ひみつの坪庭コレクション
老舗に吹く新風を感じる『本家尾張屋 本店』の庭。ひみつの坪庭コレクション vol.12December 30, 2024
京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。
老舗に吹く新風を感じる、育つ庭。
―本家尾張屋 本店―
応仁の乱以前から、550年を超えて菓子、そして300年ほど前からは蕎麦も商う『本家尾張屋』は、京都でも老舗中の老舗。稲岡亜里子さんが16代目当主となり、手がけたことのひとつが本店の隣に菓子処を作ったことだ。同時に整えたのが本店と菓子処を繋ぐ小さな庭。 「かつてあったのは座敷から眺める坪庭。新たな空間とを繋ぐ通り道として、風が流れる庭にしたくて」と稲岡さん。白羽の矢を立てたのは、京都とイギリスで庭づくりを学んだ作庭家・山口陽介さん。「植物に向き合う姿勢、人となりを知って、この人だと」
かくして生まれた新たな庭は、市中を忘れる伸びやかな空気を纏う。建物とともに時間を過ごしてきた松や郁むべき子はそのままに、大きく成長する木々を加えた。苔の上の延べ段は斜めに配され、ここでも伸びゆく様を表現する。新たな庭ができて間もなく3年。「街中にいながら、上を見上げると森のような空気感を漂わせる。思い描く庭に少しずつ近づいています」と稲岡さんは目を細める。
寛正6(1465)年創業。客席の多くは2階にある。
▷『本家尾張屋 本店』
京都市中京区車屋町通二条下る
☎075‒231‒3446
11時〜15時30分(15時LO)
菓子販売9時〜17時30分
無休
▷『本家尾張屋 本店』
京都市中京区車屋町通二条下る
☎075‒231‒3446
11時〜15時30分(15時LO)
菓子販売9時〜17時30分
無休
photo : Yoshiko Watanabe illustration : Junichi Koka edit & text : Mako Yamato