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〈グッチ〉の歴史と現代への系譜を紐解く展覧会「GUCCI COSMOS」が京都市京セラ美術館で12月1日まで開催中。October 08, 2024
日本上陸60周年を記念した世界巡回展が京都に。クリエイティビティ溢れる展示の数々。
100年以上にわたる〈グッチ〉の歴史の中で、特にアイコニックなデザインを展示するエキシビジョン「GUCCI COSMOS」。2023年4月に上海、同年10月にロンドンで行われた世界巡回展がついに日本に上陸。ブランド創設の地、イタリアのフィレンツェと姉妹都市である京都の京都市京セラ美術館で2024年12月1日まで開催される。
これまで継承されてきたグッチのスピリットがどのようにアイコニックなデザインに生かされてきたか、またそれぞれの時代を象徴するアイテムがいかにして歴代のクリエイティブ・ディレクターやデザイナーたちにインスピレーションをもたらし、再解釈されてきたかを探求していく構成になっている。展示の考案とデザインは、イギリスの著名なコンテンポラリーアーティスト、エス・テヴリン、キュレーションはイタリアのファッション研究家であり評論家のマリア・ルイーザ・フリーザが手がけている。
館内には、フィレンツェに収蔵されている多数の未公開品を含む貴重なアーカイブが並び、グッチの伝統とクラフツマンシップを感じ取ることができるだけでなく、京都市京セラ美術館のコレクションの絵とともに展示されたコーナーなどもあり、京都ならではの伝統文化との融合も堪能できる。
伝統と革新が生まれる場所ならではの空間。
万華鏡の世界に入り込むようなエントランス。グッチオ・グッチの誕生からサバト・デ・サルノの時代に至るまでのタイムラインをビジュアライズして文字を映し出すインスタレーションに目を奪われる。先へ進むと、アーカイブ作品や資料が引き出しや棚、展示ケース、ボックスに収納され、自由に探索できるコーナー「Time Maze-時の迷宮」が現れる。1920年代後期の貴重なキャンバス製スーツケースもあり、創設者であるグッチオ・グッチがロンドンのザ・サヴォイ ホテルでの経験からインスピレーションを得て、ラゲージの製造からブランドをスタートさせたことを彷彿とさせる。他に、1966年の誕生以来、今もスカーフなどで愛され続けている"フローラ"プリントを用いた1969年のシルクドレスなどもあり、〈グッチ〉のデザインの歴史を知ることができる。
次のコーナー「Zoetrope-乗馬の世界」では、乗馬が駆け抜ける映像の中に、乗馬の世界とつながるシグネチャーモチーフの服が並ぶ。1953年にアルド・グッチがローファーに取り入れたホースビット、馬にサドルを固定するための腹帯からインスピレーションを得たグリーン、レッド、グリーンのウェブストライプなどの軌跡を円形の空間で堪能できる。
まるでランウェイのような空間を彩る、クリエイティビティの系譜。
「Ecoes-クリエティビティの系譜」コーナーでは、1970年代から現在までのコレクションをまとったマネキンを展示。2003年に発表されたトム・フォードによるイエローのプリント入りシルク製のキモノドレス、1996年にトム・フォードが手がけたユニセックスのスーツ、2024年のゴールデングローブ賞授賞式でテイラー・スウィフトが着用したサバト・デ・サルノによるグリーンのドレスなどを間近で見ることができる。
京都ならではの伝統と融合した展示演出も。
レジャーとファッションのつながりをリードしてきた〈グッチ〉。乗馬やゴルフ、テニスなどにまつわるアーカイブアイテムを、京都市京セラ美術館のコレクションから日本における余暇や屋外での楽しみにちなんだ作品とともに展示したコーナー「Leisure Legacy-ライフスタイル賛歌」。菊池契月(けいげつ)が黒栗毛の馬の姿を描いた《紫騮(しりゅう)》(1942年)、丹羽阿樹子の《ゴルフ》(昭和初期)の作品などが並ぶ。
また、京都といえば、竹林。竹林の写真を背景に、「グッチ バンブー 1947」のバッグを印象的に配置した「Bamboo-バンブーの世界」コーナーも印象的。また、美術館コレクションの井上流光(りゅうこう)による竹林を描いた屏風《藪》(1940年)の前には、日本上陸60周年を記念するコラボレーションプロジェクト「Bamboo 1947:Then and Now」の一環として、日本の伝統工芸作家とコンテポラリーアーティストがヴィンテージの「グッチ バンブー 1947」を再生した作品の一部を展示している。
「赤い糸」の伝承にインスピレーションを得た、オブジェやインスタレーション。
鮮やかなレッドに包まれるコーナー、「Red Threads-グッチの絆」。誰もが人生に影響を与える運命の相手と目に見えない赤い糸で結ばれているという日本の「赤い糸」の伝承にインスピレーションを得た空間には、さまざまな表情のレッドで表現されたアイテムの数々が、まるでオブジェのように並んでいる。
レッドはブランドの歴史を通して繰り返し登場してきたカラーで、過去と現在をクリエイティブな表現でつなぐ"fil rouge(赤い糸)"でもある。2024年春夏コレクションから就任したクリエイティブ・ディレクターのサバト・デ・サルノが、深みのある赤を「グッチ ロッソ アンコーラ」と名付け、グッチの新たなシグネチャーカラーに。既存の枠にとらわれない大胆さと、タイムレスなエレガンスの共存を体現するブランドの力を感じられる。〈グッチ〉の自由なスピリットと無限のエネルギーを表現した、ラストに待ち受けるインスタレーションにも注目したい。