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「坂本龍一|音を視る 時を聴く」展が東京都現代美術館にて開催。December 16, 2024
サウンド・インスタレーションを包括的に紹介する、日本では最大規模の個展。
2024年12月21日(土)より、東京都現代美術館にて音楽家・アーティスト、坂本龍一さん(1952-2023)の個展「坂本龍一|音を視る 時を聴く」が開催されます。
50年以上にわたり、多彩な表現活動を通して、時代の先端を切り開いてきた坂本龍一さん。90年代からはマルチメディアを駆使したライブパフォーマンスを展開し、2000年代以降は、さまざまなアーティストとの協働を通して「音」を展示空間に立体的に設置する試みを積極的に思考、実践してきました。
坂本さんは生前、東京都現代美術館のために展覧会構想を遺していたといいます。今回はその構想のもと、坂本さんの創作活動における長年の関心事であった「音と時間」をテーマに、未発表の新作と、これまでの代表作から成る没入型・体感型サウンド・インスタレーション作品10点あまりをダイナミックに構成し、展開。大型インスタレーション作品を包括的に紹介する日本での展示としては、これまでに最大規模のものとなります。
本展に合わせて再制作される、高谷史郎さんとのコラボレーション作品。
注目は、坂本さんが長年にわたり協働をおこなってきたアーティスト・高谷史郎さんとのコラボレーション作品。
《IS YOUR TIME》(2017/2024)は、坂本さんが東日本大震災の津波で被災した宮城県農業高等学校のピアノに出会い、それを「自然によって調律されたピアノ」と捉え作品化したもの。大自然の営みによってひとつのものに還ったピアノが世界各地の地震データを用い、地球を鳴動する装置として生まれ変わります。
坂本さんと高谷さんのインスタレーションには、水や霧が重要な要素として繰り返し登場します。2007年に発表された代表作《LIFE–fluid, invisible, inaudible...》(2007) は、坂本さんのオペラ『LIFE』(1999)をベースとするサウンドに包まれた空間に、頭上に浮かんだ9つの水槽が明滅する中をゆっくりと歩み、従来のリニアな体験とは異なる時空間の拡がりと流れを体感できる作品となっています。ほか、《water state 1》(2013)、 そして本展にあわせて制作された《async–immersion tokyo》《TIME TIME》(いずれも2024)が展示されます。
立体的に聴かせることを意図した「async」シリーズ。
坂本さんは2017年にリリースされたアルバム『async』をきっかけに、同アルバムを「立体的に聴かせる」ことを意図し、Zakkubalanさん、アピチャッポン・ウィーラセタクンさん、高谷史郎さんらとインスタレーション作品を制作していました。
Zakkubalanさんとのコラボレーション作品《async–volume》 (2017) は、『async』制作のために坂本さんが多くの時間を過ごしたニューヨークのスタジオやリビング、庭などの断片的な映像が、それぞれの場所の環境音とアルバム楽曲の音素材をミックスしたサウンドとともにひとつのインスタレーションとして構成された作品。24台のiPhoneとiPadが壁に配され、鑑賞者は世界に開かれたたくさんの“小さな光る窓”を通して坂本の内面を覗き込むような、あたかも胎内にいるような感覚にとらわれます。
タイの映画監督・アーティスト、アピチャッポン・ウィーラセタクンさんとのコラボレーション作品《async–first light》(2017) において、坂本さんは「Disintegration」「Life, Life」の2曲を映像用にアレンジ。「デジタルハリネズミ」と呼ばれる小型カメラを親しい人たちに渡して撮影してもらった映像で構成された本作は、解像度が低く粗い画面に独特の温かみのある色味でそれぞれの私的な日常が切り取られています。
新作が見られるのも、本展の見どころのひとつ。坂本さんと共に『async』の楽曲を使ったいくつかのインスタレーション作品を制作してきた高谷さんは、坂本さんが他界後に「AMBIENT KYOTO 2023」にて、「async」シリーズを深化させた大型インスタレーションを制作。《async–immersion tokyo》(2024) は、同作を東京都現代美術館の展示空間にあわせて再構成する新作です。
アーティスト/インタラクションデザイナー/プログラマ、真鍋大度さんとのコラボレーション《センシング・ストリームズ 2024–不可視、不可聴 (MOT version)》は、携帯電話、WiFi、ラジオなどで使用されている電磁波という人間が知覚できない「流れ(ストリーム)」を一種の生態系と捉えた作品。屋外に16mに渡って延びる帯状のLEDディスプレイを用い、東京という大都市の目に見えないインフラの姿を映像と音で描き出します。
スペシャル・コラボレーション「霧の彫刻」がサンクンガーデンに。
東京都現代美術館屋外のサンクンガーデンには、坂本龍一+中谷芙二子+高谷史郎《LIFE–WELL TOKYO》霧の彫刻 #47662が展開されます。これは、1970年に大阪万博のペプシ館を水を使った人工の霧で覆った「霧の彫刻」で知られ、世界各地で霧のプロジェクトを実施している中谷芙二子さんとのスペシャル・コラボレーション。霧と光と音が一体となった、自然への敬愛や畏怖の念を想起させるような夢幻のシンフォニーを奏でます。
オンラインチケットの発売は、12月18日(水)から。また、会期中は参加作家によるトークなど、いくつかの関連プログラムが予定されています。参加方法と詳細は公式サイトをチェックしてみてください。
坂本龍一音楽家
1952年、東京都生まれ。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年「Yellow Magic Orchestra」結成に参加し、1983年の散開後も多方面で活躍。映画『戦場のメリークリスマス』(83年)の音楽では英国アカデミー賞、映画『ラストエンペラー』の音楽ではアカデミーオリジナル音楽作曲賞、グラミー賞、他を受賞。環境や平和問題への取り組みも多く、森林保全団体「more trees」を創設。また「東北ユースオーケストラ」を立ち上げるなど音楽を通じた東北地方太平洋沖地震被災者支援活動も行った。1980年代から2000年代を通じて、多くの展覧会や大型メディア映像イベントに参画、2013年山口情報芸術センター(YCAM)アーティスティックディレクター、2014年札幌国際芸術祭ゲストディレクターを務める。2018年piknic/ソウル、2021年 M WOODS/北京、2023年 M WOODS/成都での大規模インスタレーション展示、また没後も最新のMR作品「KAGAMI」がニューヨーク、マンチェスター、ロンドン、他を巡回するなど、アート界への積極的な越境は今も続いている。2023年3月28日、71歳で逝去。
Event Information坂本龍一|音を視る 時を聴く
会期:2024年12月21日(土)~2025年3月30日(日)
時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(1月13日、2月24日は開館)、12月28日~1月1日、1月14日、2月25日
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F/B2F ほか
住所:東京都江東区三好4-1-1
観覧料:一般2,400円/大学生・専門学校生・65歳以上1,700円/中高生960円小学生以下無料
オンラインチケット:https://www.e-tix.jp/mot/ 12月18日(水)10時より販売開始。会期中日時指定なしで、1枚につき1名1回限り入場できるオンラインチケットです。美術館チケットカウンターにて当日券も販売します。
問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
text : Yu Miyakoshi