TRAVEL あの町で。
音楽とコーヒー、時々お酒。心ほどく街、金沢へ。December 06, 2024 /〔PR〕
加賀百万石の藩政時代から、政策として文化を奨励し花開いた街、金沢。そのスピリットは現代へと継承され、多くの旅行者を魅了する都市に。『ナショナルジオグラフィック』による「2025年に行くべき世界の旅行先25選」で日本で唯一選出されるなど、ますます注目度がアップしています。そんな文化度の高い金沢で、良質な音楽とカフェ&バーを訪ねる旅を。3人の店主が教えてくれた、金沢の街歩きがもっと楽しくなるプレイリストも紹介。
お茶やお酒と音楽にも、金沢らしい歴史あり。
金沢は藩祖、前田利家が指南を受けた千利休が長く逗留し、茶の湯が市民にも浸透。その影響で和生菓子の消費金額は全国一位を誇ったこともあり、茶道に宿る時間や空間を楽しむ精神は、現代のカフェ文化へと受け継がれている。また、外食率も高い土地柄で2軒目へのホッピングも定番のため、バーも豊富。飲食店は個人経営が多く、店ごとに個性豊かであることも特徴だ。
そして実は音楽にも独自の文化があり、縁のミュージシャンも。和のオーケストラともいわれる伝統芸能「金沢素囃子(かなざわすばやし)」の継承、1854年設立の軍事総合学校の壮猶館で軍楽として⻄洋音楽をいち早くを教えたり、本格的なプロ室内管弦楽団も他都市に先駆けて設立。毎秋に開催されるストリートジャズの祭典も2024年で16回目を数えるなど多彩で歴史もある。また、松任谷由実は石川県観光ブランドプロデューサーを務めており、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅらを手がける音楽プロデューサー、中田ヤスタカは出身地、金沢駅の新幹線の発着音楽を手がけている。
そんな金沢にはセンスのいい音を楽しみながら、コーヒーやワインなどおいしい一杯を味わえる店があちこちに。金沢旅を豊かにしてくれる3軒のカフェ&バーをここで紹介。
店主のこだわりといい音に包まれる、豊かな時間を。
1.Chomsky Coffee & Library
『Chomsky Coffee & Library(チョムスキー コーヒー & ライブラリー)』は、金沢の中心地からバスで10分ほどの住宅街、石引という地域に佇む店。話題の石川県立図書館に向かう途中、酒蔵の福光屋を有する古き良き商店街を少し入ったあたり。近所には歴史ある金澤町家を改修した〈ミナ ペルホネン〉の店があり、そこを訪れる旅行者や近隣の大学病院に勤める人、美術大学生の常連で、13時のオープンとともに賑わい始める。
「お客さんはローカルな人ばかりではないので、風通しがいいんですよね」と語るオーナーの林玄太さんは大阪出身。妻の実家がある金沢へ移住、地元のコーヒー通が一目置く名店、チャペックで働き、その奥深さに目覚めた。一見寡黙に見える林さんだが、コーヒーへの情熱は並々ならぬものが。チャペックの師匠でもある焙煎のレジェンド、田口護さんのカフェ・バッハ、東京・青山にあった伝説の大坊珈琲店。書籍の付箋が伝えるように、その道の大家の著書を読み込むなど、専門知識もしっかりと咀嚼してコーヒーと向き合っている。チョムスキーという店名は思想家、ノーム・チョムスキーに由来し、研鑽を積んだ店へのリスペクトも込めているのだそう。
ブレンドを入れて6種に厳選した豆は中深~深煎りの自家焙煎。雨が多い金沢だが、この夏の猛暑と湿度は繊細さが求められる焙煎にとても苦労したという。カウンターでハンドドリップでゆっくりと抽出されるコーヒーを待ちながら、空間に目をやると各所に素敵なポイントが。店舗は古い建物の改修や建築設計デザインを生業にする妻の吉川正美さんがリノベーションを担当した。コーナーの曲線などレトロなディテールや書棚のある奥のスペースなど、味のあるくつろぎ空間が広がっている。流れている音楽はオリヴァー・ネルソンのジャズから細野晴臣のカバーまで多彩ながら、どこか温かみのある哀愁が漂う。「僕が感じる金沢のとても良いエッセンスが凝縮された一日の時間経過をプレイリストにしてみました。朝、昼、昼下がり、夕暮れ時、夜更け、深夜、そして夜明け。是非、ひと繋がりで聴いて頂きたいプレイリストです。メロディだけでなく、曲のタイトルや歌詞からも感じてもらえる何かがあれば店主冥利に尽きます!」
驚いたのはグラスによって、添えられた水の味わいが大きく変わったこと。カーブしたテイスティンググラスでいただくとまろやかに、ストレートのカットグラスではシャープな味わいに。口に含むまでの味覚に繊細なこだわりを持ちながら、表現は軽やか。その甘く香り豊かでクリーンな味わいのコーヒーは、美意識を持ちながらフレンドリーな林さんの人柄そのもの。会話で距離を縮めながら、泌みる一杯を楽しめる。
