〈LOISIR〉デザイナー・前田敬子による、保護猫・えいたと暮らす日常。
うれしくて、カプッ。【〈LOISIR〉デザイナー・前田敬子による、保護猫・えいたと暮らす日常。 vol.79】July 05, 2025
えいたには、うれしいとつい噛んでしまう癖がある。人間でいえば、ハイタッチとか、ぎゅっと抱きしめるような感覚なのだろう。とくに、ごきげんなときや、私の膝の上で丸くなっているとき、布団の中に潜りこんで腕枕でくつろいでいるときが多い。
ゴロゴロと喉を鳴らしながら、うっとりとした表情で見つめてくる視線に、こちらもすっかり気を許していると、不意に顎あたりを「カプッ」。もちろん本人は“甘噛み”のつもりだけれど、こちらはたまったものじゃない。唇のような皮膚の薄いところを狙われると、軽く流血沙汰になってしまう。横からスライディングして鼻翼をぱっくり噛まれたときなんかは、思わず悲鳴が出た。飼いねこといえど、肉食獣。犬歯はちゃんと鋭いのだ。
何度か「いたた!」と叫んで、痛みを伝えようとしたこともある。最初は「やべっ」という顔をしたが、すぐに慣れてしまい、動じなくなってしまった。そんなわけで、わたしの頬やあごには、いつも小さな牙傷が絶えない。人間でいえば、キスマークみたいなものかな。
えいた えいた

ファッションブランド〈LOISIR〉デザイナー・前田敬子さんと暮らすえいた。ハンサムな名前の由来は永代橋(えいたいばし)の近くでコールタールまみれになって遊んでいるところを保護されたことから。空気は読めないと、ボランティアの方からもお墨付き。すでに壮年猫なのに相変わらずやんちゃで食いしん坊。趣味で段ボールアートを作ったり、上腕二頭筋を鍛えてみたり……。以前本誌で連載していた『まこという名の不思議顔のねこ』に登場していたまこは姉猫。兄猫しろたろとまことの暮らしを経て、現在は妹猫にんにんと同居中。本誌2022年5月号にて、わたなべとしふみさんによるえいたの紹介イラストを掲載しています。