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2月11日 (水) にトークイベントも開催。写真家・若木信吾さんと建築家・谷尻誠さんが語る、写真の楽しみ。February 04, 2026

写真家・若木信吾さんと建築家・谷尻誠さんが語る、写真の楽しみ。

1914年にドイツで誕生したカメラブランド〈ライカ〉を愛用する写真家・若木信吾さんと建築家・谷尻誠さん。二人が、お気に入りのカメラで写真を撮り続けたくなる理由について語ってくれました。

お互いを被写体に撮影会をはじめる谷尻誠さん (右) 、若木信吾さん (左) 。 | お互いを被写体に撮影会をはじめる谷尻誠さん(右)、若木信吾さん(左)。
お互いを被写体に撮影会をはじめる谷尻誠さん(右)、若木信吾さん(左)。
中古で購入した、若木さんの「ライカ M2」。1957年に登場したモデルで、若木さんのカメラは、’60年代に製造されたもの。 | 中古で購入した、若木さんの「ライカ M2」。1957年に登場したモデルで、若木さんのカメラは、'60年代に製造されたもの。
中古で購入した、若木さんの「ライカ M2」。1957年に登場したモデルで、若木さんのカメラは、'60年代に製造されたもの。
谷尻さんの「ライカ M10」。その前は「ライカ M type240」を持っていたが、キャンプで水没させてしまい、こちらを4年前に買い直したという。
谷尻さんの「ライカ M10」。その前は「ライカ M type240」を持っていたが、キャンプで水没させてしまい、こちらを4年前に買い直したという。

撮り続けることで、技術が身についていく。
写真が導く、身体に及ぼす意識の先の無意識。

谷尻誠(以下、谷尻) 僕が初めて〈ライカ〉のカメラを手に入れたのは、11年くらい前。息子が生まれたタイミングでした。息子のいい写真を残したいと思ったのがきっかけだったのですが、もともとフレームのなかにどう収めるかという、構図を考えるのがすごく好きだったんです。
若木信吾(以下、若木) 構図から入るのが建築家らしい。
谷尻 敷地にどう建物を建てるのか、というのと近い感じがするんです。
若木 僕はカメラによって撮り方を変えるのですが、〈ライカ〉の場合は出来事を記録するイメージで撮っています。携帯性がいいのと描写力の強さがあるんです。重いカメラをいつも持ち歩くわけにはいかないし、小さすぎると表現が弱くなってしまう。気持ちを写し出すというよりドキュメンタリー的に撮ることが多いですね。
谷尻 雑に撮ってもちゃんと絵になるんですよね。建築もそうですが、うますぎてもつまらないんです。雑みを表現できるのもいいところですよね。
若木 写真の世界ではノイズというのですが、わざと画面の中に余計なものを入れたままにして、コントロールしていないふうにする。僕自身、そういったノイズが入る感じが好きだというのがあります。
谷尻 僕がいま使っているのは「ライカ M10」。写真を撮る際の技術的なものってあるんですか?
若木 建築もたぶんそうだと思いますが、技術がないようにみせるのが技術というか……。
谷尻 意識の先の無意識ということでしょうか。例えば早く走ろうと思って手を振ることを意識しているうちに、無意識に体が覚えてくる。カメラも建築も、ひたすら考えて考えて考えぬいた先に、無意識に技術が身についていくような気がします。
若木 そうだと思います。やっぱり肉体的な反応は大きい。僕がオートを使わないのも、そういう気持ちがあるからかもしれません。ピントを合わせたり露出を測ったりプロセスは面倒なのですが、それに対して体が覚えて慣れていく。本当は肉眼でパッと見て、すぐにシャッターを押せるほうがいいのかもしれませんが、そうするとジャストタイミングすぎてつまらなくなってしまうんです。瞬間的にいいものを掴みすぎる。これいいな、と思ってピントを合わせたりしているうちにだいたい逃すんですが、逃したとしても、そのとき撮りたいと感じた何かは、残像のように写し出される。逆にタイミングよく撮れたものってだいたい飽きるんですよ。
谷尻 僕はまだ写真はその域にたどり着けていない。でも、デジタルだけどフィルム的というか、いちいち確認せず、何が写っているかわからないまま撮ったりしています。
若木 ちょっと不器用な感じをキープする。そのゆるさがノイズにつながります。だから、妻が子どもを撮っている写真が一番よかったりするんです。僕が撮るとやっぱり誰かに見られる写真だという前提が染み付いちゃっている。でも奥さんは人に見せるのではなく、子どもの成長を楽しむためだけに撮っている。そういう表現は僕が目指すところでもあります。
谷尻 作為的にならないノイズをどう取り込むか。それも写真の楽しみのひとつですね。

若木さんが撮影した浜松の風景。〈ライカ〉で撮ると自分の好きな瞬間や感覚がちゃんと記録されるという。
若木さんが撮影した浜松の風景。〈ライカ〉で撮ると自分の好きな瞬間や感覚がちゃんと記録されるという。
谷尻さんが撮影した建築写真。かつて建築図面で用いられていた青焼きと呼ばれる複写技法でプリントされている。
谷尻さんが撮影した建築写真。かつて建築図面で用いられていた青焼きと呼ばれる複写技法でプリントされている。

