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おいしいもの好きが唸る「ポルトガルの野外マーケット」。写真と文:山口祐加 (自炊料理家) #2November 13, 2025

世界の自炊を取材する旅のヨーロッパ編では、最初にポルトガルを訪れた。ポルトガルは人生で二度目、7年ぶりの訪問になる。現地の人たちの生活を知るためには、まず取材させてくれる家庭探しから始まる。知り合いがいない国では、旅人と働き手を探している人をマッチングする「Workaway」というサービスを使って、ホストを見つけるのが私の定番だ。今回は、ポルトガル第二の都市・ポルトからバスで1時間ほどの、自然豊かな村にあるワイナリーを見つけた。
私が訪れた6月は、ちょうどワインの木のつるがのびのびと育つ季節で、それらの剪定が私の仕事だった。座り仕事が多い私からすると、全身運動のような仕事にへこたれて、1日が終わる頃には背中がバキバキ。疲れが滲み出てきた頃、ホストのお父さんが「近所のマーケットに行こう」と連れ出してくれた。
週に一度開かれる野外マーケットでは、旬の野菜はもちろん、サラミやハム、チーズ、バカリャウと呼ばれる干しだらを売る専門店のほか、ベーカリー、焼き菓子店など、食いしん坊の目が輝く店がずらりと並ぶ。お昼は家で食べることになっており、お父さんがそのための買い物に悩んでいたので、私が目をつけていた鮮魚店の新鮮なイワシを薦めた。

イワシをたんまりと買って帰り、皮が焦げるまで炭火で焼いて白ワインとともにいただいた。炭火の香りがついた脂がのったイワシを奥歯で噛み締め、白ワインを一口含む。最高の組み合わせの味は、今でも思い出すことができるほど、記憶に鮮明に焼きついている。
自炊料理家 山口 祐加

やまぐち・ゆか/1992年生まれ。料理初心者に向けた「自炊レッスン」や、ポッドキャスト番組「聞くだけでごはんができるラジオ」など多岐にわたって活動中。著書に『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』、『世界自炊紀行 』(ともに晶文社)など多数。
photo : Masako Nakagawa

























