&Cooking 渡辺有子の料理教室ノート。
「彩り豊かな秋の和食」。渡辺有子の料理教室1年目11月November 09, 2024
料理家の渡辺有子さんが先生に、ライターの吉田直子さんが生徒に。本誌で連載中の「&Cooking 渡辺有子の料理教室ノート」がWebでも読めるようになりました。1年目11月のテーマは、「彩り豊かな秋の和食」。3つのレシピを紹介します。
彩り豊かな秋の和食。
先生:ねぇ直子さん、今回の教室はいつも以上にがんばってついてきてほしいの。
生徒:いきなりどうしたんですか!?
先生:和食と決めたものの、下ごしらえがたくさんあるので急に心配になったのよ。
生徒:これまでの教室の積み重ねがあります。私を信じてくださいっ!
先生:よ~し。「五色蒸し寿司」から始めましょう。まず米を炊きますよ。炊けたらすぐに飯台に移して合わせ酢をかけて切るように混ぜ、絞ったぬれ布巾をかけておいてね。
生徒:私は「里芋の唐揚げ」にする里芋を下茹でしておきますね。「ホウレン草と生ハムのクルミ和え」のためにお湯も沸かして……。
先生:あらっ、直子さんいい感じ。ホウレン草は1茎ずつ湯に放って、熱いうちに盆ザルの上に広げてね。調味料と絡めるときに水っぽくなるので、水には取りません。
生徒:はいっ! 下茹でした里芋は、調味料を入れたカツオだしで煮るんですよね。
先生:その通り。鍋のフタをずらして10分煮てね。フタをぴったり閉めてから火を止めて、冷ましながら味を含ませましょう。お寿司用の具材を準備しますよ。まずは生タラ。鍋に水と昆布と調味料を入れて10分ほど煮たら、皮と骨を取り除いてほぐしておきます。
生徒:レンコンも薄切りして、湯にお酢を入れて2~3分茹でます。あれ、味つけは?
先生:酸味がやわらかくつけばいいの。次に錦糸卵を作りますね。卵を溶き、塩と酒、片栗粉を入れて混ぜます。フライパンに油を熱して卵液を流し、両面にさっと火を通します。
生徒:盆ザルの裏に広げて……。
先生:粗熱が取れたら、クルクル巻いて包丁で細く切っておいてね~。最後にユリ根と三つ葉を下ごしらえしたら、下準備は完了です。
生徒:ばんざーい!
先生:休憩しないで和え物を作るわよ~。先に茹でておいたホウレン草の水をきります。握るように絞ると苦味やエグ味が出るので、両手で挟んで水気をおさえるようにしてね。
生徒:ずっとギュウギュウ絞ってました!
先生:ホウレン草は5等分に切って、生ハムは6等分に切ります。クルミはローストしてから粗めに砕きますよ。
生徒:ハンディブレンダーでクルミをガリガリするのはおまかせください!
先生:ホウレン草に薄口醤油をふります。クルミの風味が消されるので、和え衣に醤油は使いません。インゲンの胡麻和えなども素材にだけ醤油をふるといいの。生ハムと一緒に器に盛ったらクルミときび砂糖、塩を合わせたものをかけます。最後に菊花を散らしてね。
生徒:そろそろ集中力が切れそうです~。
先生:あら大変。生ハムでもつまみながら、もうひとがんばりしましょう。里芋に片栗粉を薄くまぶして揚げていくわよ~。
生徒:生ハムで復活しました。揚げます!
先生:すでに火は通っているので、まわりがカリッとなれば十分よ。油をしっかりきって、器に盛り、柚子の皮を削りましょう。
生徒:ラスト、蒸し寿司の仕上げですね!
