BEAUTY 明日のキレイのために。
キレイの理屈 ノイズを消した、日用品としての化粧品。『&Premium』No. 83 2020年11月号「&Beauty」より / September 30, 2020
〈無印良品〉では、最近とくに化粧品が注目を浴びているが、化粧水を初めて発売したのは1997年のこと。じつは23年ものキャリアがある。ライフスタイルに根ざした家具や雑貨などと同様、日常に重きをおいた商品づくりが印象的だ。
とことんこだわったのが、化粧水の「水」の部分。人の体の6割を占めるという水分は、肌にとっても重要な成分であることから、スキンケア用の「特別な水」を探すところから開発は始まった。
日本全国、あちこちの名水を訪れ、辿り着いたのが岩手県釜石の水。かつて鉱山があった地域で、ゆっくりと自然の力で濾過されてできた、飲料水にも使われているまろやかな天然水だという。この水を使い、「余計なものは入れずシンプルに」というコンセプトで、低刺激性の、誰でも使える「敏感肌用」の化粧水をつくりあげた。
水の輸送には、品質管理を徹底的に追求し、新鮮さ、安全性を確保。天然水を生かし、パラベンを使わず、高い保湿力を叶えた化粧水にしたいと、処方はかなり苦労したそう。
その後、「美白」や「エイジングケア」など消費者のニーズに応じる形で、種類を増やしていく。
「敏感肌用」の処方については、微調整は行っているものの、開発当時とほとんど変えていない。高い保湿力と優しさに、多くのファンがついているのだ。保湿力の違いで3種類、大容量と、お試しにもちょうどいい携帯用も用意。季節や好み、シチュエーションを想定し、長く使えるような消費者目線の配慮が、じつに〈無印良品〉らしい。
それは、価格設定にも反映されている。惜しみなく使ってほしいということで発売した大容量タイプは、今では一番の売れ筋だそう。
生活になじむように、見た目のノイズを消したという、こだわり抜いたシンプルな容器も印象的。
特別なものではなく、日常の空間のなかに化粧品がある。男女、年齢問わず、そこに自分らしい、シンプルなライフスタイルが息づく。
それは売り場の世界観からも伝わってくる。化粧品を買いに行くのではなく、日用品を買いに行くなかで、化粧品も買うというイメージ。
消費者が、日常に求めているものはなんなのか、
その繊細なニーズを確実に捉えて製品化している。それが〈無印良品〉の化粧品なのだ。