音楽家・青葉市子×写真家・小林光大「Choe」
音楽家・青葉市子×写真家・小林光大が紡ぐ、旅と日々の記憶。Choe「Porcelain」October 31, 2020
クラシックギターを片手に国内外を旅する音楽家の青葉市子さん。各地でインスピレーションを汲み上げながら、日々、言葉と音楽を紡いでいます。その旅に同行し風景を切り取っているのが、写真家の小林光大さん。日々の生活に戻っても、互いの存在と作品は呼応し合い、ときには小林さんの写真を通して青葉さんが創作することも。
この連載では、旅と日常とまたぎながら2人が生み出したものを「Choe」と名付け、青葉さんのエッセイと音楽、小林さんの写真を交えながらお届けします。
ニューアルバム『アダンの風』を12月2日にリリースすることとなった青葉さん。そのビジュアルを制作するために、二人はまた旅へ出ました。今回からはその様子と、アルバムにまつわる作り手たちの静かな声をお楽しみください。
Porcelain
9月。「Porcelain」MV撮影のため、私たちは奄美大島にいた。
潮風が頬を撫でて、靡く髪は龍みたいにあちらこちらへ伸びている。太陽を見つめて目を細めると、睫毛に乗った虹の粒で世界はいっぱいになった。奄美空港に降り立つ直前、上空からブロッケン現象を見ていた。ブロッケン現象とは、背後に太陽があるとき、水蒸気によって散乱された光が、虹の輪となって影をつつむ現象のこと。飛行機の影が、薄い雲の上で虹につつまれて、その下のエメラルドの海にまで運ばれていた。海に泳ぐ飛行機の影は、まるで鯨のようだった。
前日からロケハンをして下さっていた先発組の皆さんと合流する。監督の光大さん、プロデューサーの沖さん、いけしゅんさん、照明のじゅくさんに、美術のちひろさん、現地で奄美のことを教えてくださる太郎さんと海に詳しいサーファーの方々。後発組で一緒に来た、カメラのペンナッキーさん、スタッフのあおいさん、棚橋さん。そしてキャストの山本ケイジさん。
個性豊かな皆さんと一緒に乗り込むグランドキャビンは、まるで海賊船のようで、どこまでも行けるような気がした。
次回へ続く
music & text:Ichiko Aoba photo:Kodai Kobayashi