FOOD 食の楽しみ。
ブランディングディレクター・福田春美さんのお取り寄せ。
誰かに喜んでもらうために。 料理上手たちの、お取り寄せのある暮らしJanuary 28, 2023
2020年12月20日発売の本誌特集は『真似をしたくなる、お取り寄せ』。料理家をはじめ食の分野で活躍する人たちは、どんなふうにお取り寄せを使いこなしているのだろう。 味わいはもちろんのこと、作り手や、ともに分かち合う仲間との交流も大切に。身近で手に入る食材も上手に組み合わせながら日々の食卓を豊かに楽しむ6人に、おすすめの取り寄せリストと料理を教わった企画「料理上手たちの、とっておきのお取り寄せのある暮らし」から、ここではブランディングディレクターの福田春美さんを紹介します。
自分では作れないものを 注文してテーブルを彩る。
ブランディングディレクターの福田春美さんがお取り寄せの魅力に触れた記憶は子ども時代まで遡る。
「父親が好きだったんです。当時は雑誌などで情報を得ては、よく電話やファクスでワインや日本酒を注文していました。今思うと、北海道に住んでいたのですぐに買えないものも多かったんだろうなと。子ども心に、どんな場所にいてもおいしいものを食べられるっていいなと思っていました」
大人になってからは料理好きが高じておもてなしをする機会が多くなった。もしかしたら実家での思い出が頭の片隅にあったのかもしれない。東京では手に入らないものを直接購入できる喜びもあって、人が集まるときは、積極的にお取り寄せを活用している。
「最近は客を招くことができていませんが、それまでは定期的に友人知人を呼んでおもてなしする会を開いていました。切らさずストックしているのは『二番通り酒店』のナチュラルワイン。店主をよく知っていて、クオリティの高いものしか置いていないこともわかっているので安心です。おいしい状態で置いておきたくてセラーも買ったんです。ここのワインだと言うとみんな喜んでくれる。私は一滴も飲めないんですけどね(笑)」
来客用の注文が多いが、自分でも食べたいときに取り寄せるのが『氷箱里』の点心と『手打ち蕎麦 naru』の蕎麦。
「どちらも仕事で浜松に定期的に通っていたときに連れていってもらった店。『氷箱里』は、日本でも屈指の点心を出すレストランだと思っています。通販で頼んだ冷凍でも指示通りに作れば、ほぼお店と同じ味を再現できる。せいろのまま出せば華やかな感じになるし、集まりに遅れてきた人に温め直して出しても味が落ちない。蕎麦は集まりの締め用として注文することが多いですが、年末年始はもちろん、新蕎麦の時季、店に行けないけれど猛烈に食べたくなったときに個人的にも取り寄せます」
この2店は、贈答用としても活用している。最近、病気になってしまった友人がいて、どこにも出かけられないというので贈ったばかりだとか。忙しいときでもクリック一つで送れるのもいいと福田さん。まだ数回しか頼んだことがないけれど、これからのお取り寄せ定番になりそうなのが『紫野和久傳』のからすみ餅。
「最近のお気に入りですね。焼いてそのまま出してもいいですが、雑煮の具にしたり、今日のように野菜の煮浸しと一緒に食べたりするのもおすすめ。酒の肴としてもいい」
おもてなしの最初と最後にはお茶を淹れる。茶葉を炭酸出しにしてウエルカムドリンクにすることも。『而今禾(Jikonka)』の発酵茶が好きで、発売されたらすぐに買うようにしている。2020年からスタートした「伊勢小青柑」は、数量限定販売しているお茶で、生の柑橘の中に発酵茶を入れて、乾燥させたもの。そのお供として出すのは『HIGASHIYA』の定番スイーツ、柿衣と棗バター。
「棗バターは一年中ありますが、干し柿は寒い季節ならでは。お酒にもお茶にもよく合うので、お腹いっぱいになった後でもチビチビつまむのにちょうどいい」
福田さんにとってのお取り寄せは「自分の料理に彩りを与えてくれるもの」。おもてなし好きといっても大人数の準備をするのは大変なこと。そんなとき家まで届けてくれて、温めたり焼いたりするだけでさっと出せる料理はありがたい。
「だから自分では作れないものを注文することが多いですね。自分の料理と一緒に並ぶことでテーブルが一気に華やかになる。みんなが喜ぶ顔も嬉しい。それが私にとってのお取り寄せの魅力ですね」
福田春美さんの取り寄せリスト
福田春美
Harumi Fukuda
1968年北海道生まれ。ライフスタイル全般のブランディングディレクターとして、浄水器の企業や京都のホテル『moksa』、山口県萩市(旧藤井家)のブランディングなどを手がける。新しい商業施設のリーシング提案なども行う。趣味は料理と旅。
photo : Tetsuya Ito edit & text : Wakako Miyake