LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
築50年の家で、畳の温もりを堪能できる空間を。カメラマン・黒川ひろみさんのユニークな暮らし方。January 27, 2025
自分らしい部屋を整えるのに、その“狭さ”はうってつけの条件なのかもしれません。
「狭くて、居心地のいい部屋」を紹介している最新号「部屋と心を、整える」の中から、狭さを上手に賢く利用して、快適に楽しんでいる3組の住まいを特別に公開します。
狭くて古い和室だから目線を低くして。
カメラマンの黒川ひろみさんの家は築50年の木造アパートの一室だ。
「3年前に会社から独立したのがこの部屋で暮らし始めるきっかけ。仕事が安定するまでは、少しでも家賃が安いほうが安心だったんです。以前の家の最寄り駅周辺が気に入っていたのでエリアは大きく変更せず。代わりに、駅の近さと広さ、築浅を諦めたら、家賃が2ケタいかないこの部屋に巡り合いました」
家賃を下げられただけではない。少し古めかしい生活を送る楽しさを手に入れた。流しの前に立ち、湯沸かし器のスイッチを入れて、水が温まるのを少し待ってから蛇口をひねる。畳の上に座り、ちゃぶ台で茶を飲む……といったふう。最近は、琴を習い始め、時おり爪弾いている。
「せっかくなら畳の温もりを堪能する暮らしを送りたくて、椅子は揃えませんでした。生活道具をしまうのに小箪笥、飾り棚、茶箱といった背の低い古家具を『アンティーク山本商店』や”ヤフオク”などで見繕い、並べています。家具の圧迫感がない分、窮屈に感じることはありません」
実は隣室に夫が住んでいるという。「交際中に隣が空き、彼が引っ越してきて、結婚した後もその形を続けています。二人とも家を仕事場としても使うので、一緒に住むには一方だけだと小さくて。それに2部屋分の広さの家をよそで探すと、今の二人分の家賃より賃料が高いんですよ。だったらしばらくはこのままのほうがいいんじゃない?と(笑)」
夕食は料理が得意な彼の家で食べ、映画を鑑賞。食後はぐい飲みを集めている黒川さんの家へ移動して、二次会を開く。時間が来ると、夫は帰宅の途に……。「自分たちでも面白いなと思う暮らし。家が小さくなかったら叶わなかったでしょうね」
photo : Hiromi Kurokawa edit & text : Marika Nakashima