〈ライカ〉を愛用する理由は、
道具として完成された誠実なものづくり。

谷尻 若木さんのこのカメラって1960年代のものですよね。
若木 「ライカ M2」です。これと谷尻さんの持っているカメラは見た目はほとんど一緒だけど、60年ぐらいの差があるんです。デザインが変わらないというのも〈ライカ〉の独自性で面白いところ。カメラって慣れるまでにけっこう時間がかかるので、変わらないってけっこう大事なんです。
谷尻 僕のは若木さんのとは違ってデジタルですが、覚えなければいけないことばかりで全然慣れない。でも、機種を変えても同じデザインなので、慣れる時間を蓄積できる。それは、このブランドならではの良さだと、僕も思います。
若木 谷尻さんのはレンズもすごくいいですよね。
谷尻 実は僕も最初、若木さんの「M2」に付いているのと同じ「ズミルックス35mm」という古いレンズをオークションで買ったんです。ボディはなんでもいいと思っていたのですが、カメラショップで「ライカも試してみますか?」といわれて触ってみたら、もうこれしかない、と。シャッター音がすごく気持ちいいんです。ただ、そのカメラはキャンプで水没させてしまったので、今の「M10」に付けているのは「アポ・ズミクロン」というレンズです。
若木 僕も持っていますけれど、このレンズがめっちゃいいんです。良さを言い出すときりがないんですが、一言でいえば描写力が圧倒的にいい。ほかのレンズと撮り比べるとすぐにわかります。
谷尻 こだわりがものすごいですよね。
若木 採算度外視でレンズに対してちゃんと研究熱心な人を雇っている。そういう会社はやっぱり信頼できます。今の世の中、消費のサイクルを考えてマーケティングでものを作っているところもありますが、ここはそうではない。
谷尻 質をもっとも大事にしているっていい会社ですよね。応援したくなる。
若木 画像処理ができるようになってから、全体的にレンズの質はどんどん落ちている。でも、〈ライカ〉は10年先のことまで考えて設計しているんです。だから発売当時はオーバースペックでもある。ただ、次々と新しいものが出てくる業界のなかで、10年経ってもまったく古くならず、相変わらずトップの画質が出せる。その企業努力はすごいと思います。その歴史についてはイベントでも話す予定です。
谷尻 稀有な会社ですよね。決して安価ではないけれど、手に入れたことによって、毎日がすごく楽しくなった。これまでの時間がもったいなく思えてきて。だから、スタッフにもすぐにでも買うよう勧めています。

二人のカメラ愛溢れるトークの続きは、2月11日(水)に行われるイベント「若木信吾(先生)と谷尻誠(生徒)のライカ講座 for Leica Lovers」にて、ぜひお楽しみを!

Event Information若木信吾(先生)と谷尻誠(生徒)の〈ライカ〉講座 for Leica Lovers

写真家・若木信吾さんと建築家・谷尻誠さんが語る、写真の楽しみ。

写真家・若木信吾と建築家・谷尻誠が、〈ライカ〉愛について語るイベントを開催。

日時:2月11日(祝・水) 14:00〜16:30頃
14:00〜15:00 若木信吾による〈ライカ〉の歴史について
15:00〜16:00 若木信吾 × 谷尻誠撮りたい写真を撮るための〈ライカ〉実践講座
16:00〜16:30 質問コーナー
(時間は目安です)
場所:社食堂 (東京都渋谷区大山町18−23 コートアネックス大山町 B1F)
金額:¥5,000(当日現金払いのみ)
申込み方法:Google Formよりhttps://forms.gle/sPVaBZ7fLhJCGVzZ6
注意事項:当日、YouTube「youngtree Channel」の公開収録を行います。映り込む可能性がございますので、あらかじめご了承ください。(同時配信はございません)

申し込みはこちら

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若木信吾写真家

写真家、映画監督。1971年、静岡県浜松市生まれ。ニューヨークロチェスター工科大学写真学科卒業。雑誌・広告・音楽媒体など幅広い分野で活動中。浜松市の書店「BOOKS AND PRINTS」のオーナーでもある。映画監督作品に「星影のワルツ」「トーテム~song for home~」「白河夜船」(原作:吉本ばなな)などがある。個人プロジェクト写真集「Youngtree Annual vol.4」が近日発売。

shingowakagi.net

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谷尻誠建築家

建築家。 1974年広島生まれ。2000年建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」を吉田愛と共同主宰で設立。広島・東京の2か所を拠点とし、インテリアから住宅、商業空間など、国内外のプロジェクトを多数手がけている。'23年、広島への本社移転を機に、広島市の商業施設「猫屋町ビルヂング」の運営もスタート。'25年にはサプリメント「葉養」をリリースするなど事業の幅を広げている。

suppose.jp

photo : Shinnosuke Yoshimori text : Wakako Miyake

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