FOOD 食の楽しみ。

真似したい、あの人の手作りおやつ。
〈ウォルド・ペストリー〉鰤岡和子さんの3つのレシピ。January 14, 2022

〈ウォルド・ペストリー〉の屋号で活動し、自宅と同じ敷地にある工房にて焼き菓子を作る菓子職人・鰤岡和子さんが作るお菓子はさくさく、しっとりなど舌触りも抜群。そこにナッツや果実、果汁などがアクセントとして加わり、しみじみと味わいたい一品が出来上がる。そんな鰤岡さんの特別な3つのレシピを、ここで紹介。

カボスのパウンドケーキ
ヘーゼルナッツとアニスのクッキー
柿と紅玉のクランブルケーキ

*2021年12月20日発売『&Premium』最新号「やっぱり、おやつは大切。」より。

自宅のキッチン。自宅は築約70年の家を間取りも建材もまったく新しく変えてリノベーションした。キッチンに鰤岡さんが希望したのは窓があること。工房の作業台の前にも窓を作った。
自宅のキッチン。自宅は築約70年の家を間取りも建材もまったく新しく変えてリノベーションした。キッチンに鰤岡さんが希望したのは窓があること。工房の作業台の前にも窓を作った。
テーブルは夫の木工作家・鰤岡力也さんが作ったもの。上から、パウンドケーキ、クランブルケーキ、クッキー。
テーブルは夫の木工作家・鰤岡力也さんが作ったもの。上から、パウンドケーキ、クランブルケーキ、クッキー。

失敗を繰り返すことでお菓子作りは上達していきます。

 自宅脇にある小さな工房で〈ウォルド・ペストリー〉という屋号で焼き菓子を作っている鰤岡和子さん。家族が食べる日々のおやつは「ほぼ試食用のものです」と言う。ゆえに工房で作ることが多いが、オーブンを使わないものなら、自宅のキッチンも活用する。

「20年くらい前にカフェを開きたいと思って、カフェに勤めたのですが、そこでお菓子作りにすっかりハマってしまって。以来、ひたすら作り続けて、今に至ります。趣味が仕事というか、仕事が趣味というか。食べるより、作ることにものすごく興味があるんです」

 作るのが好きだと言う通り、鰤岡さん自身は、実は甘いものがそれほど得意ではない。その分、娘と夫は甘いものが大好き。毎日のように食べているが、時間は決まって朝だという。

「二人は朝ごはんを食べた後にケーキを食べたりしています。昼間はみんなの時間が合わないし、夜は胃がもたれる。それで、自然と朝がおやつ時間となりました。特に娘は、朝に甘いものを食べないと目が覚めないらしいです」

 その際のおやつも、ほぼ鰤岡さんの手製。「ただ、私はスパイスなどをいろいろ入れてしまうのですが、娘はプレーンなものが好み。なので、お子さんがたくさんいらっしゃるイベントに出る際は、彼女の意見も参考にしています」

 その娘と一緒にキッチンに立つときは、職人モードに入って厳しく指導してしまう工房ではなく、ゆったりと気持ちに余裕が持てる自宅で。

「彼女も料理やお菓子作りは好きなようです。夫の仕事である木工にも興味があって、手を動かすことが得意なのでしょうね。お菓子作りに大切なのは、失敗しても諦めないこと。うまくいかなかった原因を追究して次につなげることが、もっとも上達するコツだと思います」

 最終的には自分の好みの味に仕上がれば成功。どんなにレシピに忠実に作っても、混ぜ方や室温、オーブンのクセなどで微妙に味は変わってくる。

「なので、自分がおいしいと思う味になるまで、何度も作ってみることをお勧めします。そのうちに、このお菓子ならばこうするといいなど、自分なりのやり方がつかめてくると思います。さらに、今回、クランブルケーキには柿と紅玉を使いましたが、それをバナナに替えてみたり、カボスのパウンドケーキをユズにしたりなど、慣れてくるとバリエーションも増やしていけるように」

 自分の味を探求できて、材料も吟味できる。それこそが手作りの醍醐味ともいえる。それに好きなお茶を合わせれば、完璧なおやつタイムの完成。なのだが、鰤岡さん自身は椅子に座ってゆっくり過ごすのも苦手なのだそう。

