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水草水槽との出合い。写真と文:タナカカツキ (マンガ家) #2February 09, 2026
私が水草水槽の世界に足を踏み入れたきっかけは、ある夏の夜、娘が縁日で持ち帰った一匹の金魚でした。慌てて用意した小型の水槽で飼い始めたものの、水は数日で白く濁り、頻繁な水換えに追われる日々。小さな命を預かることの難しさに、少なからず疲弊していました。日々の世話もままならず、半ば諦めの境地で放置してしまった水槽。数日後、恐る恐る覗き込むと、そこには予想外の光景が広がっていました。

放置したことで水槽内にバクテリアが定着し、汚れを分解する「生物濾過」のサイクルが機能し始めたのだと、後に知りました。それは、私の手を離れた小さなガラスの中で、自然の摂理が静かに動き出した瞬間でもありました。
この出来事をきっかけに、「水草水槽」という分野を知ることになります。ネットで画像検索をしてみると、息を呑むほど美しい水槽の写真が次々と現れ、衝撃を受けました。

以来、私はただ魚を飼うのではなく、水槽の中にひとつの「生態系」を構築することにのめり込んでいきます。水槽は小型から大型へ、道具も次第に本格的なものへと揃えていきました。現在、仕事場の一角には120センチの水槽が鎮座しています。
朝、照明が点灯すると、水草たちが目覚めるように葉を広げ、静かに活動を始めます。水草は生き生きと育ち、魚たちも元気に泳ぎ回る。水槽内の小さな生態系のバランスがととのうことで、水はさらに透明度を増しキラキラと輝き出すのです。
酸素の気泡が真珠のように連なり、ゆっくりと水面へ昇っていく。その光景を眺めていると、部屋の中に切り取られた自然が、確かに呼吸していることを実感します。
あの夏の日のささやかな出来事が、私の部屋に「小さな森」を呼び込んだのです。ちなみに金魚は知人に譲り、今では熱帯魚たちが群れをなして泳いでいます。
edit : Sayuri Otobe
漫画家 タナカカツキ
































