50研 &Premium分室

50歳までにやっておきたいこと、50歳になったらやりたいことはなんですか?50研 &Premium分室考 Vol.03July 19, 2024 /〔PR〕


50歳からの住まいと暮らしについて考える「50研 &Premium分室」では、本誌読者のコミュニティ「&Premium iD」にて50代からの生き方や住まいに関する調査を実施。「50歳までにやっておきたいこと、50歳になったらやりたいことはなんですか?」という問いに対して、「理想の住まいを手に入れたい」「語学やスキルなど、学び直したい」など、さまざまな回答が集まりました。ここでは、50歳からの自分らしい暮らしを楽しんでいる商品開発アドバイザー、中小企業診断士の重松久惠さんと、まさに50歳になったばかりというデザイナー・編集者の松崎紀子さんによる対談を実施。二人のリアルな対話のなかに、これからの暮らしのヒントを探します。

重松さん (右) の住まいを訪ねて50歳からの暮らしについて聞く松崎さん (左) 。柔らかな光が差し込むリビングには、重松さんが「替えがきかないもの」と語る器がずらりと収められている。
重松さん(右)の住まいを訪ねて50歳からの暮らしについて聞く松崎さん(左)。柔らかな光が差し込むリビングには、重松さんが「替えがきかないもの」と語る器がずらりと収められている。

50歳世代が先輩世代に聞いた、これからの暮らしと生き方のこと。

 20代で沖縄へ移住。結婚、出産子育てをしながら約 20 年間暮らしたのち、最近、出身地である神奈川へと戻ってきたという、デザイナー・編集者の松崎紀子さん。ちょうど50歳になったばかり、再婚もしたばかりの松崎さんが、「50歳からのこと」について話を聞きたいと、先輩世代である商品開発アドバイザーの重松久惠さんが60代になってから引っ越したという自宅を訪問。さまざまな企業のアドバイザーとして働き、今は、大学院で教鞭もとる、重松さんのアクティブな暮らしの秘訣を聞きながら、「50歳からの生き方、住まい方」について語り合う。


松崎紀子(以下松崎):8月に家族で新しい家に引っ越しをする予定があるんです。再婚してパートナーとなった彼の実家で、少しずつリフォームしながら暮らしていくことにしました。重松さんは、今のこの家に越してきて2年でしたっけ? きっかけは?

重松久惠(以下重松):大学院で教壇に立ったり、中小企業支援機関の仕事をしたりしているのだけれど、そういった職種って、定年がおおむね70歳なんです。ずっと賃貸暮らしをしてきて、64歳のときに、はたと「6年後に定年を迎えた後、家賃を払い続けられるかしら」と不安に思ったのがきっかけで購入しました。

松崎:62㎡の部屋を選んだのはなぜでしょう?

重松:北欧の人口の半分はひとり暮らしをしている50代の人々だと聞いたことがあって。それで、関連する本を読み漁ったんです。そのうちの一冊『ひとりで暮らす、ひとりを支える―フィンランド高齢者ケアのエスノグラフィー』に、「ひとりが快適に暮らすのに理想的な広さは60㎡くらい」と書いてあって。それにならうことにしました。以前の家は52㎡だったので、少し広くなったことに。北欧の人より体が小さい分、もっと小さくても大丈夫そうと思うくらい、快適です。

松崎:ずっと都心に住んできたのに、なぜ、都内でも西部、多摩地域に?

重松:12歳から26歳まで住んでいたのが、ここから徒歩25分くらいのあたりなんです。今の家を見にきたときに、土地のにおいに懐かしさや居心地のよさを覚え、「ああ、いいなあ」と思いました。若い頃は、都会志向だったのに、“心地よく思えるもの”がこんなにも変わるとは想像もしていませんでした。

松崎:ご自身の仕事が主に集中する、都心から少し距離を置くことに不安はありませんでしたか?

重松:移動が多少不便ではあるものの、不安には思いませんでしたね。土地勘があっただけでなく、70代以降の暮らしを考えると、ここに住むのがベストだと思ったからです。70代以降に好きな手仕事を続けていることが理想なんです。その準備も兼ねて、織物業が発展してきた町、八王子で機織りを、国立で金継ぎを習っているんですが、ここはそのどちらにも近い。先々の自分の新しい拠点になりそうな予感がしました。また、趣味のハイキングをするのにいい奥多摩がすぐそこにあり、料理を友人にふるまうのに便利なオープンキッチンも備え付けてある。暮らしのバリエーションを豊富に持っていられる場になっています。

松崎:そのぶん、人生の味わいやうまみも何倍にもなりそうです。私はこれまで、仕事や子どもたちの成⻑を考えて暮らしてきたところがありますが、 50歳を迎えたいま、意識が変わりつつあるんですよね。パートナーと自分が、あとどのくらい働けるのか、老後をどう過ごし、どんなふうに終末を迎えたいのかということと、家や暮らしを照らし合わせるべきときなのかもしれません。

重松:パートナーの方のご実家は昭和の時代に建てられた家だそうだけれど、今風にリフォームするということ?

