LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
音楽家・高砂隆太郎さんが暮らす、10㎡の家。複雑化せず、ひとつの空間に収める。January 27, 2025
自分らしい部屋を整えるのに、その“狭さ”はうってつけの条件なのかもしれません。
「狭くて、居心地のいい部屋」を紹介している最新号「部屋と心を、整える」の中から、狭さを上手に賢く利用して、快適に楽しんでいる3組の住まいを特別に公開します。
音楽に集中できる“6畳ひと間”。
高砂隆太郎さんが、初めて小屋を建てたのは10年前。それから7年が経ち、前の小屋から20mほど離れたところに2軒目の小屋をセルフビルドした。居住かつ音楽のための部屋として活用して3年。トイレやバスルームなどのライフラインは別の場所にあるが、この10㎡ほどの空間が、彼にとっての生活の場である。
10㎡というのは、建築確認申請が不要な広さ。なのでセルフビルドをするのにも適している。自分で建てる良さは、自由に作れることだと、高砂さんは言う。
「大工さんが建てるときと同じ、在来工法によるものです。前の小屋のデッキに使っていた材や、もともとここに立っていた平屋を取り壊した際に出た建材を使い、最初から最後まで一人で作りました。前の小屋は切り妻屋根にしましたが、今回は片流れに。ほかにも屋根は四角いけれど、部屋は変形台形にするなど、技術的にはけっこう難しいのですが、普通に作ってもつまらないので、いろいろチャレンジしてみました」
ギターやドラム、フルートなど様々な楽器が置かれ、この部屋で録音もすれば、ギター教室を開催することもある。身長190㎝ほどある高砂さんには、狭すぎるのでは?と勝手に心配してしまうが、本人はまったく気にならない様子。
「梁の高さはくぐらなくていい高さに設定しました。大体の家だといちいちかがまなければならないけれど、そのストレスがない。また、大小にかかわらず、細かく分けずにひとつの空間に収めるのが好きなんです。その上で狭いほうが部屋が暖まりやすかったり、ものがすぐ手に取れるところにあったりして、複雑化しないですむ。それはすごく楽ですね」
必要なものはソファ代わりのトランクや、拾ったアメリカ製の箱、作り付けの棚の中に収納。あるものでまかなうという考え方が根本にあり、暖房器具である〈アラジン〉のストーブは、キッチンになることも。
「パスタのお湯を沸かしたり、無水鍋を置いて調理したりします」
暮らしを複雑にせず、自分の不可欠を知る。空間が小さくなるほどに、生活の核はよりクリアになっていく。
photo : Ayumi Yamamoto illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Wakako Miyake