&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。
「ちょっと冴えないけど、たぶん一生もの」について語る茶会。写真と文:witchi tai to #3July 16, 2025

松元:わっ! #2の回でいただいた烏龍茶とはまったく違う甘さが、後から後から広がってくるねぇ。
高原:シャインマスカットみたいな余韻が続くよね。樹齢100年以上ある中国のお茶の木から作られた白茶で、これは2016年の茶葉なんだ。白茶って中国では「3年置くと薬、7年置くと宝になる」って言われているらしいんだけど……。
松元:となると、もうかなりの宝だね!
高原:そうなんだよ~。年を重ねるって素敵なことよね、と思いながら選んでみたよ。
よしい:うんうん。私たち、この間展示した時(春に、銀座の『森岡書店』で開催した"Admire"展)に、「いい年の大人がわちゃわちゃ楽しそうにしてる姿にときめく」って言ってもらったもんね!
葉田:ふふふ。お菓子もポリポリしていて、穏やかでおいしいね。お茶と合う!
高原:その名も「小枝」。この、藁のマットともリンクしているなぁって思って。熊本県で活動されていらっしゃる渡辺薫子さんという方のお菓子だよ。

松元:(ポリポリ&ごくごく)。今回のお題は、「ちょっと冴えないルックスなんだけど、ずっと手放せないもの」。これは、一生ものだろうっていう。
葉田:わたしはね……、この片手鍋。(iPhoneの画面を見せる)

松元:シンプルで素敵じゃない? 質実剛健っていう感じで。
葉田:全然素敵ではなくて、なんならちょっと変なロゴも入ってる。でも野菜を茹でるにしても、お湯を沸かすにしても、サイズがちょうど良くて気軽に作業できるから、重宝していて手放せないんだよね。私の進学に合わせて、18歳で上京する時に母が買って持たせてくれたんだけど、これが全然壊れないの。きっと、この先もずっと使い続けると思う。
高原:鍋との相性って不思議なものだよね。持ち主の生活、体型、好みが、着るもの以上に影響するというか、相性の良さが想像を超えてくる。
よしい:わたしは逆に、ルックスは冴えてる代わりに、使いづらいものを若い頃から買いがちだったんだよね~。
松元:それは見ててわかる(葉田、高原、うなずく)。

よしい:その最たる物がこれなんだけど……。
松元:え、電卓?
よしい:それすらわからないでしょ? 〈Nokia〉の携帯電話なんだよ~! カタツムリ型っていうの? 貝殻型っていうの? スマホ以前の時代の携帯電話。見た目が気に入って手に入れたものの、使い勝手が悪すぎて当時mixiさえできなかった!
葉田:ふふふ。携帯電話としては……。
よしい:でしょ? それでもこのルックスを愛していたんだよね。機能としては何の役にも立たないんだけど、だからこそ、ずっと手元に置いてある。あの頃は、特に見た目を優先すると、機能が二段階も三段階も劣る時代だったよね。
葉田:(大きくうなずく)。
松元:ねえねえ、これは?

高原:「ムッキーちゃん」ですよ。ご存知ない?
松元:えっ、そんなに一般的なもの!?
葉田:果樹園ごとにオリジナルの名入れで作ってらしたりするんだよね。
松元:果樹?
高原:そう、果樹。というか柑橘。これねパカッと上下が分かれるんだけど、柑橘の外皮に白いパーツの内側についてるツメを立てて引くと、分厚い皮にもすぐに線が入って、楽に剥けるの!

松元:おぉ~! ほんとだ!
高原:下のオレンジのパーツの内側にはもうちょっと鋭い歯があって、そっちで房の薄皮がスーッと切れるからあっという間に実が取り出せるのよ。
松元:やってみていい? (実演中)ほんとだほんとだ!
高原:しょっちゅうみんなに話してる、能登の友人・さーさんのお母様が柑橘好きでね。毎年果樹園から文旦だの何だの、いろいろ取り寄せてらして、そのたびに「ムッキーちゃん」も同封されていたみたい。「何本もあるから」って1本くださったの。もう10年くらい愛用しているから、ご覧の通りかなり年季が入っているけど、このダサ可愛さ(ほめ言葉)含めて、手のひらサイズの最強アイテム。柑橘好きは、「ムッキーちゃん」なしでは生きていけないよ~。
松元:欲しくなってきた!

次で茶話最終回。家を出ておしゃべりしてきます!
ディレクションユニット witchi tai to