Chomsky Coffee & Library
石川県金沢市石引2-19-12 NoAM BLD.1F Instagram @chomsky_coffee_library 13:00~17:00 木日祝休
2.伊東商店
日の入りが早くなり、人恋しくなる季節。古い街並みが残る武家屋敷の先に、柔らかな明かりを灯し、訪れる人を温かく迎え入れてくれるのが『伊東商店』。2021年のオープン以来、地元のアート関係者や飲食店仲間を中心に、ひとり旅の女性客にも親しまれている。「寒くなってきたので、お水じゃなくて白湯をご用意しますね」。この店の温かさ、心地よさを象徴する気配り。オーナーの伊東慧人さんは埼玉県出身で12年前にこの地に移住し、アパレルショップや様々な飲食店で働いたのちに独立。それまで全くお酒が飲めなかった伊東さんは一本のナチュラルワイン、メゾン・ブリュレのロゼペティアン「アルター・エゴ」に衝撃を受け、ワインを通して豊かな時間を提供したいとこの店を始めた。
午後2時から10時までの営業で、ナチュラルワインとコーヒー、ハーブティーなど基本的にはドリンクと簡単なフードを提供。街歩きに疲れたときでも、夜の2軒目でも、気軽に一杯を楽しめる。早めの時間ならコーヒーもいい。地元の自家焙煎コーヒーの人気店、カフェ・アグレの豆を使って提供している。欠けてしまった白いカップは京都の友人が金継ぎを施してくれたのだとか。窓際に座って、行き交う人、暮れゆく風景を眺めながら、愛着を感じるカップでいただく一杯は格別。
もちろん昼からもありだが、夜の帳が降りたらL字形のカウンターに座ってナチュラルワインを。好みを伝えると数本を並べながら、生産者のこだわりとその背景、味わいについて説明してくれる。専門家然とした上から目線ではなく、魅力を共有してくれるニュートラルさも居心地のよさに繋がっている。曲は中村佳穂、折坂悠太といった日本のポップスからワールドミュージックまで幅広く、場の空気や来店者の嗜好を意識して選曲。その音を介して、伊東さんが同席した見知らぬ人同士をさりげなく繋いでくれることも。「音楽は空間に溶け込ませるよう、隙間を埋める役割。音楽を通して言葉を介さない接客をしてもらっているともいえます。自分ができる最大のコミュニケーションだと考えています」
伊東商店
石川県金沢市長町3-8-37 Instagram @110shoten 14:00~22:00(最終入店) 木休ほか不定休
3.Kanazawa Music Bar
金沢でも急増しているのが海外、特に欧米からの旅行者だ。2017年の開業から、この地でインバウンドへのきめ細かい対応を先駆けていたホテル、Kaname Inn Tatemachiに併設されているのが『Kanazawa Music Bar』。夕方はチェックイン前後のホテルゲストがくつろぎ、夜はディナー後の2軒目として深夜まで賑わいを見せている。良質な音と洗練された一杯を楽しむ外国人も多く、まるで見知らぬ土地にでも来たかのような非日常感が漂う。
ライブハウスでもなく、DJはいてもクラブでもない。こういったミュージックバーは今、世界的にもトレンド。ダウンライトのモダンな空間を、アナログレコードならではの奥行きのある温かな音が包み込む。圧巻は音楽プロデューサーの大沢伸一によるハイエンドオーディオシステムだ。ウッドパネルのイギリスの最高級スピーカー、タンノイ製ウエストミンスターが、臨場感のあるクリアな音を演出。能登の伝統工芸、田鶴浜建具の組子細工を配したカウンター前のデコレーションと、新しい金沢を感じさせるモダンな調和を見せている。
アナログレコードの所蔵数は1000枚以上で、ジャケットを壁面のディスプレイとして飾り、空間を盛り上げている。曲のジャンルはジャズ、ロックからソウル、ディスコ、昭和歌謡まで幅広いジャンルから、専属のミュージックセレクターがその日の客層や雰囲気に合わせて選曲している。提供されるお酒には音楽からインスパイアされたマニアックなメニューも。おすすめはオリジナルのエスプレッソマティーニ「Magic Wand Of Love」。アシッド、クラブジャズ系のDJユニットによるケリー・パターソンの楽曲カバーをイメージしているのだとか。「後味にほんのり紅茶が香るのもポイントです」と創業時から従事する店長の宮崎龍一さん。モダナイズされた感性が、金沢のカルチャー指数の高さを物語る。
Kanazawa Music Bar
石川県金沢市竪町41 ☎076-208-3540 16:00~24:00 日休
photo:Akira Yuasa edit & text:Hiroko Koizumi 編集協力:金沢市観光協会