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〈humoresque〉デザイナー 渡辺由夏さんが語る今月の映画。『コーラスライン』 【極私的・偏愛映画論 vol.90】May 25, 2023

This Month Theme私の生き方を変えた。

永遠の憧れは、ダンサー。

踊るように生きていきたい。
そう思わせてくれたのは幼少期に出会った映画『コーラスライン』。

ブロードウェイのスターを夢見る若きダンサーたちのエネルギーとオーディション風景をセンセーショナルに描いた作品だ。
幼い頃の私は、美しく魅惑的な世界に陶酔する時間が必要だった。
小学校から帰るとすぐにビデオテープをセットして、『コーラスライン』を観ながら一緒にステップを踏むという日々を送っていた。

頭の中に流れるのは、コーラスラインの名曲「ONE」。
その、一つ、一人、は素晴らしいというメッセージと共に、煌めく金色の帽子を頭上に上げながら足を斜めに美しく伸ばして見せるポーズがループする。

キャシーがコーラスラインのオーディションを受けたくて、ハイヒールを履きながらキレの良いターンやステップを披露し「私にできることはダンスしかないの。鏡の中で踊っているあのダンサーは私だと思わせて!」と訴えるシーンは情熱的で、夢を疑わない一途さに心を奪われた。

とりわけ気に入って幾度も巻き戻して観たのは、シーラ、ビビ、マギーの3人の女性ダンサーがそれぞれの想いと共にバレエへの美しさと憧れを歌う、「At The Ballet」。家庭環境の問題も、理想的な容姿に生まれてこなかったことも、バレエに身を任せれば全ては美しい世界に変化する。

“美しくて涙が溢れる”という体験をしたのはこの時が初めてだったかもしれない。あの頃も、今も、どこか別の次元に連れて行ってくれるスイッチを知るだけで、私たちの無限に広がる感受性や想像力はどこまでもおおらかに羽を伸ばし寛容に解き放ってくれる。

全ては自分自身の思考に尽きるのだ。
「将来の夢はダンサーになることです」。
最近もそう言うと、みんなびっくりしたり笑ったりするのだけど、私はいつも真剣にそう思っている。

人生は夢の中のよう。
いつまでも憧れはダンサー。

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主役ではなく、バックダンサーのオーディションにフォーカスし、個性溢れるダンサーたちが一つに収束してゆく姿を見せます。ダンサーたちのレベルが高く、歌や踊りを見るだけでも一見の価値あり。
Title
『コーラスライン』
Director
リチャード・アッテンボロー
Screenwriter
アーノルド・シュルマン
Year
1985年
Running Time
113分

illustration : Yu Nagaba movie select & text:Yuka Watanabe edit:Seika Yajima


〈humoresque〉デザイナー 渡辺 由夏

アパレルブランド〈humoresque〉のデザイナー。着る人と服が親密な関係を結ぶようなやさしくて、美しい服を制作している。ブランド名は、幼い頃から長い間、自身の記憶の中に横たわっているドヴォルザークの楽曲より引用。

humoresque.jp

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