EVENT いま訪れたい場所、見たいもの。
奄美大島の染色家・〈金井工芸〉の金井志人さんなど、『Vacant/Centre』にゆかりのある作家によるグループ展「Plural Gateways」が6月16日まで開催中。May 27, 2025
それぞれのテーマ、それぞれの素材と向き合う作家たち。
2025年5月23日(金)〜6月16日(月)、東京・代々木八幡『Vacant/Centre』にて、グループ展「Plural Gateways」が開催される。
このたび、一堂に会するのは、染色や革、藁など、それぞれに異なる素材と向き合う、6組の作家。いずれも『Vacant/Centre』にゆかりのある個性豊かな面々が揃っている。
鹿児島・奄美大島出身の金井志人さんは「金井工芸」の二代目として、古来より奄美に伝わる泥染めなどの染色技術を受け継ぐ染色家。伝統的な大島紬の染色を守りながらも、その概念にとらわれることなく、日々試行を重ね、染色の新たな価値と表現を追求。自然の恵みを生かした染色を通して、先人の知恵と奄美の豊かな色彩を現代に伝える。また、〈Vacant〉のプロダクトレーベル「Vacant/Multiple」の衣服の染色も手掛けている。
岩手・雫石を拠点に活動する青山幸太さんは、確かな技術と独自の感覚を用いて、ショップのインテリアや什器を手がけ、特注家具のデザイン・製作を行う。
広島県福山市北部の山里で創作活動をしている太田一永さんが素材とするのは、主に獣害として駆除される野生の鹿や猪の革。住んでいる土地に咲く季節の植物を革に染め移し、自然が作り出す瑞々しい色柄で、山里の風景を写し留める作品を生み出している。
大橋和彰さんは2005年に〈原田左官工業所〉で左官の修行をスタート。2015年に〈大橋左官〉を設立して以来、内装をはじめ、ワークショップや展示など、幅広い活動を展開している。昨年、『Vacant/Centre』で行った個展では、左官の技術を用いて制作したタイルなど、大橋が施工現場に関わりながら、その技術と自由な発想で個人的に創作してきたものを展示した。
社会福祉法人地蔵会が千葉県に設立した〈空と海〉は、障がいのある方のニーズと活動を支援する福祉サービス事業所。日本古来の和紙を使った作品から始まり、今では80名を超える方が、木工、染め・織り・刺繍、陶芸、絵画、料理など、様々な制作活動に携わっている。
〈Straft〉は、Tamaki IshiiさんとKazuma Yamagamiさんによって結成されたクラフトユニット。伝統的な藁工芸の技術を継承しながら、現代的な表現のかたちを探求。地域に根ざした自然素材とその背景にある文化的な物語に着目し、人と自然の調和を体現する作品づくりを目指している。
展覧会のコンセプトを示すステートメントには、次のような言葉が書かれている。
つくるという行為は、素材との偶然や必然的な出会いのなかで始まり、選び取った手触りや重ねられた思考によって導かれていきます。
作品はその軌跡のひとつの現れであり、そこに至るまでには数えきれない選択と応答の積み重ねがあります。
それぞれの作家が素材とどう向き合い、どのような試行の過程をたどったのか。その道程に浮かび上がる風景が交差する場に、また次なる創作への入口が開かれ、新たな道が続いていくのです。
会場となる『Vacant/Centre』は、代々木八幡神社近くに位置するアートスペース。原宿にあったプロジェクトスペース『Vacant』が2019年にクローズした後、2021年に新たな拠点としてオープンした。展示やオリジナルプロダクトの制作などを活動の軸に、多様な「場づくり」(=Place Design)を進めている。このたび、新たに生まれる展示空間にも、ぜひ注目してみてほしい。
Event Information"Plural Gateways"

会期:2025年5月23日(金)〜6月16日(月) ※金〜月のみオープン
時間:13:00〜18:00
会場:Vacant/Centre
住所:東京都渋谷区元代々木町 27-6
text : Yu Miyakoshi