TRAVEL あの町で。

レトロな建物とカフェを探訪。モデル・俳優 菊池亜希子さんが案内する、函館への旅。June 20, 2025

北海道・函館への旅は2回目という、モデル・俳優の菊池亜希子さん。レトロな建物とカフェを求めて、町を散策。地元の人たちに愛されてきた風景や、移住者が開いた店など、町の新旧を感じられる6つの場所を訪れてみた。

『函館市元町末広町伝統的建造物群保存地区』
教会建築を愛でつつ、異国情緒溢れる坂道を歩く。

菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。

江戸末期に貿易港として開港した函館。函館山の麓から港へ向かう斜面地に広がるエリアには、明治から昭和初期にかけて建てられた教会や和洋折衷の建物が立ち並んでいる。大三坂を上りきったところにある『カトリック元町教会』周辺からの眺めは、まるで異国のよう。「教会があると、つい立ち止まってしまうんです。町に祈りの空間があることって、すごく豊かだなと思います。そこにほんの少しの時間だけでも身をおくだけで、心が穏やかになるんですよね」(菊池さん)
▷函館市元町末広町周辺

『はこだて工芸舎』
枠にはまらない自由なセンスを感じる器に出合う。

菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。
菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。
菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。
菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。

路面電車が走る通り沿いにある昭和9(1934)年築の商家を改装した、陶芸家・堂前守人さんが営む器と生活雑貨のギャラリー。喫茶『箱庭カフェ』も併設。「堂前さんの器は乙女心が詰まっていて、一見、どこの国のものかわからない異国情緒がある感じが素敵。このティーポットもヨーロッパのもののように見えます。奥に工房があり、手前にある中庭にささやかに咲いている花を見ながら、ぶどうクリームソーダ(¥650)をいただく時間も至福です」
▷函館市末広町8−8 ☎0138−22−7706 11:00~18:00 無休

『cafe water』
大きなカウンターが心地よさを誘うカフェへ。

菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。
菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。

風情溢れる石畳が続く「日本の道100選」にも選ばれている大三坂。その途中にある大正10(1921)年に建てられた「大三坂ビルヂング」にあるカフェ。「蔵を改装した天井が高い空間は、居心地抜群。また、こんなに奥行きのあるカウンターに初めて出合いました。まるでカウンターがステージのようで、店主の中村由紀子さんがコーヒーを淹れる様子やプリンを出してくれるとき、高揚感があり、なんだかワクワクします」
▷函館市末広町18−25 ☎050−6870−5951 11:00~17:00(16:00LO)火水休ほか不定休

『天然酵母パン tombolo 元町店』
パンを通して、店主の実直さが伝わってくる。

菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。
菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。

函館市伝統的建造物に指定されている和洋折衷の黄色い建物が目印。東京・富ヶ谷の『ルヴァン』で修業したオーナー・苧坂淳さんが薪窯で焼き上げるのは、自家製天然酵母と北海道産小麦、塩と水だけを使った滋味深いパン。「カンパーニュで作ったBLTサンド(¥500)に感動! パンの酸味と隠し味としてこっそり入っているポテサラも最高です。パンは作る人の人柄や土地の色が味に映し出されるので、旅先で必ず立ち寄ります」
▷函館市元町30−6 ☎0138−27−7780 11:00~17:00 月火水休 カフェは土日のみ

『コーヒールーム きくち』
創業以来、地元で親しまれているモカソフト。

菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。
菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。

「名字が同じというだけでも親近感! 店内に入った瞬間、ここ、好き!と直感ですぐに気に入りました。しかも黄色のタイルと、筆で書いたような店名の書体が好み」と、喫茶店マニアの菊池さんが絶賛する52年続く純喫茶。名物はソフトクリーム(¥360、テイクアウトは¥320)。なかでもモカは、毎日店頭で淹れたコーヒーで作っていて、ここだけの味。「少しシャリッとした食感で、コーヒーの香りがほんのりするのがいい」
▷函館市湯川町3−13−19 ☎0138−59−3495 9:30~18:30(ソフトクリーム~19:00)無休

『天使の聖母 トラピスチヌ修道院(売店)』
修道女たちによる手作りの焼き菓子を求めて。

菊池亜希子さんが旅する、クラシックな函館。

日本初の女子観想修道院として明治31(1898)年に創立。売店と美しく手入れされた前庭を開放し、修道院の歴史や日々の営みを伝える場に。「2年ほど前にフランスの修道院を訪ねたことがあって。そこでシスターの日々の営みを知る機会があり、その方々が作るものに興味を惹かれるように。ここでは、クッキーやマダレナケーキ(マドレーヌ)、ホワイトチョコレートを販売していて、素朴な味に心を摑まれました。包装紙もかわいい」
▷函館市上湯川町346 ☎0138−57−3331 8:30~17:00(季節で異なる) 無休

風通しが良く、心地よさに包まれる町。

函館の町を歩いてみると、港町ならではの異国の文化を感じながらも、横浜や神戸、長崎ともまた違う趣があることに気づきます。風が通り抜けていく心地よさがあり、そこに根付く文化も人の感じも軽やかというか。坂道を上って、港を見渡しながら両手を広げると、町をすっぽりと包み込めてしまうくらいの規模感なのもいいんですよね。「ここからここまでが私の町」って切り取ることができると、きっと愛着が湧くだろうなって。今回の旅で出会った人たちが口を揃えて「この町が好き」と話していたのも印象的でした。
 和洋折衷のレトロな建物やカフェが点在しているのも、建築と喫茶好きにとっては、嬉しい町。アトリエも併設する陶芸家によるギャラリー兼ショップ『はこだて工芸舎』、岡山から移住してきた店主が営む『cafe water』、シンプルながらも体中に染み渡るようなパンを作られている『天然酵母パン tombolo 元町店』は、どれも100年近い時を経た建物にあります。古い建物が醸し出すスローな時間の流れに身を委ねるのも、旅の醍醐味。市街地から少し離れた湯川エリアの『コーヒールーム きくち』も、50年以上続く、何もかもが最高の喫茶店。黄色のタイルの外観も、店名のフォントも、赤いベロアのソファが並ぶ内装も、とても私好み。地元の小学生たちがソフトクリームを目当てにやってきて、バイバイって店の人たちに手を振る風景も目に焼き付きました。
 函館は、教会も多く、日常の中に祈りや感謝を感じられる場所でもあります。レンガ造りの修道院『天使の聖母 トラピスチヌ修道院』もそのひとつ。修道院内には入れないのですが、売店で販売している修道女の方々が作ったクッキーなどを食べると、彼女たちが作る姿が目に浮かび、日々の営みへの感謝の気持ちが自然と溢れ出しました。信心深いほうではないけれど、そうした祈りの場所がある町への旅は、心が洗われ、気持ちが豊かになれるような気がします。

菊池亜希子Akiko Kikuchi

モデル、俳優、執筆業など、幅広く活躍中。InterFM『スープのじかん。』(毎週土曜9:30~)でパーソナリティを務める。近著に『ありが10ふく、みせて!』(扶桑社)。2025年秋に公開予定の映画「見はらし世代」(第78回カンヌ国際映画祭監督週間出品)に出演。

photo : Shinnosuke Yoshimori styling : Kaho Yamaguchi hair & make-up : Yoko Yoshikawa

ワンピース¥30,800、スカート¥35,200(ともにグラフぺーパー/グラフペーパー 東京 ☎03−6381−6171) レーストップス¥30,800(サラ マリカ/パサンド バイ ヌキテパ ☎03−6427−9945) その他スタイリスト私物

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