智子さんに教わる、お菓子とコーヒー。October 09, 2025
&Premium特別編集(2022年6月発売)「喫茶店のこと、そしてコーヒーの話」より、フードコーディネーターの長尾智子さんが家で楽しんでいるコーヒーと、それに合わせるお菓子について特別に紹介します。
静かにドリップする時間は、心を鎮めるのに最適。

コーヒーはそれほど頻繁に飲まないという、フードコーディネーターの長尾智子さん。それでも「コーヒーを淹れる作業はとても好きなんです」とのこと。
「特にコツがあるわけではないのですが、ドリップをするとき慎重になる。それが好きなのかもしれません。気持ちが落ち着く感じですね。香りもいいので、仕事の途中で休憩するのに向いています」
豆は好きな銘柄を1、2種類ずつ。なくなったら次の豆を買うというスタイル。
「特に好きなのは南千住の『カフェ・バッハ』や軽井沢の『丸山珈琲』のもの。中煎りくらいの日本の典型的なコーヒーが好きなんです。でも、なるべく一度に買わないようにして、いろいろな店の豆を試すのが面白いと思います」

そのコーヒーに合わせるお菓子は2つ。一つ目はリンゴとバナナのオーブン焼きで、特別な材料は使わず、作り方も耐熱容器に材料を順番に入れたらオーブンで焼くだけ、という手軽さ。
「コーヒーのおやつとしてだけでなく、食後のデザートにもなります。デザートとしていただくなら、アイスクリームをのせてもいいですね」
これに供するのはシナモンミルクコーヒー。ポイントは、シナモンを煮出した湯でドリップをすること。
「コーヒーにシナモンを入れるだけではあまり香りが出てこないんです。中央アジアにカルダモンなどのスパイスを煮出すスパイスティーがあり、それをヒントにしました。インドのチャイもスパイスと茶葉を煮出しますが、香りをしっかり出したいときは、邪道かもしれないけれど、このやり方もお勧めです」
他にもクローブやカルダモン、生姜などでやることも。
「チャイを作るのと同じ感覚ですね。コーヒーもスパイスとの相性が、とてもいいんです」
本格的にスパイスティーとして飲むなら15分程度煮出すが、コーヒーにする場合は、湯に色がつく3、4分程度が目安。オーブンで焼いたお菓子と、体が温まるといわれるシナモンを入れた湯でドリップしたコーヒー、ミルクの組み合わせは、寒い日のブレイクタイムにうってつけだ。
もう一つのお菓子は、フライパンで焼いた黒糖のビスケット。
「イギリス・ウェールズ地方のお菓子、ウェルシュケーキと似ていますが、そのままだと、やはり紅茶のほうが合うんです。なので、黒糖や黒胡椒を入れて、コーヒー寄りにしてみました。焼きたてのうちにグラニュー糖をふるところも黒糖にして、ちょっと強めの味に。コーヒーには優しい味よりも、強さがあるほうが引き立つと思います」
このビスケットには、ドリップコーヒーにウイスキーとハチミツを入れる、フレーバーコーヒーをお薦め。
「ミルクティーにウイスキーを入れたらすごくおいしくて、コーヒーにもいいな、と思ってやってみました。コーヒー味にはラム酒を使うことが多いけれど、私はマイルドなウイスキーのほうが馴染む気がしています。たくさん入れちゃうと風味がコーヒーより強くなるので、ほんの香りづけ程度に」
さらに、コーヒーが飲みたくなる、薄切りパンを使ったトーストと、バゲットのサンドイッチも教えてくれた。
「チーズを香ばしくカリッとさせたチェダーチーズトーストは、甘いあんことチョコのトーストとセットで。トーストもサンドイッチも、ストレートコーヒーと一緒に、朝ごはんや軽食にどうぞ」
イギリスでは17〜18世紀、コーヒーハウスが社交場として人気を博していたが、今回の長尾さんのコーヒータイムの気分もイギリスだという。手軽に作れるスナックは、英国の素朴な伝統菓子を彷彿とさせる。心静かにドリップしたコーヒーで一休みするのは「短時間でゆっくりできる方法の一つ」と、長尾さん。
長尾智子フードコーディネーター
本や雑誌での執筆、商品開発など食に関する様々なフィールドで活動している。食卓まわりのオンラインストア『SOUPs
』を運営。『料理の時間』(朝日新聞出版)、『ティーとアペロ』(柴田書店)などをはじめ、著書多数。
シナモンミルクコーヒー×リンゴとバナナのオーブン焼き、ウイスキーフレーバーコーヒー×黒糖ビスケットのレシピはこちらから。
photo : Mie Morimoto edit & text : Wakako Miyake