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先代の思いを受け継ぎ、新たな解釈を加える。岡山・倉敷『融民藝店』。新しい暮らしが見つかる店。May 01, 2025
2025年6月号の「新しい暮らしに出合える、店ともの。」は、まだ見ぬアイテムや、新鮮な暮らしのスタイルに出合える13軒が登場。ここでは、岡山・倉敷『融民藝店』をWEBで特別に公開します。

古くから民藝運動に縁のある岡山県倉敷市。白壁の蔵屋敷が並ぶ、風情ある倉敷美観地区の一角、阿智神社のふもとにあるのが『融民藝店』だ。店主の山本尚意さんは、先代の小林融子さんから2022年に店ごと事業を引き継いだ。
「もともと1971年に創業し、2021年に50周年を迎えました。その節目に融子さんは引退されることに。僕は店に通っていたこともあって声をかけていただきました。店名を変えてもいいし、自由にしていいと言ってくださったのですが、融子さんの時代は全国からお客様がいらしたので、何より同じ店があることが大事だと思いました」
店名はもちろん、倉敷民藝館の初代館長・外村吉之介が書いた文字が残る看板、什器や店の佇まいはそのままにした。店内に並ぶ陶器や吹きガラス、手織りの織物、カゴなど、そのまま受け継いだ作り手のものも多いが、一方で、山本さんの独自の解釈で新たに取り扱いをはじめたものもある。
「融子さんは何より『生活に使える道具』であることに重点を置いていました。”健康で、無駄がなく、真面目で、威張らない”という外村の言葉がありますが、無駄な装飾や技術を誇張するようなものはお好きではありませんでした。ただ、実際に作り手と話して思いを聞くと、今の時代だったらいいかもしれないと思えるものもあって、それは積極的に取り入れていくようにしています」

最近、提案しているのは備中和紙の張り子。生活に必須の道具ではないが、土地に根付いた技術もまた民藝の延長線上にあるものだと捉える。
「先代の思いを引き継ぎながら、現代の暮らしに合った民藝を紹介していきたいと思っています。『今晩、あれに使いたいから』くらいの感じで気軽に器を選びに来てくれる店になったらいいなと。実際に目や手に触れたことが学びになり、新たな体験ができたり、記憶に残ったり。これからもそんな店であり続けたいと思います」
岡山県倉敷市阿知2−25−48 ☎086−424−8722 11:00〜18:00 月火休 臨時休業の場合はInstagram(@toworu_mingei)にて。店舗は江戸時代の町家を活用。

photo : Masanori Kaneshita edit & text : Chizuru Atsuta