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築150年のお勝手を、朗らかな台所に。『やわい屋』店主・朝倉佳子さんの台所。December 01, 2025

工夫とアイデアに溢れた台所を訪ねた&Premium145号(2026年1月号)「料理好きの台所」より、『やわい屋』店主・朝倉佳子さんの台所を紹介します。

築150年のお勝手を、朗らかな台所に。古民家を改修した、心地よい台所。やわらかな光に包まれた、白を基調とした朝倉佳子さんの台所。夏が近づくと、正面に並ぶ陶器の水差しをガラス製のものに替えるなど、季節や暮らしのリズムを大切にしている。
やわらかな光に包まれた、白を基調とした朝倉佳子さんの台所。夏が近づくと、正面に並ぶ陶器の水差しをガラス製のものに替えるなど、季節や暮らしのリズムを大切にしている。
築150年のお勝手を、朗らかな台所に。古民家を改修した、心地よい台所。築150年の古民家だというのに、思いがけず明るい台所だ。正面に設けられた明かり取りの窓から、やわらかな光が注ぎ込んでいる。 台所の主は、飛騨高山の田園に暮らす朝倉佳子さん。夫の圭一さんと民藝の器を扱う『やわい屋』を営む。移築した江戸末期建造の平屋には、店舗とギャラリー、私設図書館、居住スペースが収まっており、全幅の信頼を置く大工の渡邊覚さんと相談をしつつ、4度の改修を経て現在の形に辿り着いた。 | 台所と居間を繋ぐスペースには、長野県中川村在住のイエルカ・ワイン制作の大きな薪ストーブが。冬になると、ピザやグラタンなどストーブオーブンを使った料理を楽しむ。
台所と居間を繋ぐスペースには、長野県中川村在住のイエルカ・ワイン制作の大きな薪ストーブが。冬になると、ピザやグラタンなどストーブオーブンを使った料理を楽しむ。
築150年のお勝手を、朗らかな台所に。古民家を改修した、心地よい台所。夫の圭一さんとふたりで台所に立つのも自然なこと。手前の壁のザル (右ページ写真の | 夫の圭一さんとふたりで台所に立つのも自然なこと。手前の壁のザル(1枚目の中央も)は小屋名しょうけ。岐阜・高山の小屋名地区に古くから伝わる手仕事の道具だ。
夫の圭一さんとふたりで台所に立つのも自然なこと。手前の壁のザル(1枚目の中央も)は小屋名しょうけ。岐阜・高山の小屋名地区に古くから伝わる手仕事の道具だ。

機能的ではないけれど、安心感のあるおおらかさが大切。

 築150年の古民家だというのに、思いがけず明るい台所だ。正面に設けられた明かり取りの窓から、やわらかな光が注ぎ込んでいる。

 台所の主は、飛騨高山の田園に暮らす朝倉佳子さん。夫の圭一さんと民藝の器を扱う『やわい屋』を営む。移築した江戸末期建造の平屋には、店舗とギャラリー、私設図書館、居住スペースが収まっており、全幅の信頼を置く大工の渡邊覚さんと相談をしつつ、4度の改修を経て現在の形に辿り着いた。

 台所の躯体はもともと備え付けられていたものを生かして、コンパネを張り、モルタル塗装で仕上げた。ぐるりと台所の周りを囲む白いタイルは剥がしたものを再利用。台所と居間の間にあった土間は長男の十一(とい)くんが誕生したのを機にコンクリートを打ち、室内仕様に。

「台所を明るく、白いモルタルにしたいというのは私の希望です。食材をストックする箱や、ゴミ箱は廃れた感じの白木でシンク下に収まるように。台の角は面取りをしてやわらかく、丸みが出るように渡邊さんに作ってもらいました」

 料理は好きだけど得意とはいえないんです、とはにかみながら話す佳子さん。でも、この台所に立つ佳子さんはとても朗らかで楽しそうだ。

「枝豆のヘタは絶対にここで切るんです」とちょこんと座ったのは、居間に上がる段差スペース。台所仕事に疲れたときは、薪ストーブの前の大きな木のスツールに腰掛けてぼんやり気分転換することも。

