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ただ「ラジオを聴く」ためだけの、〈KOPEK〉のポケットラジオ。写真と文:ひらいめぐみ (作家、ライター) #3June 20, 2025
朝起きた時、自分で作った個人誌の発送作業をする時、最近はラジオを聴いている。家には中古で買ったラジカセが置いてあって、朝はラジカセの電源をつける。日中に発送作業をする時には、アプリのradikoで今放送されている番組を流したり、Podcastで好きな番組のアーカイブを聴いたりする。
仕事が思うように進まない時は、今までスマホのアプリで好きな音楽を聴きながら、家から少し離れたところまで散歩をしていた。けれども、スマホがいつも手元やポケットの中にあると、なかなか思考を止めることができない。そういえばあのメール、まだ返してなかった。原稿の戻しの連絡きてるかも。明日の取材の場所、後でもう一度確認しないと。Wi-Fiを切っていても、スマホの存在が頭の中を騒がしくさせてしまう。
あるとき、〈KOPEK〉というブランドが作っているポケットラジオを見つけた。電源を入れ、周波数を合わせると、リアルタイムで放送しているラジオを聴くことができる。ポケットに入れていると、ちょっと触れただけで周波数が微妙にずれてしまったりして、若干の不便さはあるけれど、その完璧でない使い勝手すら愛嬌に思えてくる。「ラジオを聴く」以外の機能がついていないのもいい。

購入した日以来、夜の散歩の相棒になっている。静かな夜に、雑音とともに耳元で流れるラジオ。周波数をぴったり合わせられた時の、向こう側の声がはっきり聞こえた時の、ちいさなうれしさは、暗い夜空に瞬く星を見つけたときのうれしさと似ている。
作家、ライター ひらい めぐみ

1992年生まれ。7歳の頃からたまご(の上についている)シールを集めている。著作に『転職ばっかりうまくなる』、『ひらめちゃん』(いずれも百万年書房)など。