FOOD 食の楽しみ。
焼き色で表現する、美しき『シヅカ洋菓子店』の世界。December 20, 2021

引き算の美学が詰まった、 6種入りの真っ白な缶。
「パティスリーではなく、10年先も、20年先も続く、日本の洋菓子店を作りたい」。〈ピエール・マルコリーニ〉などで商品開発に携わっていた代表の栗原代奈さんが、2021年3月、東京・白金高輪に程近い住宅街に店を構えた。長くお菓子を作っていくためにも、できる限り、日本の農家の材料を使い、その味を邪魔しないよう、日本らしい引き算のお菓子作りをしていきたい。それを象徴するアイテムとして、栗原さんが真っ先に選んだのが、クッキー缶だった。「とても日本らしいアイテムだなぁと思ったんです。こんなに美しく、整然とクッキーが並ぶ缶は、海外ではほとんど見受けられないですから」
そして、5か月を費やして、完成したのが、第1号となる「SHIZUKA BISCUIT No.1」だ。イメージしたのは、作物の栽培具合が美しいグラデーションを生んでいるヨーロッパの田園風景。それを、クッキー6種の焼き色の濃淡で表現、さらに粉の種類と配合を変えて、3つの食感が楽しめるようにした。
6種の中で主役となるのは、北海道産小麦の全粒粉と国産バター、鹿児島県産のキビ糖などで焼いた、ハードビスケット〝全粒粉〞。脇を固めるのは、奈良県産の百花蜜のやさしい甘さが広がるナチュラルハニービスケットと、京都・宇治で栽培された和紅茶を使用した紅茶ビスケット、有機カカオのチョコレートを混ぜ込んだダブルカカオ。そして、北海道産強力粉はるゆたかを使った、サルタナレーズンのビスケットと、アーモンドのフロランタン。和紅茶、レーズン、アーモンドはすべて有機のものだ。それらを、縦18㎝横12㎝の真っ白な缶に整然と美しく詰めた。実は、白一色の缶にも、思いが込められている。農薬や化学肥料を極力使用しない、環境にも体にもいい材料を使っているにもかかわらず、「買った人も、それを贈られた人も、食べておいしいと思ってもらえるのがいちばんだから」と、ショーケースのポップにも、缶の中にも、そのことはひと言も記していない。だから、缶を白にすることで、余計なものを加えない、というブランドの思いを伝えたのだという。栗原さん自らデザインした店舗のイメージカラーも白。紙のショッパーも白。コックコートではなく、あえて白衣をユニフォームにしたのも、そのためだ。
車通りが少ない住宅街の一角にありながら、オープンの11時ともなれば、どこからともなく客がやってくる。客足は途切れることなく。13時をすぎれば、ショーケース上段に並ぶ4つのクッキー缶には、あれよあれよという間に“soldout”の札が。先日は、フランス人が来店し、“これは、どこの国のお菓子ですか?”と尋ねてきたという。クッキー自体は西洋菓子だけれど、焼き色で濃淡をつけたクッキー缶の美しい景色は他の国にはないのかもしれない。
Shop Data

東京都港区三田5‒4‒10 ☎03‒6381‒7770 11:00~18:00 火休 クッキー缶は定番が常時4 缶。そのほか、季節限定缶や、個売りの焼き菓子もある。生菓子は常時4種。定番はシュークリームとロールケーキで、ショートケーキはフルーツが季節替わり。https://www.shizuka-labo.jp/
photo:Ayumi Yamamoto text:Yuko Saito




























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