MOVIE 私の好きな、あの映画。
極私的・偏愛映画論『かもめ食堂』選・文/おさだゆかり(「SPOONFUL」主宰) / May 25, 2018
This Month Theme素敵なキッチンに憧れる。
コンパクトながら、動線と収納がよく考えられた使いやすそうなキッチン。
映画の舞台になっているのはフィンランドの首都・ヘルシンキ。北欧の首都の中でも、コンパクトなので、短い滞在でも街をぐるりと回ることができる街です。
主人公 サチエが切り盛りする「なんでもないけどおいしい」日本の家庭料理が食べられるかもめ食堂。白い壁とブルーグレーに塗装された木に囲まれ、白樺のテーブルと椅子はアルヴァ・アアルトが1930年代にデザインされた今も人気のシリーズ。キッチンは大きな窓から自然光が入り、明るくて清潔感たっぷり。生真面目でテキパキしたサチエさんが毎日磨き上げていることを伺わせます。
キッチンの奥には、ヴィンテージのホーローのコーヒーポットが置かれ、お玉やフライ返しなどが等間隔に吊るされています。シナモンロールが置かれた木製のカウンターは、後ろ側は食器を収納し、アイランド形のコンロでは、サーモンを焼いたり、とんかつや唐揚げを揚げます。コンパクトながら、動線と収納がよく考えられた、とても使いやすそうなキッチン。木製のオープンシェルフには、フィンランドのグッドデザインの鍋がずらりと並び、雑貨好きにはたまらない光景です。
北欧らしく大きな窓から光を取入れた空間に、秀逸なデザインのキッチン用品とそれを取り囲むインテリア。そこでいただく本格的な和食、シナモンロール、そしておいしいコーヒー。こんな食堂が実際にあったらどんなにいいだろう、と思わずにはいられません。
「SPOONFUL」主宰 おさだ ゆかり
2005年に北欧雑貨店 「SPOONFUL」を立上げる。年に3回、北欧に買い付けに通う。毎年夏には自らがガイドする北欧ツアーを開催。定期的に北欧に関する書籍を執筆。最新刊は5月に発売された『わたしの北欧案内 ストックホルムとヘルシンキ デザインとフィーカと街歩き』(筑摩書房)。