「座ってゆっくりお茶をできるといいなあ、とは思うのですが、動いていないと落ち着かないんです。のんびり過ごしていると風邪をひいてしまいそうになる。常にオンの状態が私にとっては調子がいいのだと思います」

 だから、仕事がないときでも、つい工房にこもってしまう。自分自身は、ゆっくりおやつを味わうことはないが、確かな舌とたゆまぬ研鑽によって作られる焼き菓子は、多くの人に癒やしを与えている。おやつ時間を楽しむのではなく、楽しませるのが、彼女の喜びでもあるのだ。

 今回、教えてくれた3品は、どれも簡単に作れるものばかり。ただし、簡単ゆえの奥深さもある。「たとえ失敗しても大丈夫。何がうまくいかない原因なのかを考えることもお菓子作りの楽しみの一つなので、失敗はチャンスでもあるんです」

鰤岡さんの3つのレシピは以下をチェック!

レシピ01_カボスのパウンドケーキ

レシピ01_カボスのパウンドケーキ
カボスのパウンドケーキ
ホワイトチョコチップをまぶしたところ。溶けて 形はなくなるが、味にコクと深みが出る。
ホワイトチョコチップをまぶしたところ。溶けて形はなくなるが、味にコクと深みが出る。
10分くらい焼いたら、一度オーブンを開けて、表面にナイフで切れ目を入れる。
10分くらい焼いたら、一度オーブンを開けて、表面にナイフで切れ目を入れる。

〈材料〉
W17×D9×H6.5㎝の型1個分
バター…150g グラニュー糖…75g 
ハチミツ…30g 卵… 3個 
アーモンドプードル…40g 薄力粉…180g 
ベーキングパウダー…12g 
カボス…皮2 個分、汁40㎖ 
ホワイトチョコチップ…30g 
[表面用]
カボス汁…20㎖ 粉糖…15g

〈作り方〉
1.常温に戻したバターとグラニュー糖をボウルに入れて混ぜ合わせたら、ハチミツを加える。そこに溶きほぐした卵を少しずつ加えて、分離しないようしっかりと混ぜ、アーモンドプードルも加えて、全体が馴染むよう丁寧に混ぜ合わせる。

2.「1」を大きめのボウルに移し、薄力粉とベーキングパウダーをふるい入れる。

3.「2」に削ったカボス皮と汁を加えて混ぜ合わせる。

4.パウンド型に「3」の生地を1/3入れ平らにならし、ホワイトチョコチップでまんべんなく覆ったら、残りの生地を入れる。

5.170℃に温めたオーブンで15分焼く。途中でオーブンを開けてナイフで表面に縦に切れ目を入れる。

6.竹串を刺して生地がくっつかなければ焼き上がり。表面にカボス汁と粉糖をよく混ぜ合わせたものをハケでかける。1 ~ 2 ㎝幅程度に切り分けて皿に盛り付ける。

レシピ02_ヘーゼルナッツとアニスのクッキー

ヘーゼルナッツとアニスのクッキー
ヘーゼルナッツとアニスのクッキー
切るように混ぜたり、さっくり混ぜるにはカード  が使いやすい。ボウルからきれいに生地も取れる。
切るように混ぜたり、さっくり混ぜるにはカードが使いやすい。ボウルからきれいに生地も取れる。
生地は冷凍しておける。たくさん作っておけば、食べる分だけ冷凍のまま焼くだけでOK。
生地は冷凍しておける。たくさん作っておけば、食べる分だけ冷凍のまま焼くだけでOK。
1 粒の大きさを揃えると焼きムラもなく仕上がる。 慣れている鰤岡さんは手の感覚だけで均一に。
1 粒の大きさを揃えると焼きムラもなく仕上がる。 慣れている鰤岡さんは手の感覚だけで均一に。

〈材料〉
バター…100g きび砂糖…26g 
ヘーゼルナッツ(ロースト)…20g 
ココアパウダー… 8 g 小麦ふすま…10g 
塩…少々 薄力粉…160g 
アニスパウダー…小さじ1/2 粉糖…適量