 お昼どき。食事の用意をする佳子さんの傍らに圭一さんが立つ。

「どの器によそおうか」

「(齊藤)十郎さんのがいいかな。丼は(山口)和声さんのにする?」

 器の作り手の名が、友人の名前を呼ぶ親密さで交わされる。棚に並ぶたくさんの器、そのひとつひとつの先に作り手の顔が見えている。ここにあるのは、ふたりが縁を紡いできた人の器ばかりなのだ。

「器も道具も使いやすいものもあればそうでないものもある。機能的ではないけれど、がんばらなくてもいい台所。好きなものに囲まれている安心感も私にとって大事なものです」

築150年のお勝手を、朗らかな台所に。古民家を改修した、心地よい台所。鳥取〈クラフト館 岩井窯〉の山本教行ら親交の深い窯元、作家の器が棚に並ぶ。モルタルの台には、〈瀬戸本業窯〉を訪ねた際に譲り受けた古い吉祥模様のタイルを埋め込んだ。ステンレスポットの隣は齊藤十郎のポット。「十郎さんからもらったミルをきっかけにハンドドリップが好きになりました」 | 鳥取〈クラフト館 岩井窯〉の山本教行ら親交の深い窯元、作家の器が棚に並ぶ。モルタルの台には、〈瀬戸本業窯〉を訪ねた際に譲り受けた古い吉祥模様のタイルを埋め込んだ。ステンレスポットの隣は齊藤十郎のポット。「十郎さんからもらったミルをきっかけにハンドドリップが好きになりました」 
鳥取〈クラフト館 岩井窯〉の山本教行ら親交の深い窯元、作家の器が棚に並ぶ。モルタルの台には、〈瀬戸本業窯〉を訪ねた際に譲り受けた古い吉祥模様のタイルを埋め込んだ。ステンレスポットの隣は齊藤十郎のポット。「十郎さんからもらったミルをきっかけにハンドドリップが好きになりました」 
築150年のお勝手を、朗らかな台所に。古民家を改修した、心地よい台所。古材で誂えたゴミ箱 (キャスター付き) はシンク下にぴったり収まる。 | 古材で誂えたゴミ箱(キャスター付き)はシンク下にぴったり収まる。
古材で誂えたゴミ箱(キャスター付き)はシンク下にぴったり収まる。
築150年のお勝手を、朗らかな台所に。古民家を改修した、心地よい台所。ソルトピッグ (塩壺) も齊藤十郎作。圭一さんによると本来は吊るして使うものだそう。 | ソルトピッグ(塩壺)も齊藤十郎作。圭一さんによると本来は吊るして使うものだそう。
ソルトピッグ(塩壺)も齊藤十郎作。圭一さんによると本来は吊るして使うものだそう。
築150年のお勝手を、朗らかな台所に。古民家を改修した、心地よい台所。作業を見学する愛猫、玄米 | 作業を見学する愛猫、玄米。
作業を見学する愛猫、玄米。
築150年のお勝手を、朗らかな台所に。古民家を改修した、心地よい台所。今日のお昼は鶏飯。友人にごちそうになって以来、佳子さんのレパートリーに加わった。ご飯に鶏、錦糸卵、椎茸の含め煮、奈良漬などをのせて鶏だしをかける。
今日のお昼は鶏飯。友人にごちそうになって以来、佳子さんのレパートリーに加わった。ご飯に鶏、錦糸卵、椎茸の含め煮、奈良漬などをのせて鶏だしをかける。
築150年のお勝手を、朗らかな台所に。古民家を改修した、心地よい台所。L字型が特徴的な台所。棚はすべてオープンラックで、冷蔵庫やレンジなど佳子さんの心に響かないものは納戸に収納している。
L字型が特徴的な台所。棚はすべてオープンラックで、冷蔵庫やレンジなど佳子さんの心に響かないものは納戸に収納している。
朝倉佳子

朝倉佳子『やわい屋』店主

2016年、岐阜県高山駅から車で30分ほどの美しい田園風景の中で、夫とともに『やわい屋』をオープン。「やわい」とは飛騨の言葉で「したく」を意味する。

photo : Yoichi Nagano illustration : Shinji Abe text : Yuko Ota

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