LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
シンプルなデザインと機能性を追求。- やっぱり、台所は大切です No.02PRACTICAL KITCHENS 02 / June 07, 2021
この1年ほど、自宅で過ごす時間が増え、自然と台所に立つ機会が多くなった、という方も多いのではないでしょうか。段取りよく料理をするための設備や配置、道具や器の収納はもちろんのこと、この場所で過ごす時間もまたベターライフには欠かせません。台所を大切にしている人たちを訪ね、使い勝手と居心地のよさの工夫を見せてもらった&Premium No. 91「やっぱり、台所は大切です」特集から、ここでは『アヒルストア』のオーナー齊藤輝彦さんと妻の直子さんの台所を紹介します。
台所とテーブル、絶妙な距離感が居心地の良さを実現。
「料理を作りながら、自分も食べたり、飲んだりすることができるキッチンにしたかった」と語るのは、『アヒルストア』のオーナー齊藤輝彦さん。妻、直子さんが祖母から譲り受けた家を建て直した一軒家は、新築らしさや作家性を消したくて、ただの四角いコンクリートの箱にした。30畳ほどのLDKは、壁を設けずワンフロアに。四面のうちの一面に、フルオープンの台所を設えた。
キッチンをぐるりと囲むように、天井からL字形のベニヤ板を吊り、食器や調味料はすべてここに並べている。ふだん使いの器はキッチン側の手に取りやすい位置に、リビング側には祖母が使っていた食器をディスプレイ。厨房機器は、「使い勝手が良く、リーズナブルで、傷がついても味になる」と業務用を選択。輝彦さんのイチオシは幅1.5mある舟形のシンクと水切り棚だ。
「大きいシンクが使いやすくて、店の厨房もこうすればよかった(笑)。この中にまな板を置いて、魚は洗いながら、野菜は飛び散るクズを気にせずに作業できる。シンクの中ですべてが完結できるのは、料理をする人間にとってかなり魅力的なのでは? その上には水切り棚を。水切りカゴ代わりに洗った食器を並べたり、カットした食材を置いたり」と輝彦さん。平日にキッチンを使うのは主に直子さんだが、「つくりがシンプルなので、かえって使いやすい」と家庭用キッチンとは違う業務用の魅力を知ったという。
キッチンと平行するように置かれた大きなテーブルは、長さ1.8mのベニヤ板を2 枚並べただけのもの。料理の作業台であり、食事をするダイニングテーブルであり、子どもや猫の遊び場でもある、齊藤家の生活の中心だ。キッチンとテーブルの関係は、『アヒルストア』のキッチンとカウンターとも似ていて、すべてに手が届く絶妙な距離感。それが使い勝手の良さに繋がっている。輝彦さんは言う。
「キッチンやダイニングは、家の中でいちばん魅力的な場所。機能美が集中している。それでいてこんなに居心地の良い場所って、ほかにないんじゃないかなと思うんです」
齊藤輝彦/齊藤直子
『アヒルストア』オーナー/広告制作会社勤務
輝彦さんは2008年、妹の和歌子さんと東京・富ヶ谷にワインとパンの店をオープン。妻の直子さんは現在育児休業中。猫と家族4 人で暮らす。
photo : Norio Kidera edit & text : Chizuru Atsuta
※『&Premium』No. 91 2021年7月号「やっぱり、台所は大切です」より