LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
40年間守られてきた上質さとシンプルさを活かした空間に。鈴木将平、香名子さん夫妻の古い家の楽しみ方。February 14, 2025
古い家には人を惹きつける不思議な味わいがあります。その“古さ”を楽しみつつ、自分たちの暮らしに合う部屋に整えたい。DIYで築70年超えの古民家を甦らせたり、築50年の集合住宅をすっきり改築するなど、温故知新を実践した4組の住まいを最新号「部屋と心を、整える」より特別に公開します。
古いものの美しさと不便さの両方を楽しみながら暮らす。
建築士の資格を持ち、現在はMUJI HOUSEでリノベーションを担当する鈴木将平さんは妻の香名子さんと二人して、物件巡りが好き。かなりの数のヴィンテージマンションを、見てきたという。
「今住むマンションは、それまで見てきたどのマンションともまるで違いました。年数を経て、背を伸ばし葉を大きく広げた木々に包まれるように立っていたんです」と将平さん。
画一的なマンションが乱立され始める前、1980年代に建てられた建物だ。内装にほぼ既製品が使われていなく、それも魅力だったという。
「華やかさはないけれど、上質。何代か家主が変わってきたというのに、大きな改装がされていない、おそらく建った当時の状態に近い部屋が売りに出されていたんです。ほぼ迷うことなく、購入を決めました」
入居する際は“現況”を大事にしながら自分たちの暮らしに合わせ、少しだけデザイン修正をしたという。
「和室は畳からカーペットに替えて寝室に。少し暗かった廊下まで光が届くようにしたくて、ガラス入りのドアをオーダー。何枚かをそれに差し替えています。断熱効果を高めるために、二重サッシを取り付け、水栓のパーツ交換もしていますね。工事は僕自身が工務店に依頼。天井と壁は、自分で塗り直しました」
香名子さんは「少しずつ集めてきた、“アアルト”などのヴィンテージ家具をこの家に持ち込んだら、すっとなじんだんです。家も家具も道具も、大切に愛情を注がれてきたものは、古びても、幸福感がありますよね。それらに触れる今の暮らしは、とても心地がいい」と話してくれた。
都心から離れた家を選んだことで、街に出かける機会が減ったそうだ。
「さらに昨年長男が誕生して、家で過ごす時間が増えました。植物を育てたり、キッチンでお酒を飲んだり。今、ふつうのことが楽しくて」
この先はというと……「彼の成長に合わせて家具の配置換えや増減をするかもしれません。それでも家の雰囲気を守っていけるのが理想です。長く住み続けるためにも断熱の改修はする予定! 古いと二重サッシだけでは不十分で」と二人は笑った。
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鈴木将平 / 鈴木香名子会社員 / 会社員
将平さんは「無印良品のリノベーション」店舗で店長を務める。香名子さんはアパレル会社勤務。長男はそろそろハイハイを始める頃。
photo : Shinsaku Kato edit & text : Marika Nakashima