染色家・柚木沙弥郎の75年にわたる創作活動を辿る「柚木沙弥郎 永遠のいま」が、静岡市美術館で8月16日より開催。August 14, 2025

2024年に101歳でその生涯を閉じた染色家・柚木沙弥郎。75年もの間、染色を中心に、版画やコラージュ、絵本、立体作品などジャンルを超えた幅広い創作物を生み出してきた。また、染色家として活動する一方で、教育現場や飲食店のアートワーク、企業とのコラボレーションなど、現代の暮らしに寄り添うものづくりも手がけ、それらの作品は今もたくさんの人に愛され続けている。そんな彼のこれまでの軌跡を振り返る展覧会「柚木沙弥郎 永遠のいま」が、8月16日（土）から10月13日（月）まで、静岡市美術館で開催される。初期の作品から、初公開となる晩年のコラージュ作品まで、約300点の代表作が集う。

今回の展覧会は、彼の創作人生を辿る4章で構成されている。

染色家・芹沢銈介に憧れ、染色の道を志すきっかけとなった柚木のルーツを知ることができる第1章「民藝はずっと僕の根っこにある」。「型染」の一種である注染（ちゅうせん）技法を用いた作品が並ぶ。浴衣や手ぬぐいなど小幅の生地のために使われるその技法を、洋服地などといった広い幅の布への染色に応用した初期作品が一挙に鑑賞できる貴重な機会となっている。続く第2章「ワクワクしなくちゃ、つまらない」では、版画や立体造形など、染色という枠を越えた作品の数々が集まり、人や鳥のモチーフなど、彼を象徴する独自の造形や豊かな色彩感覚に触れることができる。第3章は「旅の歓び」。民藝と出合った岡山、染色修行の起点となった静岡、さらにはインドやパリなど、創作の背景となった土地をめぐるように、作品や資料が展示されている。そして最後の第4章「今日も明日は昨日になる」では、2000年代以降の作品を中心に紹介。インテリアショップ『イデー』での展示や商業空間のアートワークなど、若い世代との協働で活動の幅をさらに広げていくなかで、「物心がついたのは80歳になってから」とユーモアたっぷりに語った彼らしい、自由で生命力にあふれる力強い作品が、展示を締めくくる。

生涯を通じて創作時間そのものを楽しみ続けた柚木。世代を越えて響くその世界観に、ぜひ触れてみてほしい。