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自然そのままをいただく「ラオスの市場」。写真と文:山口祐加 (自炊料理家) #4November 27, 2025

「世界の自炊を取材する旅に出かけて、最も印象に残っている国はどこですか?」とたびたび聞かれる。私は間髪を入れずに「ラオスです」と返す。ただ、旅に出かける前の私はラオスについて何も知らなかった。
ラオスはベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、中国に囲まれている東南アジアでは唯一の内陸国で、山と川が多く、自然がとても豊かな国だという情報だけを得て、ラオスの古都・ルアンパバーンに降り立った。
ラオスはフランスが統治していた時代もあり、ルアンパバーンの街のメインストリートには、コロニアル建築の建物が並ぶ。ただ、道を一本入ると、野良犬がうろうろ歩き、ニワトリが走り、上裸のおじちゃんが道端に座っている。見事な建築と、野生的な生活が道路一本を隔てて共存しているのが面白い。
到着した翌朝に市場に行くと、想像のはるか上をいくワイルドな食材が広がっていた。野菜や果物はもちろんあるのだが、私の目を引いたのは、毛を取られた大きなモルモットのような小動物や、捌きたてのリス、まだ毛がついている野鳥など、山から獲ってきた新鮮な肉。そして、芋虫やタガメなども陳列されていて、初めて目にするそれに度肝を抜かれた。

ラオスには「タマサート」という言葉があり、自然やあるがままを意味するらしい。ラオスの人はタマサートな食材を愛し、野生のままの、今の時季しか取れない食材を味わうことが好まれる。取材で訪れた家庭で、淡水魚のお腹にハーブを詰めて炭火焼きにした料理を食べさせてもらったが、身がふわふわでハーブの爽やかな香りがして、とてもおいしかった。新鮮な食材や野生的な食材を食べようとする気持ちは、日本にも季節ごとにある旬の食材を喜ぶ心と通じるような気がした。
自炊料理家 山口 祐加

やまぐち・ゆか/1992年生まれ。料理初心者に向けた「自炊レッスン」や、ポッドキャスト番組「聞くだけでごはんができるラジオ」など多岐にわたって活動中。著書に『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』、『世界自炊紀行 』(ともに晶文社)など多数。
photo : Masako Nakagawa































