TRAVEL あの町で。

俳優・エッセイストの美村里江さんが語る、岐阜県・群上。美しい水が巡る、奥美濃の小京都。November 30, 2024

繰り返し訪れているからこそ知っている、季節によって変わりゆく景色。いつも変わらないあの店、必ず買って帰るお土産、ふだんの町並み。旅好きのあの人が語る、何度も足を運んでいる町とその魅力とは。

釣り人に優しい『中嶋屋旅館』などを定宿に水を愛でる。

俳優・エッセイストの美村里江さんが語る、岐阜県・群上。釣り人に優しい『中嶋屋旅館』などを定宿に水を愛でる。
清らかな川を擁した美しい町並みは、どこでカメラを構えても決まってしまうほど風景がいい。

漁が解禁になるシーズンに夫婦で釣り旅行に訪れる、郡上はどの季節も美しい。さすが水の郷といわれるだけあり、町中に張り巡らされた用水路には巨大な鯉が泳いでいるほど。町ではチョロチョロと水の流れる音がいつも聞こえています。どこの宿でもお風呂に入ると、体がよく温まるし疲れも取れ、肌がつるつるに。水質がよすぎて温泉に近い効果があると感じます。水がいいということは、おいしいお蕎麦屋さんも多いということ。特に『蕎麦正まつい』は、格式高い店構えとお蕎麦と、給仕のおばちゃんたちのアットホームな雰囲気の対比が心地いい。きなこの焼き菓子「豆なかな」がおいしい『中庄菓子店』や、地産地消の朝食が楽しめる『中嶋屋旅館』など、世代交代して形態を変化させながら長く続く老舗から、若い人がオープンさせたコーヒーショップまで、新旧が入り交じり活気がある。郡上の宿は釣り客にも慣れていて、お願いすれば私たちの大きなクーラーボックスなどを玄関先に置かせてくれるところも。むしろ中を覗いて、釣果の遡上してきたサツキマスには「おかえんなさーい」なんて声をかけてくれる。川が大事にされているから、魚が棲んでいて、釣り人が来る。外から人が来るから、町も栄える。互いにリスペクトし合って、自然と人、みんなの循環がうまくいっているのも、すごく素敵なところです。


岐阜県・群上
Gujo_Gifu
岐阜県の飛騨高地にある城下町で、国の重要伝統的建造物群保存地区。町中には、長良川の支流が流れる。「奥美濃の小京都」「水の郷」の別名も。名古屋から郡上八幡駅までは、電車で2時間強。

美村里江 俳優・エッセイスト
Rie Mimura
「高杉さん家のおべんとう」(日本テレビ系)に出演中。産経ニュースで「美村里江のミゴコロ」、週刊エコノミストOnlineで「読書日記」など、複数連載中。著書に歌集『たん・たんか・たん』(青土社)など。

illustration : Naoya Sanuki text : Shoko Matsumoto

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