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ぼくが犬を迎え入れるまでの話。「準備のための3年間」。 写真と文:アボット奥谷 (イラストレーター) #1April 03, 2025
4月になると思い出す。犬が我が家に来た日のことを。
ぼくは中年独身のイラストレーター。2022年の4月から犬と一緒に暮らしている。
それまでの人生で人間以外の生き物と暮らした経験は金魚くらいしかなく、植物を買ってきても1年持たずに枯らしてしまう。そんなぼくが犬との暮らし? まじで大丈夫かな? と当初はすごく心配だった。

2018年くらいから犬を飼いたいと思うようになり、いろいろ調べたり、人から話を聞いたり、動画をたくさん観てイメトレしたりもした。
それまで住んでいたボロくて狭い家から、ペット可のボロくて広い家に引越しもした。犬の一生を共にするには新車が余裕で買えるほどのお金が必要だと知って、十分な貯蓄もした。「思い立ったら即行動」とは真逆のぼくなので、行動の前にものすごく準備をしてしまう。
もうそろそろ犬を迎えるための準備が整ったなと思ったのは、2021年の年末。
3年くらい準備に時間がかかってしまったが、もういつ何時、犬を迎えても大丈夫な状態。完全無欠の“犬ウェルカム”なぼくだ。トイプードルでも、チワワでも、柴犬でも、ポメラニアンでも、マルチーズでも、ビション・フリーゼでもなんでも来いだ。できれば、中型犬以下だ。大型犬は家の広さ的に無理だ。
それから、いよいよ実際の犬に会うべく、近所のペットショップに行ってみた。犬との初対面だ。
そうなのだ、実は犬を飼うために3年も準備してきたのに、飼いたい犬種が決まっていないばかりか、犬そのものにもほぼ触れあったことがなかったのだ。順番が逆ではないかな?とは思いつつ、店員さんから抱かせてもらった子犬はびっくりするほど小さくてかわいくて、命だった。命すぎた。

今すぐに「この子にします!」と言って、お金を払えば連れて帰ることができる。
でも、命を選ぶってなんだろう? 命をお金で買うっていいのかな? と、これまで準備をしながら見て見ぬフリをしてきた疑問が急に頭をもたげてきて、自分がやってることって本当にいいのかと根本的なところから不安になってしまい、その日はそれだけでお店を後にした。
ぼくがあの日、抱かせてもらったあの子はその後幸せになってるだろうか。

edit : Sayuri Otobe
イラストレーター アボット奥谷
