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Elements of Elegance: Margaret Howell.〈マーガレット・ハウエル〉に宿るエレガンス。September 25, 2023

モダンで凛とした佇まいの服を生み出す英国のクロージングデザイナー、マーガレット・ハウエル。エレガンスが宿るデザインのセンスの源をたどるため、ロンドンの自宅に伺いました。彼女の哲学が詰まった〈マーガレット・ハウエル〉と本誌が一緒に作ったオリジナルの服も10月11日(水)までの期間限定で『&Premium ONLINE STORE』で販売します。

Elegance Margaret Howell 〈マーガレット・ハウエル〉に宿るエレガンス MHL アンドプレミアムオンラインストア
キッチンに立つマーガレット・ハウエル。庭に面した位置にあるキッチンには、自然光がたっぷり降り注ぐ。棚には日本で購入した茶器やオブジェも。

エレガンスの素を探しに、 マーガレット・ハウエルの住まいへ。

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ロンドンにあるマーガレット・ハウエルの自宅。一軒家を改築した際に螺旋階段を付けたという。ブルーグレーの色みも気に入っている。
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庭を望むリビングルーム。「1 階の大きな窓から見える庭の風景が気に入って家を買ったようなもの」。ダイニングの椅子は古道具店で見つけた古い学校用の椅子。
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室内にある写真やアートはパーソナルなもの、購入したもの、有名無名にかかわらず並べている。

機能的でタイムレスなデザインを追求していく。

 ロンドンの閑静な住宅街、緑豊かなエリアの一角にマーガレット・ハウエルの自宅がある。おそらくヴィクトリア朝時代に建てられたであろうコーチハウスを改装した住まい。コーチハウスとは、かつての馬車小屋で馬車を収容するために屋敷そばに建てられた別棟のこと。

「最初に話を聞いたときは気乗りしなかったけれど、実際に見学に訪れたら大きな窓と美しい庭の佇まいに惹かれて、即決しました」

 自然光がたっぷり入るリビングルームからは小さな森のような庭が見える。周りからの視線を完全に遮断したプライベートな空間には、木々やシダ類の他に白いマグノリアや白い紫陽花などが咲く。庭の色彩は基本的に緑と白のみ。年に1〜2回、友達と一緒に剪定するのが楽しみだという。庭で拾った落ち葉や枝、摘んだ花は室内のあちこちに飾る。庭にあるベンチは祖父から引き継いだもので修復して使っている。ここに座ってお茶するのもお気に入りの時間だ。

 自宅のリノベーションでこだわったのは、1階をオープンスペースにしてなるべく天井を高くし、開放感のある空間にしたこと。

「建築家と話し合いながら進めました。大きく変えたのは螺旋階段。以前はもう少し重たい感じの階段が付いていたんですが、モダンな雰囲気に変えたくて。各部屋の壁に作り付けた棚は、キッチンカウンターに使ったイロコという木材の残りを使って作ってもらいました。これらの棚やカウンターの材は、昔学校の実験室で使われていた机の廃材を利用しています」

 身の回りに置く家具も機能的で長く使えるものばかり。アルヴァ・アアルトやディーター・ラムス、ル・コルビュジエやロビン・デイ、アーコールによる家具が並ぶ。一方で蚤の市で見つけたものや拾ってきたものも。

「サイドボードはオフィス近くのウィグモア・ストリートに捨ててあったものを拾ってきて綺麗にしました。きちんとした引き出しも付いてつくりもよくできているんです」 ワードローブも徹底していて必要最低限しか
持たない。長年愛用しているのがリネンのシャツドレスとベンタイル素材(綿100%の超高密度織物で防水、撥水効果がある)のパーカだ。

「おそらく20年以上は着ていますね。気に入ったものがあるとずっと長く着たいタイプですが、服に関してはどうしてもフィット感やプロポーションが変わる。古いなと感じる色も出てくる。ブランドでは、常に今の時代に合った色や形にアップデートしています。この2着も改めて展開したいなと考えているところです」

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本棚には野草が描かれたドローイング集やバウハウス、彫刻家アンソニー・カロの作品集など。
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ベンタイル素材のパーカは長年着続けているので味のある風合いに。
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黒い額縁に入ったデッサン画は、マーガレットがアートスクールに入学した最初の年に描いたもの。
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祖父からもらった木箱。中には未使用の絵ハガキやカードが。「送る人を思い浮かべて、どのカードにするか選びます」

 そんなマーガレットが服づくりのヒントによく観察するのが街を行き交う人々。実際に服を着て動いている姿が気になるという。

「ロンドンを歩く彼らを見るのが好きですね。でもそのまま取り入れることはしません。あくまでもディテールの観察で、しわの入り方やシルエット、機能的かということが気になります。過去の写真もよく見ますが、有名人やモデルでなく、あくまでも市井の人たちの日常着。ワークウェアやユニフォームも好きです」

 1970年に蚤の市で見かけたメンズのピンストライプシャツとの出合いからスタートした〈マーガレット・ハウエル〉のブランド。以来、半世紀にわたるものづくりのなかで影響を受けたのは、同じ作り手や表現者の言動だという。

「インスピレーションというよりは〝エンパシー〞というか。例えば彫刻家のバーバラ・ヘップワースの展覧会で目にした彼女の言葉やディーター・ラムスの『良いデザインの10か条』の提言は共感できることばかりですね」

 ジャンルは違えど、ものづくりと向き合うスタンスに共感し、その思考を想像する。感情移入できることは自分のデザインにもいい刺激になるという。マーガレットがつくり出す世界観にエレガンスが感じられるのは、揺るぎない審美眼で選んだものだけを身の回りに置き、機能的でタイムレスなデザインとは何かを追求し続ける姿勢にあるかもしれない。

「私がデザインに求めるものは、一貫してウェルメイド(高い品質)とプラクティカル(実用的)。無駄なデコレーションがなく、ミニマルでシンプルであること。そして、きちんと機能するものであること。最終的にはそういうことが美しさや洗練、気品につながると思います」

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マーガレット・ハウエル
1946年、イギリス、サリー州生まれ。1970年、マーケットで見たシャツをヒントにメンズシャツを発表。以降メンズ・ウィメンズのコレクションへと広がる。フランス、イタリアの他、1980年代には日本へ上陸し人気を博す。2020年、ブランドは設立50周年を迎えた。
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敷地内に埋もれていた古いれんがを掘り起こし、庭を散歩する小道を造った。
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2 階のバスルーム。日本式のような深めのバスタブを設置した。日本の桶も使いやすくてお気に入り。
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紺のリネンのシャツドレスは長年着ているワードローブのひとつ。
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昔の写真も好きでよく見る。市井の人の着こなしにヒントを得ることも。

〈マーガレット・ハウエル〉と本誌が一緒に作ったオリジナルの服も特別に期間&数量限定で販売中です。以下の『&Premium ONLINE STORE』からご覧ください。

この記事は、『アンドプレミアム』NO.119「エレガンス、であること」に掲載されたものです。

photo : Yuki Sugiura edit & text : Chizuru Atsuta

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