Book

山野アンダーソン陽子さんの発案から生まれたアートブック『Glass Tableware in Still Life』が刊行。August 30, 2023

山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life

ガラス・絵画・写真のあわいから生まれるゆらぎ。

2023年9月上旬、スウェーデン在住のガラス作家・山野アンダーソン陽子さんの発案から生まれたアートブック『Glass Tableware in Still Life』(torch press)が刊行される。

これは、山野さんが写真家の三部正博さん、グラフィックデザイナーの須山悠里さんとともに、2018年に始めたプロジェクトの第一幕として編まれたもの。山野さんのガラス器と日本とスウェーデンの画家、18人による静物画、三部さんの写真が収録されている。

山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life
山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life
山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life
山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life
山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life

『Glass Tableware in Still Life』を開くと、いくつもの透明なイメージを前に、一体いま観ているのはガラス器なのか静物画なのか、写真なのかと、不思議な気持ちになるかもしれない。本書の作品は、まずはじめに画家が器を想起し、山野さんがそのイメージをもとにガラス器をつくり、その完成品を画家が各々の作風で描き、三部さんが絵を撮影する——といった課程を経て作られたという。写真はすべて画家のアトリエで撮られ、ガラス器と静物画をは8×10の大判カメラで、アトリエの風景は35mmカメラで撮影された。

山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life
山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life
山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life
山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life
山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life

19世紀の画家、ポール・ドラローシュは初めて写真を目にした時に「今日を限りに絵画は死んだ」と言ったという。たしかに写真が登場して以来、画家たちの集中力は写実表現からそがれ、絵画はしばしば苦境に立たされてきたが、本プロジェクトはコラボレーションを経て、オブジェと絵画、そして写真の間に、新たな境界領域を見つけたかのようだ。

スウェーデンのアーティスト・評論家、グンナル・ラーソンさんは、本書に次のような言葉を寄せた。

彼女は招聘したアーティストたちに、それぞれのイマジネーションを通してまだ存在しない静物のリアリティを呼び起こす機会を与えている。私はこれをある種の魔法だと解釈している。現実と私たちの体感の間にカメラのレンズを介入させることへの執着が見られる現代において、存在を主張することが困難な静物画という芸術的実践に(文字通り)息を吹き込む魔法のようなものではないだろうか。
グンナル・ラーソン(『Glass Tableware in Still Life』より)

山野アンダーソン陽子 三部正博 須山悠里 torch press トーチプレス グンナル・ラーソン Glass Tableware in Still Life

アーティストの作品を一冊の本に落とし込んだ須山さんのデザインも秀逸だ。表紙に異なるインクを同時に流し込み、インク量、印圧を調節しながら刷っていくことで、モノクロームの中に流れるような風合いを携えた、静謐な印象に仕上がっている。

『Glass Tableware in Still Life』はブックレーベル『torch press』の公式サイトにて、予約を受付中。お披露目は8月30日、ストックホルムの『Konst-ig Books』にて。日本では鎌倉『ink gallery』で、10月21日〜10月29日まで刊行記念展が開かれる予定だ。また、11月からは『広島市現代美術館』を皮切りに『東京オペラシティ アートギャラリー』『熊本市現代美術館』で、本プロジェクトの巡回展「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」が開催予定となっている。

参加作家

石田淳一 Junichi Ishida
伊庭靖子 Yasuko Iba
小笠原美環 Miwa Ogasawara
木村彩子 Saiko Kimura
クサナギシンペイ Shinpei Kusanagi
小林且典 Katsunori Kobayashi
田幡浩一 Kouichi Tabata
八重樫ゆい Yui Yaegashi
アンナ・ビヤルゲル Anna Bjerger
アンナ・カムネー Anna Camner
イルヴァ・カールグレン Ylva Carlgren
イェンス・フェンゲ Jens Fänge
カール・ハムウド Carl Hammoud
CM・ルンドベリ CM Lundberg
ニクラス・ホルムグレン Niklas Holmgren
マリーア・ノルディン Maria Nordin
レベッカ・トレンス Rebecka Tollens ほか

BOOK INFORMATION

『Glass Tableware in Still Life』
ガラス:山野アンダーソン陽子
写真:三部正博
デザイン:須山悠里
執筆:グンナル・ラーソン
言語:日本語/英語
定価:9,900円(税込)
発行:torch press
仕様:270 x 220 mm/上製本/128P

EXHIBITION

刊行記念展
会期:2023年10月21日〜10月29日
会場:ink gallery(鎌倉)
住所:神奈川県鎌倉市鎌倉山1-19-12

EXHIBITION

ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家
広島市現代美術館 2023年11月3日〜2024年1月8日 
東京オペラシティ アートギャラリー 2024年1月17日〜3月24日 
熊本市現代美術館 2024年7月13日〜9月23日(予定) 

text : Yu Miyakoshi

Pick Up おすすめの記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 126窓辺に、花と緑を。2024.04.19 — 930円