INTERIOR 部屋を整えて、心地よく住まうために。
立原道造の「ヒヤシンスハウス」を再解釈。自然と繋がる、小さな平屋。July 26, 2025
必要なものを見極め、自分が気持ちいいと思える置き方、収め方を考える。一見手狭に感じる部屋も、使い方次第で大きな家よりも居心地のいい空間になります。収納や間取り、DIY、改装など、アイデアが詰まった16軒の小さな住まいを訪ねました。
&Premium141号(2025年9月号)「小さな家、小さな部屋」より、団体職員・MINORIさんの住まいを特別にwebサイトでも紹介します。
立原道造の「ヒヤシンスハウス」に着想を得て。
どこまでも空が高く広がる、鹿児島の山地に囲まれたのどかなエリア。山には、ウグイスのさえずりが静かに響き渡る。鹿児島市内で生まれ育ったMINORIさんは、妹家族が住んでいるこの地を訪れるうちに、竹や雑木が生い茂る土地に出合った。
「妹夫婦と交流し、互いの家を行き来して生活を楽しむことができるので、ここに家を建てられたらいいな、と直感的に思いました」
整地する作業は業者に頼んだ。建築家と家の佇まいや収まりについて相談を進めるなかで、ムクノキや漆などの土地に自生する樹木を眺められる角度に家を配置することに。
「窓から外の景色が見える、外と部屋の中に隔たりを感じない家にしたくて。そんな私の思いを汲み取って、詩人の立原道造が建てた小さな平屋『ヒヤシンスハウス』を再解釈するようなつくりを採用しました。私が幼少期に愛読していた『ティモシーとサラの絵本』の中に出てくる家の装飾感が好みで、内装にそうしたムードもちりばめています」
11.5坪の平屋は、細部のこだわりが目を引く。「緑色が好きで、外壁や屋根のポイントにしました」とMINORIさん。周囲の自然との調和が美しく、500㎡の広々とした庭と小さな家のコントラストも印象的だ。
「以前は1LDKのマンションに暮らしていて。広さは今の家とさほど変わりませんが、ふとしたときに閉塞感を感じ、未来に漠然とした不安を抱くこともありました。なので、この家で暮らすようになり、自然との繋がりが深まったことは私にとって大きな収穫で。より "今を生きる"ことにフォーカスできるようになりました。自分がおばあちゃんになるまでに、色とりどりの花が一面に広がる理想の庭を造りたい。そんな未来に繋がる夢もできました」
室内はリビング、キッチン、寝室&アトリエがゆるやかに繋がり、開口が大きい窓、小さな窓が適切な場所にしつらえられている。
「光が差し込み、そのときどきで変化する影を見る時間も楽しくて」。MINORIさんは微笑みながら口にした。ある一瞬の美しさをつぶさに感じられる、我が家を愛しみながら。

MINORI団体職員
事務職員として働く。家の設計は、MINORIさんの妹家族の家を建てた縁で、鹿児島の建築事務所〈サンナナデザイン〉に依頼した。
photo : Yoshiki Okamoto edit & text : Seika Yajima illustration : Shinji Abe (karera)