FASHION 自分の好きを身に付ける。

北海道・阿寒湖で
〈フェニカ〉が見つけたアイヌのクラフト。Ainu Crafts from Lake Akan / September 20, 2019 /〔PR〕

クラフトを探して世界中へ赴き、日本で紹介してきた〈フェニカ〉がこの秋、
北海道の東、阿寒湖のアイヌ工芸作家たちとコラボレーション。
伝統を引き継ぐ5人の作家と、ともに作り上げてきた作品のストーリー。

photo : Shinnosuke Yoshimori

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阿寒湖近くにあるスキー場から眺める湖の景色は圧巻。雄阿寒岳(おあかんだけ)などの山々に囲まれた湖の南側にアイヌの集落と観光ホテルが隣接している。
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刺繍作家・鰹屋エリカさんがアイヌの文様を縫い付ける。「アイヌの文様は一筆書きできる形なんです」と鰹屋さん。

阿寒湖のアイヌ工芸の、確かな技術と"ファミリー感"。

釧路空港から車で北へ約1時間。美しい自然の残る阿寒摩周国立公園の西に、豊かな温泉が湧く阿寒湖と、アイヌの人々が暮らす集落「阿寒湖アイヌコタン」がある。土産物店が軒を連ね、伝統的な舞踊などの芸術も鑑賞できる施設のあるこの地を、〈フェニカ〉のディレクター、テリー・エリスさんと北村恵子さんが初めて訪れたのは、2017年の10月だった。
’90年代の半ばからファッションにとどまらないライフスタイルに目を向け、国内外の各地を訪れ、器や雑貨、家具などをバイイング、販売してきた〈ビームス〉のレーベル〈フェニカ〉。世界中のクラフトに出合ってきた彼らの目にも、阿寒湖のアイヌ工芸作家たちの作品は魅力的に映った。
「もともとは商品としてではなく、家族や友人のために作られたプロダクト。それゆえの温かみがあるし、アイヌ伝統の文様が細かく丁寧に施されていて、プライドも感じられる。ひと目で気に入ってしまって、どうすればこの素晴らしさを伝えられるか、作家の皆さんとやりとりをしながら約2年間取り組んできました」と北村さん。
一口にアイヌといっても、北海道各地に様々な集落があり、地域によっては文様が異なることもある。北村さんは続ける。
「作家の皆さんと話していると、『お父さんがこうやって作っていた』とか『おばあちゃんがこのモチーフを使っていた』とか、ご家族の話題がたびたび出てくるんです。幼い頃から工芸に触れて、それらを美しいと思う感性が育っていて、自然と引き継ごうとしていることに共感しました」
作家たちと信頼関係を育むために、この2年間、エリスさんと北村さんはプライベートも含めて何度も阿寒湖へ足を運んだ。

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マリモが生育する湖から眺める雄阿寒岳。高さ1370mで、麓に温泉街が広がる。
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木彫作家・瀧口健吾さんはアイヌコタンで『イチンゲの店』を営む。父・政満さんのものなど貴重な作品が並び、健吾さんは普段から店頭で制作を行っている。
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彫銀作家・下倉洋之さんの制作風景。今回の展示では、〈フェニカ〉のツバメのマークが付けられた、熊の手をモチーフにしたリングを別注。
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湖の周辺には様々な野生動物が生息している。特にエゾシカは頻繁に目にすることができる。
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アイヌの生活や儀礼に伝統的に使われてきたゴザ。織物作家の下倉絵美さんは、このゴザをベースにかごバッグを制作した。
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坂道の集落「阿寒湖アイヌコタン」。中央には『アイヌ文化伝承館 チセ』が。

作品の魅力を多角的に感じられる‹フェニカ›の企画展示会。

〈フェニカ〉がコラボレーションをする、阿寒湖のアイヌ工芸作家は5人。木彫の瀧口健吾さん、織物の郷右近富貴子さん、刺繍の鰹屋エリカさん、織物の下倉絵美さん、彫銀の下倉洋之さんだ。今回の〈フェニカ〉と阿寒湖のアイヌ工芸作家とのコラボレーションが実を結び、この10月に展示『AINU CRAFTS from Lake Akan Tradition and Innovation』が開催される。
「現地や道産の素材は希少で、作品づくりも手作業。素材集めから行う作家もいるので、一つの作品にどれだけの時間がかかるかは計り知れません。それでも5人は、それぞれアイデアが豊富でこちらの難しい提案にも意欲的に応えてくれました。たくさん作って大きな規模のビジネスをしようと思っているわけではなく、この地の素晴らしいものをお客様に届けて、作家の皆さんと継続的に取り組みを続けていけたら。だからこそ5人の作品が今の生活に馴染むように商品のディレクションを考えてきました」と北村さん。
展示では5人の作品や特産品の販売と同時に、郷右近さんと下倉絵美さんがウポポを披露したり、トークショーなども開催される。作品と、その背景にある現地の伝統文化も十分に感じられる、貴重な機会になるだろう。

