TALK あの人が語るベターライフ。
「風のように手なずけられない感情と、どのように付き合っていくかを表現したかった」。作家・小原晩さんが語る、小説『風を飼う方法』のこと。April 04, 2026

『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』など、等身大の日常を描くエッセイで話題を集めてきた作家の小原晩さん。先日、短編3作と書き下ろしの1作を収録した自身初となる小説集『風を飼う方法』が刊行された。エッセイから小説へと表現方法を広げたなかで、執筆に向き合う姿勢の変化や、日々の「ベターライフ」のために大切にしていることについて、話を聞いてみた。
エッセイと小説、異なる二つの「書く」時間。
「中編小説を書くことになってから、実は1年くらい筆が進まなかったんです。無理やり小説の型にはめようとすると、自分の小説が書けなくなるような気がして。私にとって自然な形で物語に向き合うには、まとまった時間が必要だと気づきました。毎月1日から20日までを小説、20日から月末までをエッセイと、書く時期を分け、まずは環境から整えていきました」と振り返る。
エッセイと小説では、自分との向き合い方が大きく異なるのだそう。「エッセイは自身の経験を主題にしつつも、一定の距離を保って自分の好きなトーンに調整します。一方で、小説には、向き合うことへの”逃げられなさ”がありました。これまで描きたくないと蓋をしていた部分であっても、小説においてはそこに触れないと物語が先へ進んでくれない。文章は、書き手がコントロールできるはずなのに、小説という場ではそれが効かなくなるんですよね。主人公が歩んでいる人生は、自分が直接経験したわけではないけど、そこで揺れ動く彼女たちの感情は、確かにあるもの。それを言葉として紡いでいくうちに、自分自身の無意識の深いところへと潜り込んでいくような感覚がありました」。
ひとつのテーマや登場人物たちのことを頭の片隅に置きながら生活することで、机に向かっているだけでは生まれない、それぞれのリアルな心の動きを物語に落とし込んでいけたという。

「どうにもならないもの」と、そのまま生きていく。
表題作であり、この本の最後に収められた「風を飼う方法」。このタイトルには、風のように掴むことも操ることもできない“自分では手なずけられないもの”とどのように生きていくかという、彼女の問いが込められているという。
「日常で起こるトラブルなど、どうにもならないことって『はい、終わり』とはできなくて、引きずり続けるものでもありますよね。『忘れちゃおうよ』とは私は思えないから、それありきでやっていくしかない、ということが言いたかったんだと思います」。
全4編に登場する主人公たちはそれぞれ別の人生を歩みながらも、過去の出来事を抱え、時に落ち込みながら日々を生きている。
「4編を通しての心の揺らぎや、1冊を読み終えたときにどんな気持ちになるかという全体像を大切に作りました。はじめから終わりまで私的な気持ちと言葉で書いたからこそ、読者ひとりひとりの内側にあるものと対話できるような本になったと思っています」。
For Better Life
「ベターライフのために大切にしていることはありますか?」

&Premiumが大切にしている「Better Life(より良き日々)」。それを叶えるためのヒントを小原晩さんに聞いてみました。
「寝る前にお香を炊くこと」:寝る前に〈HEAR〉の"MOON"というお香を焚くことを毎晩の習慣にしています。一目惚れしたお香スタンドは、持ち歩ける湖みたいで、眺めているだけでも癒やされます。もともと、香りのものは得意ではなかったのですが、パチュリやよもぎなどがブレンドされたこの香りはすごく好きで。寝室に限定して焚くことで、「これは眠るための香りだ」と体と脳に教え込ませています。
Book Information『風を飼う方法』

小原さん初めてとなる小説集。これまで文芸誌に発表した短編3作「けだるいわあ」「水浴び」「風を飼う方法」、新たに書き下ろした「カリフラワー」の全4編が収録されている。
著者:小原晩
出版社:河出書房新社
価格:¥1,500
小原晩 Ban Obara作家
1996年、東京・八王子生まれ。2022年自費出版にてエッセイ『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を刊行。2023年、月刊誌『小説すばる』で初の小説を発表。ほかの著書にエッセイ集『これが生活なのかしらん』(大和書房)がある。
photo : Yoichi Onoda text : Sayuri Otobe




































