LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
築70年ほどの平屋をDIY リノベーション。編集者・おおいしれいこさん、潜水士・久米大作さんの小さな家。August 22, 2024
使い勝手も費用もデザインも、すべて自分の塩梅で。
房総半島の南東部に位置する千葉県鴨川市。太平洋に面した海側と、美しい棚田が広がる内陸のエリア、どちらも豊かな自然が広がる。おおいしれいこさんが夫の久米大作さんと暮らす家は海から車で20分。里山の中に立つ愛らしい平屋には、海からの心地いい風が届く。
「海と山、両方の魅力を感じられるのがいいところ。夫も私も自然が好きで、静岡の御前崎の海の近くに暮らす友人宅によく遊びに行っていたんです。海で遊んで、近所の鮮魚店で刺身を買って帰って晩酌する。そんな暮らしにずっと憧れていて」
20軒ほど内見した末に出合ったのが築70年ほどの平屋だった。
「傷みが激しかったので、大工さんに頼んで修繕するものだと思っていたのですが、夫は自分で直すと最初から考えていたそうです。素人ながらも本を読んでは試行錯誤。私はリクエストする専門です(笑)」
60㎡に満たない4LDKは1LDKに変更することで開放的な空間になった。独立洗面所がないというのが悩みだったが、キッチン脇にDIYで壁を作って洗面台や棚を設置。リビングには壁付きの大型書棚を自作して、効率よくスペースを使って収納ができるよう工夫を施した。
「業者に頼めば話が早いですが、費用はかさみますし、100%思い通りにはなりません。手作りなら素材選びから施工まで、費用も含めて自分で決められる。一般的にはここまでやるけど、自分たちはこれくらいでいい。そんな塩梅を確かめながらやれるのがいいんです」と大作さん。
ラフに塗られた漆喰やシンプルに組んだフローリング、流木で手製したダイニングテーブル。この家は二人が「自分たちには、これがいい」と確信を持って作ったものでできている。それは、ほかのどんな家とも似ていない、固有の空間だ。
「肩に力を入れないで、おおらかに。手を動かしているうちにアイデアが湧いたら、やってみる。もともと設計図があるわけじゃないから、失敗なんて存在しないでしょ」と笑う二人。この家に清々しい空気を運ぶのは、海だけじゃない。二人のおおらかさこそが、その源なのだ。
おおいしれいこ / 久米大作編集者 / 潜水士
おおいしさんはフリーエディターとして主に暮らしにまつわる書籍の編集や執筆を手がける。大作さんは水中で土木建築などを行う潜水士として働く。
photo : Hinano Kimoto illustration : Shinji Abe(karera) edit & text : Yuriko Kobayashi