 
木彫

瀧口健吾 Kengo Takiguchi

阿寒湖三大巨匠といわれる木彫作家・政満さんを父に持ち、遺された作品を自分なりに解釈しながら制作を行う健吾さん。政満さんの作品から、「木の節をそのまま商品に残したり、自然のものを生かしながら表情豊かに作ること」を学んだという。「自分は親父に比べたらまだまだ。だけど一つ一つの作品に手仕事の跡が残るように、細かな模様やノミ跡をつけたりして、とにかくいいものを届けられたら」と語る。今回はサラダサーバーや木彫り熊、アイヌ語でチシポと呼ばれる針入れを制作。

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作業中の瀧口さん。父から引き継いだ木工店『イチンゲの店』の店頭で制作を行う。
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針が交易品だった時代、アイヌの女性が持ち歩いていたというチシポを、今回はペンダント(各¥9,000)として制作。サラダサーバーは道産の木材で。
 
織物

郷右近富貴子 Fukiko Goukon

『アイヌ料理の店 民芸喫茶 ポロンノ』を営み、姉の下倉絵美さんとのアイヌ伝承歌謡ウポポのユニット「カピウ&アパッポ」としても活動。アイヌ語でエムシアツという刀掛けの作り方を学んだことをきっかけに織物も始めた。「とにかく先人の作る作品がかっこよくて、作るのも楽しかった。自分なりのものも作ってみたいなって」と、制作したのがブレスレット。祖母が植えたオヒョウの皮を糸のようにして紡いで染色し織り上げた。「自分の惚れた柄を今の形で残していけたら」と語る。

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オヒョウの皮を紡ぐ。「しっとりとした経年変化をして、着物にも使われる素晴らしい素材」
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アイヌの伝統柄などが編まれたブレスレット¥35,000〜55,000。留め具部分には鹿の腱や角を使うなど、郷右近さんのアイデアが詰まっている。
 
刺繍

鰹屋エリカ Erika Katsuya

アイヌ舞踊の踊り手としても活動する、刺繍作家の鰹屋さん。北村さんも「模様も色の組み合わせも抜群に美しくて、一目惚れした」というセンスは、祖母と母から受け継いだもの。一見意外な組み合わせでも、刺繍になった途端にその美しさにハッとする。「ばあちゃんの柄を基に、布と糸とを何度も合わせながら考えていく。踊りで全国各地に行くから、そこで訪れた美術館でヒントを得たり、子どもの持っているものから影響を受けることも。心を落ち着かせて作業するのが大切」と鰹屋さん。

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晴れた日に屋外で刺繍をする鰹屋さん。「ロシアとか、世界各地の民族の刺繍も面白いし、発見がある」
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アイヌの伝統柄を刺繍した巾着(各¥9,000)。伝統柄には魔除けの意味もあり、袖口や裾に刺繍を施したテープを付けたコートも販売。
 
織物

下倉絵美 Emi Shimokura

郷右近さんとのアイヌ伝承歌謡ウポポのユニット「カピウ&アパッポ」として活動し、北村さんが「難しいお題」というかごバッグの制作に初めて取り組んだ下倉絵美さん。かごバッグのベースになったのはアイヌの生活や儀礼で使われていたゴザだ。「素材のガマもなかなか手に入らないし、大変だったけれど楽しかった。あくまでゴザとかごは別物だから、元々の模様をアレンジしたり、単色にしてみたりして、布で柄を入れた。量産はできないけれど、いいサイクルが作れたら」と絵美さん。

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「自分はもともと工芸家ではないけれど、生活の中で自然に身についた」と絵美さん。
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口を白樺で留めたかごバッグ¥50,000〜58,000。糸も祖母が撚ったものを使うなど手仕事にこだわった。手前の2点は制作中で、展示の際には持ち手が付く。
 
彫銀

下倉洋之(Ague) Hiroyuki Shimokura

アトリエにカフェを併設し、コーヒーを淹れる姿が印象的な下倉洋之さんは彫銀作家。「初めてアイヌの工芸を見たとき、かっこいいと思うどころではなくて、その衝撃にぶっ飛ばされたんですよ」と話す洋之さん。絵美さんの夫であり、神奈川県出身の移住者ながら地元民に「アゲさん」と慕われる存在だ。アイヌ模様に影響を受けたモチーフを彫ったペンダントや、熊の手をモチーフにしたリングなど、そのクオリティは高くエリスさんと北村さんからの信頼も厚い。

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カフェのカウンターに立つ洋之さん。
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シルバーアクセサリー¥12,000〜28,500は細かな彫りが美しい。「アクセサリーに収めるのが難しい」という模様のデザインは妻の絵美さんも手がける。瀧口さんと共作したカトラリーの販売も予定。
 

AINU CRAFTS from Lake Akan Tradition and Innovation

会期
商品販売@フェニカ スタジオ
2019年10月12日(土)~20日(日)
アイヌ関連展示@Bギャラリー
2019年10月12日(土)~27日(日)

会場
ビームス ジャパン
東京都新宿区新宿3−32−6−5F
☎03−5368−7304

トークショーなど、作家来店イベントの日程は下記サイトにて。

Bギャラリーはこちら

●取材協力/NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構 www.akanainu.jp/karpekuru

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