&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。

コンセプトは「居場所」と「逃げ場所」。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #3January 23, 2026

物件が決まり、設計の細部を詰めていきました。劇場は2スクリーン。フィルム映写機への憧れもありましたが、スペースを考えてデジタル上映のみ。また、東京・飯田橋の『ギンレイホール』をお手本にサブスク制を採用しました。年額22,000円または月額2,500円で1年で約50本の対象作品が見放題になるシステムです。自分では選ばないかもしれない作品にも気軽にチャレンジし、映画の選択肢を広げてもらえたらという気持ちが根底にあります。また、スクリーンを2つにすることで、新作を上映する一番館としての要素、サブスク制を利用した名画座的な要素、その両立を考えました。

コンセプトは「居場所」と「逃げ場所」。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #3

どの席からでも鑑賞しやすいよう、スクリーンの大きさや座席の段差にもかなりこだわりました。劇場外のトイレやロビーも、私が思う使いやすさ、居心地の良さを追求したつもりです。

プロジェクト当初から計画していたクラウドファンディングですが、コロナ禍に活発だったミニシアター支援の熱気が落ち着きつつある今、どれほど支援いただけるかは未知数で不安もありました。結果的には3か月も満たない間に、1,479人の方から目標の3倍近いご支援をいただきました。

コンセプトは「居場所」と「逃げ場所」。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #3

劇場のコンセプトは、「居場所・逃げ場所」の提供です。これは、学生時代に映画館という場所に救われたパートナーからの提案でした。それに加え、神保町という街に深く関わるなかで、かつて近隣にあった文化学院(西村伊作や、与謝野晶子らにより1921年に創立)の「小さくても善いものを」という理念を知りました。これはまさしく私たちが理想とするミニシアターの姿そのものでした。

「小さくても善いもの」を上映したい、私たちが「小さくても善いもの」でありたいと思ったのです。その想いに多くの方が共感してくださったことは、何より嬉しかったです。Xで長い間見守ってくださった方、神保町やお茶の水の街を愛する方、ミニシアターを愛する方を含め、多くの方にご支援をいただきました。

建築関連の手続きが難航し、開業予定を何度も延期せざるを得なくなったとき、温かく見守ってくださった配給会社の方々にもとても感謝しています。一時期、SNS上では、「シネマリスが、サグラダ・ファミリア化している」というような投稿も見かけ、ご心配もいただいていたと思います。お叱りも受けましたが、最後まで温かく見守って応援していただけたこと本当に感謝しています。

そして設計・施工チームとの協議を重ね、ついに2025年12月19日を開業日と定めました。上映作品の選定、リターンの発送、スタッフの採用……。山積みする課題に追われ、後手に回ってしまうことも多くありましたが、ついにオープンの日を迎えることとなりました。


ミニシアター『シネマリス』支配人 稲田良子

稲田良子
いなだ・りょうこ/ 新潟県出身。長年の法律事務所の秘書生活から急転、ミニシアター支配人を目指す。2025年12月、東京・神保町にミニシアター『シネマリス』を開業。

cinemalice.theater

Pick Up 注目の記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 147部屋を心地よく、整える。2026.01.20 — 980円