MOVIE 私の好きな、あの映画。
『ベティ・ブルー /愛と激情の日々』選・文/ひがしちか(日傘作家、コシラエル主宰) / September 20, 2016
This Month Themeトラウマになるほどのラブストーリー。
ひがしちか(日傘作家、コシラエル主宰)
10年以上も強烈に脳裏に残り続ける激しい恋愛。
私は周りと比べて初めてのボーイフレンドができたのも遅く、まだ恋や愛が本や映画や友達からの会話からの想像でしか情報がなかった。そんなウブな時期に観てしまったのもあるのだろう……。『ベティ・ブルー』はトラウマになるほどの1本だ。最初の入り口は音楽だった。アシスタント時代に師匠が車で聴いていて、ピーン!(耳が立ちました)。こ、この曲はなんですか?(メモメモ)ピアノの旋律が本当に綺麗で、まずはCDを借りて、この映画に辿り着いた。ストーリーはというと、男女が出合い、激しく惹かれあってゆく中で主人公の女性ベティが精神的におかしくなっていくのだけれど、そのへんから結末はゾッとするくらい衝撃的で、それを払拭するほどの美しく穏やかな映像と音楽がいったりきたり。その振り幅にぐらぐらと魅了され、強烈に私のなかに残っている。私はなんでもかんでも忘れるから、10年以上も脳裏にあるのは稀なことだ。強烈に残る映画だけしか記憶にないのか、そういうものが好きなのか。中でも記憶にとどめているセリフがある——「何もないところだ」「でも全てがあるわ」。そこにフランス映画っぽさみたいなものを感じて、ツボを刺激される。
好きか嫌いかなんて、2回以上観ればその余裕も出てくるのだけど、最初は考える余地はない。この映画は何回観たのだろうか?裸になった時のベティのセクシーでないパンツに気づいたのは何回目の頃かしら。そして『ベティ・ブルー』を初めて観てから10年あまり、当時は考えもしなかった傘屋さんになっている。ある写真家の方に、傘がビジュアルにある綺麗な映画だよと、教えられ観たのが『DIVA』。監督の名前を調べると、ジャン=ジャック・ベネックスの作品と知る。そんな風に勝手にご縁を感じている。私自身はこんなに激しい恋愛をしてみたいとは思わないけれど、この映画で繰り広げられる恋愛模様には憧れを超える興味が尽きない。