BEAUTY 明日のキレイのために。
キレイの理屈 古き良きもの、今でも多くの人に愛される老舗石鹸。『&Premium』No. 81 2020年9月号「&Beauty」より / August 04, 2020
今年創業111年を迎える〈牛乳石鹼共進社〉。元は〈共進舎石鹼製造所〉という社名で、西洋から石鹸づくりの技術が伝来し、製造が活発になっていた当時に、大阪で問屋から請負生産をしていたそう。創業から20年目に〈牛乳石鹼〉の商標を譲り受け、自社ブランド製造を開始。
日用品として石鹸は多くの人々に使われ始め、そのうち大量生産できる「連続中和法」が開発され、多くのメーカーはその製造法を取り入れた。そんな中〈牛乳石鹼〉では、90年以上経つ今でも「釜だき製法(けん化塩析法)」を守っている。食用原料となる天然油脂を主原料に、じっくりと熟成させる製法で加熱、攪拌、静置という工程を踏む。石鹸の元となるチップを作るのに約1週間かけるというから、決して効率がいいとは言えない。だが、この製造法だからこそ、天然のうるおい成分が残り、肌あたりが優しくなるのだとか。釜にどのくらいの熱をかけるか、気温の変化一つで石鹸の状態は変わる。これを守っているのが、昔から伝わる職人技。もちろん現在では、品質管理部門が品質の化学的なテストもしているが、棒状のヘラですくい、目視して状態を確認するという作業は、今でも必ず行うという。
当初まず赤箱が製造され、大阪から関東に進出する際に、青箱を開発。品質にもこだわり、肌のうるおいを守るミルク成分をベースに、しっとり仕上がりの赤箱には良質なスクワランを配合。処方や製造法は昔のまま。
顔は赤箱、体は青箱と部位で使い分ける人、季節によって赤箱と青箱を使い分ける人、髪を含め全身を洗う人など、顧客によって使い方は様々。最近では、洗顔料として使うとニキビ予防にも効果的、と若い人たちの間でも人気だ。
今回の新型コロナウイルスで、手洗いが推奨されたが、赤箱で洗うとしっとりする、洗う回数が増えても安心、とその品質の良さが改めて注目された。ネット社会の今でも通信販売は行わず、問屋さんとお客さまとの循環する関係性を大切にしている、まさにサステナブルなブランド。時代を見据えながらも、古き良きものを守り続け、創始者の「共進」というフィロソフィーを大事にしてきたからこそ、今なお、赤箱、青箱が存在し、多くの人々に愛され続けているのだ。