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東京・丸の内で見つけた、古代ギリシャの断片。写真と文:長谷川 香 (建築史家) #2January 14, 2026
私は、東京・丸の内が好きだ。
このあたりは超高層ビルが建ち並ぶ日本屈指のオフィス街だが、都心部ではめずらしく、歴史的な景観がわかりやすく残されているエリアでもある。
赤レンガが印象的な東京駅丸の内駅舎(1914年竣工)は、東京の玄関口にふさわしい堂々とした佇まいだし、江戸城(現皇居)の石垣とお濠に面して、古典主義の傑作ともいわれる『明治生命館』(1934年竣工)や、戦後GHQ本部が置かれたことで知られる第一生命館(1938年竣工、現・第一生命日比谷ファースト。ただし住所は丸の内ではなく有楽町)が建ち並ぶ姿は壮観だ。ほかにも、高度経済成長期に取り壊された三菱一号館(1894年竣工)は2000年代に美術館として復元されている。まさに、近代建築物の保存や復元の事例を勉強するにはうってつけの街である。
丸の内一帯にあるこうした歴史的な建物は、だいたい把握しているつもりでいたのだが、ある日、思いがけず、とても印象深い歴史の痕跡を発見した。
5年ほど前、東京メトロ千代田線の二重橋前駅で下車して、JR京葉線に乗ろうと歩いていたときのこと。
JR東京駅の地下に通じる入口に入ろうとしたところ、その背後にある三菱UFJ銀行本店(1980年竣工)のよく手入れされた植栽の間から、何かが顔をのぞかせていた。
それは、建築史の勉強をしたことがある人なら誰でも知っている、「イオニア式」の柱の上部(柱頭)だった。「イオニア式」とは古代ギリシャ起源の建築様式のひとつで、この渦巻きのような装飾が特徴だ。
普段ははるか頭上にある柱頭を、間近に見る体験はとても新鮮で、「想像以上に大きいなぁ」とか「渦巻きを横から見ると鼓型なのか」と感心し、しばらく見入ってしまった。嬉しくて誰かに伝えたくなり、さっそく大学の建築史の授業でも紹介した。
なぜ、こんなところに柱頭が埋もれているのか。
実は、この柱頭はかつてこの地に建っていた先代の三菱銀行本店(1922年竣工)の一部なのだ。まさに古代ギリシャの神殿のような外観で、大変豪華な建築だったという。1970〜80年代に高層ビルへ建て替える際、その歴史を継承しようと柱頭を残すことにしたのだろう。

さて、この原稿を書くにあたり、柱頭の写真を撮り直そうと思って2025年12月に再訪したところ、なんと、ついこの間まで現役だった三菱UFJ銀行本店ビルは囲いに覆われ、解体工事の真っ只中だった。
イオニア式の柱頭を探そうと囲いの内側をのぞいてみたが、かろうじて見えたのは、鉄骨と鉄筋があらわになったビルの骨組みだけだった。本当に、東京の新陳代謝は激しい。
現地に貼られた看板によると、解体後に地上28階地下4階のビルが新築され、2030年に竣工予定だという。
はたして、イオニア式の柱頭は行方や如何に。5年後の再会に期待したい。
建築史家 長谷川 香















