〈材料〉
柿… 1 個 紅玉…1個 ドライチェリー…20g
 
生クリーム…適量 ローズマリー… 1 枝
[クランブル]
バター…100g オートミール…70g 粉糖…65g
 
黒糖…65g アーモンドプードル…65g
薄力粉…100g シナモンパウダー…小さじ1  
カルダモンパウダー…小さじ1/2 
ジンジャーパウダー…小さじ1/2

〈作り方〉
1.常温に戻したバターをボウルに入れて木べらで軟らかくし、きび砂糖を加えて混ぜる。

2.ローストしたヘーゼルナッツを麺棒などで細かく砕く。

3.ココアパウダー、小麦ふすま、塩、アニスパウダー、薄力粉を1 のボウルにふるい入れ、2 を加えてカードでさっくりと混ぜる。

4.1粒5gになるように分けて、両手で転がしながら丸く成形する。

5.クッキングシートを敷いた天板に4 を並べ、170℃に温めたオーブンで23分焼く。

6.焼き上がったら、粉糖をまぶして出来上がり。

レシピ03_柿と紅玉のクランブルケーキ

柿と紅玉のクランブルケーキ
柿と紅玉のクランブルケーキ
季節の果物で。焼くと形がなくなるまで軟らかく  なるので、大きめにカットしても大丈夫。
季節の果物で。焼くと形がなくなるまで軟らかくなるので、大きめにカットしても大丈夫。
鰤岡さんのガスコンロはダッチオーブン付き。魚焼きグリルでも直火用耐熱容器を使ってできる。
鰤岡さんのガスコンロはダッチオーブン付き。魚焼きグリルでも直火用耐熱容器を使ってできる。

〈材料〉
柿… 1 個 紅玉… 1 個 ドライチェリー…20g 
生クリーム…適量 ローズマリー… 1 枝
[クランブル]
バター…100g オートミール…70g 粉糖…65g 
黒糖…65g アーモンドプードル…65g
薄力粉…100g シナモンパウダー…小さじ1  
カルダモンパウダー…小さじ1/2 
ジンジャーパウダー…小さじ1/2

〈作り方〉
1.ドライチェリーは水で戻して柔らかくして、桜リキュール(分量外)に漬けておく。桜リキュールがなければ水で戻しておくだけでもOK。

2.柿、紅玉はくし形にカットしておく。

3.クランブルを作る。室温に戻したバター、オートミールをボウルに入れ、粉糖、黒糖、アーモンドプードル、薄力粉、シナモンパウダー、カルダモンパウダー、ジンジャーパウダーをそれぞれふるい入れ、木べらでほぐすように混ぜ合わせる。

4.バターが全体に均等に馴染んだら、木べらをカードに変えて切るように混ぜる。その後、手のひらで押してポロポロの状態にする。

5.「1」 と「2」をボウルに入れて「4」のクランブルを少量加えて混ぜ合わせたら蓋付きの直火用耐熱容器に入れ、上に残りのクランブルをのせる。

6.蓋をしてガスコンロのグリルに入れて、20分焼く。焼き上がったら20分冷まして、生クリームとローズマリーを添えて皿に盛る。

自宅の脇にある小さな工房。業務用のオーブンや冷 蔵庫が揃い、仕事のためのお菓子はここで作っている。 レシピを考えたり、焼き上がりを待つなどの合間時間に 読書をするのもこのスペースで。年に 1 回程度、工房販 売も行っている。
自宅の脇にある小さな工房。業務用のオーブンや冷蔵庫が揃い、仕事のためのお菓子はここで作っている。 レシピを考えたり、焼き上がりを待つなどの合間時間に読書をするのもこのスペースで。年に1 回程度、工房販売も行っている。
自宅キッチンからの眺め。自然光 が入り、風景を眺められる窓はキッチンに必須。
自宅キッチンからの眺め。自然光 が入り、風景を眺められる窓はキッチンに必須。
パウンドケーキの焼き上がり。そのままテーブルに出して、食べる分だけカット。
パウンドケーキの焼き上がり。そのままテーブルに出して、食べる分だけカット。

鰤岡 和子
Kazuko Burioka

2006年に〈ひなた焼菓子店〉の屋号で、自身の店をオープン。結婚、出産を経て、現在〈ウォルド・ペストリー〉の屋号にて焼き菓子を製作。公式ブログからの不定期の通信販売や、取扱店、イベントなどで購入できる。

photo : Sachie Abiko text & edit : Wakako Miyake

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