&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。
花と過ごす、心ほどける時間。写真と文:齋藤拓磨 (花屋『Hljóð (ヒュウド) 』店主) #4November 26, 2025

雨の日の土曜日。
いつも聞こえてくる人の声が、
今日は雨に溶けてしまったようです。
雨の音と鳥の声と、
そして少し遠くから聞こえる電車の音だけが聞こえてきます。
うっすらと明るい窓際が心地よくて、
ひとつの本を開きました。

とある無人島に残された馬たちが、
ひっそりと生き延びた軌跡を記録した写真集。
さみしいような、かなしいような。
あたたかくて、うつくしくて。
何かを突きつけられたような気もするけれど、
たしかに豊かさもそこにはありました。
いろんな感情が重なって、
自分の気持ちの行き先が、
今どこにあったらいいのか、わからなくなるような。
あまり感じたことのない心の揺らぎでした。
そんな姿をずっと覗いていたかのように、
窓辺の小さな器から、小さなお花が顔を出しています。

お花が目に入ると、
あちらこちらへと旅をしていたいろんな感情が、
ふと、もとのひとつの場所へ帰ってきた気がしました。
ほっと、心がほどけていく。
時間を忘れて、そこにずっといたいと思う。
ただ事実を追っていくことの静けさの中に、
心がやさしくおさまっていくのを感じます。





























