ひみつの坪庭コレクション

器のように、自由に愛で育む『六々堂』の庭。ひみつの坪庭コレクション vol.08August 09, 2024

京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。

器のように、自由に愛で育む。
―六々堂―

器のように、自由に愛で育む『六々堂』の庭。
 

 モダンなファサードが静かに主張する器の店。扉を開け、中に歩を進めると、徐々に庭の姿が見えてくる。石や蹲(つくばい)が苔むす庭は、白い壁とガラスに囲まれながら和の趣を漂わせ、奥には茶室の姿。「茶室を作るからには茶庭は必然でした」と店主の前森孝之さん。頼ったのは産寧坂に店があった頃から付き合いが続く『中村外二工務店』。
「石組みは親方と考え、茶庭らしく苔と山野草を植えて」完成したのは2016年のこと。3階までの建物に囲まれた庭に、下まで陽が差し込むのは6月のほんのひととき。当初はうまく育たなかったという言葉が信じられないほど、青々とした苔の姿には理由がある。「継続は力なり。毎日眺めて、枯れた葉を取り除いて。夏の水遣りは日に6〜7回ほど。寄せ植えの苔を育てて移したり、譲り受けた高野山の固有種を植えたり。枯れてしまった夏椿の代わりに、屋上で育てていた五色八重散椿を植えたところ」だという。茶庭でありながら縛りはなく、愛情は存分に注ぐ。それは扱う器や現代美術作品を見る目と通じるものなのだ。

 
 
『六々堂』京都市中京区麸屋町通二条上る布袋屋町503
『六々堂』京都市中京区麸屋町通二条上る布袋屋町503
明治8(1875)年に窯元として創業。現在は伝統工芸の器から現代作家の器や美術作品までを扱う。
▷『六々堂』
京都市中京区麸屋町通二条上る布袋屋町503
☎075‒212‒0166
11時〜18時
火休

photo : Yoshiko Watanabe illustration : Junichi Koka edit & text : Mako Yamato

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