松崎:幸い、鉄骨の頑丈なつくりだったこともあって、まずは必要最小限だけ。あとはその時々で必要な修繕を繰り返しながら暮らしていこうと考えています。自分たちでできることなら、積極的にDIYもしようと勉強中。パートナーが率先して提案をしてくれる人なので、身の丈に合った暮らし方ができそうで、安心できています。

重松:素敵……。共同作業で暮らしを整えていくんですね。新しいことを学んで、知識を得ていくことって、後々に役立つこともあるから、いいと思う! 私は50歳を過ぎてから、大学院に通い、その後にキャリアを生かす後押しをしてくれそうな「中小企業診断士」という資格も取得。そのおかげで新たな仕事にも携われるようになりました。コロナ禍には機織りや金継ぎを習い始め、今、未来の自分像を思い描けるようにもなって。いくつになっても学びを止めず、あらたな知識を引き出しに入れ続けることで、人生はますます豊かになるように思います。

松崎:引っ越しにあたって断捨離ってしました?  人生のゴールまで持っていきたいものとそれ以外という基準で、新居に持っていくものとそうでないものを分けている最中で。

重松:そもそも以前の家でも器と台所道具とリビングライトくらいしか、“持ち物”がなかったんです。料理をして友人をもてなすのが好きな私の暮らしには、器と台所道具がそろっていることが何より大切で。特に器は、どれも旅先から持ち帰った思い出とともにあるもの。ひとりで持つには少し数が多めだとしても、現地でおいしかった料理を友人たちに披露するときには、あると場が盛り上がり、全員が幸せな気分になれる。手放したら心がソワソワしてしまいそうなものや思い出の品は、無理に手放さなくてもいいと考えるほうです。

松崎:なるほど、参考になります。

重松:私は人生のゴールを80歳に置いていて、今はまだ助走期間だと思っているんです。年齢を重ねると、女性は途中、更年期もあり、どうしたって、焦りや不安にかられる機会が増えます。私にも、「将来を思うと不安になり、過去を振り返れば後悔しかない」なんて時期がありました。それで、意識して、80歳になったときの自分をイメージするようにしたんです。そうしたら、気が楽になりました。だって50歳はまだ人生半ばだし、60代になっても80歳まで時間があるんですもの。

松崎:理想の80歳を目指すのに、50代から備えておいたほうがいいことってありますか?

重松:「これしかしたくない」「これしかできない」という思い込みを捨てて、他人が勧めてくれたことは断らないことじゃないでしょうか。第三者の客観的な意見って、案外合っているもので、それが仕事なら、適職や天職だったなんてこともあり得ます。

松崎:ゴールに向かう過程では何事も吸収する姿勢であるほどに、さまざまな可能性が広がるというのは、重松さんを見ているとよくわかります。

重松:神社や神棚に手を合わせるとき、神様にお願いするのではなく、宣言するといいんですって。「こういう人になって、こんなふうに誰かの何かの役に立ちます。そのためにこれをやります」って。日々どう暮らしていくかって、そういうことだと思うんです。

