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生活する活力が湧いてくる「台湾の市場」。写真と文:山口祐加 (自炊料理家) #1November 06, 2025

2024年の春から一年かけて、世界の「日々の自炊」を見に行く旅をした。世界12か国、合計38家庭の自炊を取材した様子は、『世界自炊紀行』(晶文社)にまとめている。今回の連載では、旅先で必ず訪れていた「市場」について紹介したい。
最初に紹介するのは、台湾の市場だ。台湾では台北を起点に、左回りに主要な都市を巡った。大なり小なり、どの街にも市場は存在していて、彼らの日常の輝きを感じられる。野菜や肉、魚はもちろんのこと、豆腐、惣菜、餅、日用品から下着まで揃う。『千と千尋の神隠し』(2001年)の冒頭のシーンに出てきそうな、肉の内臓が吊り下がっているような精肉店も、日本では見かけないので目を引く。知っている匂いと知らない匂い、人の話し声、人々の隙間を縫って行き来するバイクのクラクションの音。カオスの中に不思議な心地良さがある。市場は屋台も併設しているところが多く、日本だったら即営業停止になりそうな、いわゆる“キタナシュラン”も味があっていい。
大きな市場では、実演販売をよく見かける。大きな声ではつらつと喋るお兄さんの周りに、主におじちゃんおばちゃんが群がっている。ものすごい熱気だ。「なんでも汚れが落ちる石鹸」のようなものを売っていたお兄さんが、観客のおばちゃんの靴を借り、その場で汚れをキレイに落としていて、これは買いたくなるわと納得。言葉は全然わからないけど、見ているだけでわくわくする。台湾の市場にいると、生活することの活力が沸いてくるような、そんな不思議な気持ちになる。
自炊料理家 山口 祐加

やまぐち・ゆか/1992年生まれ。料理初心者に向けた「自炊レッスン」や、ポッドキャスト番組「聞くだけでごはんができるラジオ」など多岐にわたって活動中。著書に『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』、『世界自炊紀行 』(ともに晶文社)など多数。
photo : Masako Nakagawa





