先生:器に酢飯を盛って、下ごしらえした4種類の具材を盛り、蒸気のあがった蒸し器で3分ほど蒸します。三つ葉をのせてさらに1分ほど蒸します。これで3品完成よ。和の献立は、段取りさえ守れば上手にできるの。
生徒:和食という壁を乗り越えた気分です~。
1.五色蒸し寿司
〈材料〉作りやすい分量
米…2合
黒米…大さじ2
水(米の浸水用)…360㎖
酢…90㎖
きび砂糖…大さじ1と1/3
塩…小さじ1
・生タラ(切り身)…2切れ
水…200㎖
昆布…3㎝角
みりん…大さじ4
薄口醤油…大さじ2
塩…小さじ1/5
・レンコン…80g
水…300㎖
酢…大さじ2
・卵…2個
塩…少々
酒…小さじ1
片栗粉…少々
油…適量
・ユリ根…1/2個
・三つ葉…1束
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〈作り方〉
1.お米をといでザルにあげ、黒米と合わせて浸水させ、鍋か炊飯器で炊く。酢、きび砂糖、塩を混ぜ、合わせ酢を作っておく。炊きたてのご飯を飯台に出し、合わせ酢をまわしかけて切るように混ぜる。うちわであおぎ、酢をなじませる。固く絞ったぬれ布巾をかけておく。
2.生タラを煮る。鍋に水と昆布、みりん、薄口醤油、塩を入れて、ひと煮立ちさせタラを入れ、フタをずらして中火で10分ほど煮る。味を含めてから、皮と骨を取り除き、ほぐす。
3.酢バスを作る。レンコンは皮をむき薄切りにして酢水(分量外)にさらす。鍋に分量の水を入れて沸かす。酢を加えてレンコンを加え、2〜3分茹でてザルに取り、そのまま粗熱を取る。
4.錦糸卵を作る。ボウルに卵を溶きほぐし、塩、酒と片栗粉を合わせて入れてよく混ぜる。フライパンに油を熱して余分な油はペーパーで拭き取り、卵液を適量(薄く一面に行き渡る程度)流し、中火弱でさっと火を通し裏返して同じように火を通す。焼けたらひっくり返した盆ザルの上に置き、残りも同様に作る。重ねてクルクルと巻き、包丁で細く切る。
5.ユリ根は一片ずつにはがし、少ない湯で2~3分茹でる。三つ葉はさっと湯通しして3㎝長さに切る。
6.器に1の酢飯を盛り、2、3、4とユリ根を盛り、蒸気のあがった蒸し器で3分ほど蒸す。三つ葉をのせさらに1分ほど蒸す。
2.里芋の唐揚げ
〈材料〉作りやすい分量
里芋…4~6個
カツオだし…400㎖
みりん…大さじ2と1/2
薄口醤油…大さじ1と1/2
塩…小さじ1/2
揚げ油…適量
片栗粉…適量
柚子の皮…適量
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〈作り方〉
1.里芋は皮をむいて竹串がスッと入るまで下茹でをする。
2.鍋にカツオだし、みりん、薄口醤油、塩を加えて、ひと煮立ちさせ、水気をきった里芋を加えてフタをずらして10分煮る。フタをぴったりして火を止め、味をしみ込ませる。
3.フライパンに油を入れて高温に熱する。汁気をきった里芋に片栗粉を薄くまぶし、まわりがカリッとなるまで揚げる。
4.油をしっかりきり、器に盛って柚子の皮を削る。
3.ホウレン草と生ハムのクルミ和え
〈材料〉2〜3人分
ホウレン草…1束
生ハム…2枚
クルミ…80g
薄口醤油…小さじ1と1/2
きび砂糖…小さじ2
塩…少々
菊花…適量
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〈作り方〉
1.ホウレン草は1茎ずつさっと茹で、盆ザルにあげ水気を絞り、5等分長さに切る。生ハムは6等分に切る。クルミはローストしてから、ハンディブレンダーで粗めに砕く。
2.ボウルにホウレン草を入れて、薄口醤油をふっておく。
3.別のボウルにクルミ、きび砂糖、塩を合わせる。
4.器に2と生ハムを盛り、3をかける(または2を加えて和える)。菊花を散らす。
渡辺有子先生
わたなべ・ゆうこ/東京都生まれ。料理家。スタジオ「FOOD FOR THOUGHT」にて、料理教室や食にまつわるイベントを開催。東京・代々木上原と西荻窪で、同名の器店をディレクション。作家ものの器や食まわりの商品を扱う。『料理と私』(晶文社)、『渡辺有子の家庭料理』(主婦と生活社)など著書多数。旬の素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評があり、いつまでも初心者気分でいつづける生徒・吉田直子にも、懇切丁寧に料理を教える。
吉田直子生徒
よしだ・なおこ/東京都生まれ。ライター。冠婚葬祭で使う小物とジュエリーのブランド〈シュオ〉のディレクター、ファッションブランドのプレスを務めるなど、フレキシブルに働く1 児の母。2019年、絵本『こっぷんとかっぷん』(絵・よこやまかんた/若芽舎)を刊行。2020年には蒼井優の著書『今日もかき氷【進化版】』(マガジンハウス)の編集を手がける。渡辺有子の料理教室で毎月記事をまとめているが、いまだに作るよりも食べることを好む。
photo : Wakana Baba text : Naoko Yoshida