松崎:まさに50代に突入したところ。これからは“自分軸”で、しなやかに生き、暮らしていくことを意識していきます。

重松さんの暮らしから見つける、ベターライフのヒント。

『ひとりで暮らす、ひとりを支える―フィンランド高齢者ケアのエスノグラフィー』 (青土社) は、重松さんが60代以降の暮らしの指南書と語る、一冊。「フィンランドではひとりで暮らすことや、前向きな家庭内別居を選択する高齢者が多いそうで、この本から自立した幸せな暮らし方のヒントをもらっています」
『ひとりで暮らす、ひとりを支える―フィンランド高齢者ケアのエスノグラフィー』(青土社)は、重松さんが60代以降の暮らしの指南書と語る、一冊。「フィンランドではひとりで暮らすことや、前向きな家庭内別居を選択する高齢者が多いそうで、この本から自立した幸せな暮らし方のヒントをもらっています」
もとはおそらくいくつかの部屋に分かれていただろう団地の一室は、リノベーションされた状態で売りに出されていた。「1LDKの白い空間に生まれ変わっていました。特徴といえば、アイランド型のキッチンが設えられていたことくらい。白い壁に床、窓。その“何でもない感じ”に、『ああ、自分の好きな暮らしが始まるんだ』と、とってもワクワクしたんですよね」と重松さん。
もとはおそらくいくつかの部屋に分かれていただろう団地の一室は、リノベーションされた状態で売りに出されていた。「1LDKの白い空間に生まれ変わっていました。特徴といえば、アイランド型のキッチンが設えられていたことくらい。白い壁に床、窓。その“何でもない感じ”に、『ああ、自分の好きな暮らしが始まるんだ』と、とってもワクワクしたんですよね」と重松さん。
松崎さんが大切にしている沖縄のやちむん。重松さんが沖縄まで松崎さんを訪ねたときに一緒に読谷村の井口工房に出かけ、手に入れた記念の一枚。「その後、うっかり割ってしまったんですが、堀道広さんの金継ぎ教室に通う重松さんが美しく蘇らせてくれました。そんな多才な重松さんにすっかり感化され、私もいよいよ金継ぎを習い始めました」
松崎さんが大切にしている沖縄のやちむん。重松さんが沖縄まで松崎さんを訪ねたときに一緒に読谷村の井口工房に出かけ、手に入れた記念の一枚。「その後、うっかり割ってしまったんですが、堀道広さんの金継ぎ教室に通う重松さんが美しく蘇らせてくれました。そんな多才な重松さんにすっかり感化され、私もいよいよ金継ぎを習い始めました」
日本全国のものづくりに携わる職人とアパレルなどの企業の橋渡しをすることもある重松さん。そんな仕事で生地の産地に出かけた際、手に入れた端切れは、何枚かを自ら繕って、ダイニングチェアの座面カバーにリユース。
日本全国のものづくりに携わる職人とアパレルなどの企業の橋渡しをすることもある重松さん。そんな仕事で生地の産地に出かけた際、手に入れた端切れは、何枚かを自ら繕って、ダイニングチェアの座面カバーにリユース。
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重松久惠商品開発アドバイザー・中小企業診断士

出版社、ファッションデザイン会社を経て独立。〈D&DEPARTMENT〉では商品開発コーディネート、東洋大学大学院では教壇に立つなど、アクティブに活躍。

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松崎 紀子デザイナー・編集者

雑誌編集部、ホームページ制作会社、フリーランスを 経て、起業。ブランドデザイン、販促ツール制作や、 SNS 活用プロモーションをはじめ、編集・執筆も。3人の子どもたちと共に、パートナーとの新生活が始ま る。

designclips.jp

「&Premium iD」の調査結果50歳までにやっておきたいこと、50歳になったらやりたいことはなんですか?

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最も多くの回答が集まったのは「理想の住まいを手に入れること」。

最も多く回答が集まったのが「生涯住み続けられる理想の住まいを手に入れたい」で26%。そのほかは、「語学やスキルなど、学び直したい」が21%、「家族や友人と過ごす時間をもっと持ちたい」が17%、「一人旅」が12%となった。ここでも最大の関心ごとは「住まい」となる一方で、幅広いジャンルの「やりたいこと」の回答が集まった。人生のハーフタイムからの後半戦、まずは理想の住まいを手に入れて、さまざまなことに挑戦したいという意欲的な読者が多いようです。

&Premium分室考50歳を見つめる先の、住まいの考え方

自分の拠点を見つめ直し、いくつになっても学び続ける姿勢が暮らしを豊かにする。
重松さんと松崎さんの対談から受け取れることは、まずは住まいや住む場所を自らの意思でしっかりと選ぶことの大切さと、何歳になっても学び続けることで人生はさらに豊かになっていくということです。64歳で今の住まいに移り、80歳でピークを迎えることを見据えて機織りや金継ぎといった新たなことにトライしている重松さんの生き方は、50歳からの暮らしの一つのお手本となるものです。二人に共通するのは50歳からの人生を前向きに捉えていること。前向きに、学び続ける姿勢のためにも、住まいが大切なようです。

INFORMATION

50研

人生100年時代の中間点であるアラウンド50をテーマとし、50歳からの豊かなライフスタイルの実現を目指して調査・研究を行うプロジェクト。特設サイトでさまざまなコンテンツを順次公開していくほか、本サイトに設立した「&Premium分室」でも、独自調査を元にした読者の“知りたい”に応える記事をお届けしていきます。

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photo : Shota Matsushima text : Marika Nakashima

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