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趣味や習い事の話:「 (ほどほどに) 没頭したい」。文:横尾香央留 (手芸家) #4May 27, 2025
デジタル時計で割り算をするのが好きな子どもだった。
例えばいまは17時10分だが、なるべく小さめの数字で割るという自分の中のルールで、1710÷5=342 → 342÷6=57 → 57÷3=19……と。「まぁ、悪くない数字だった」という遊びだ。
始めたばかりの頃はさらに進めて、19÷2=9.5 → 9.5÷5=1.9 → 1.9÷2=0.95……と小数点以下も延々と続けていた。10:24などはとてもいい数字で、1024÷4=256 → 256÷4=64 → 64÷8=8。
「いぇーい」。最後の数字が一桁になるのがうれしい。
しかしある時からぱっと見で興味がある(一桁になる)数字とそうでない数字がわかるようになってしまい、計算をする頻度が一気に減った。
理系の友人に話したところ「それは素数が見えるようになったってことだね」と言われたが、素数が何かもよくわからない文系とも言えない手芸系には、計算欲が失せてしまったことがただただ寂しい。
あんなに得意だった暗算も以前よりスピードが落ちてきたため、興味がない数字でも時には無理をして割るようにしている。

その後目覚めた数字の趣味は新聞の中に見つけた数独で、問題集を購入してまで解くようになったのは10数年前から。
ご存知の方も多いと思うが数独とは縦横9×9のマス目に1から9の数字を当てはめていくパズルで、電車やバスで難しい顔でペンを顎に当てている年配の方がいたら、それは大抵数独愛好家だ(本当はクロスワードの場合が多い)。
元来の数字好きが高じてか、レベルを上げ超難問集にしかやりがいを感じず、そしてなるべくメモを取らずにきれいな状態で終えたいという謎の美学により頭をフル回転させなければならないのでとても疲れる。
没頭するあまり「これを解くまでは…」とトイレに行けなくなったり、これを解き終えたらやめようと思っているのに終えた瞬間次の問題に取り掛かってしまい、気付けば朝の4時というような数独中毒に陥ってしまった。
一冊解き終わるまで生活に支障が出てしまうため現在は数独本の購入を控えているが、“何かものすごく辛いことが起きたらどっぷり数独に浸り忘れる”という作戦を思いつき、いつでも決行できるようAmazonの「あとで買う」コーナーに常に待機させている。
最新の趣味は、2年前に友人の家で教えてもらったのをきっかけに始めたギター。譲り受けたギターを使い、2、3回基本を教えてもらった後は、独学で適当に好きな曲を弾いている。
手にする時間は大抵1日の終わりのお風呂に入る前。
全然しゃべらなかったなという日にも必然的に声を出すことになるため、歌える曲ばかり弾いている。そして歌は正確ではないギターの音色を自分相手に誤魔化すためにも有効だ。
1時間ほどで止められる程度の健康的な趣味の範囲を保ちながら、小さな音小さな声で自分のためだけに弾き歌う。
photo:Takashi Homma edit : Sayuri Otobe
手芸家 横尾香央留
